一段落、そして
アルカとの模擬戦が終わった後、私はすぐアルカと一緒に移動した。私たちの模擬戦を見守っていた知り合いたちが私たちを迎えた。
その中でも一番前にいたジェリアが私に肩を組んだ。
「これはひどいじゃないかテリア!」
「何が?」
「あんなにすごい力を隠していたことだ! 凄かったぞ?」
ジェリアはなぜかすごく喜んでいた。……まぁ、強い人が好きなジェリアだから、この反応は当たり前というか。
「正直、鳥肌が立ったぞ。君が〈選別者〉を使う姿はいっぱい見たが、まさか攻撃さえもない威圧感だけで練習場の結界を破壊するとは思わなかったな。現役騎士でさえ末端には不可能な力だぞ」
ジェリアの熱気が私にまで伝わってくるような感じだった。氷能力者のくせに。
リディアの反応も似ていた。
「本当にすごかった。後でリディアともその力で模擬戦してくれる?」
「時間があれば」
リディアの目はまるで日光を反射する湖の表面のように輝いていた。
反面、私の使用人たちの反応は彼女たちと違って微妙だった。
「この前お嬢様がおっしゃったこと、やっと理解できました。確かにそのくらいの力があれば他人に任せるより自分で乗り出そうと思うこともあります」
そう言った人はロベル。彼は何か悩んでいる様子だった。私がいつこのような力を身につけたのか不思議に思っているのかしら。彼の妹でアルカの専属メイドであるハンナは苦笑いしながら私に頭を下げて挨拶するだけだったけれど。
一方、トリアはトリアで何か呟いていた。
「お嬢様がいつこんなに……さっきも全力を尽くしているようではなかったし……全力を尽くせば私よりはるかに強いかも……護衛としてこれは許せない……」
……オッケー。あれは触ってはいけないと思う。うん。少なくとも私を敵対しているわけじゃないようだから大丈夫だろう。
考えてみれば、トリアとの関係はゲームとはあまりにも変わってきた。ゲームではトリアは私の護衛じゃなかった……というよりも、そもそも我が家の人じゃなかったから。
始まりの洞窟事件当時、トリアは大切な家族を失った。その後、私に対する恨みが心の中で膿んでいき、結局事件が起きて三年後に私を暗殺しようとしてしまった。結局失敗したけど、その後トリアは逃走して私の敵になった。
……そんなトリアが今は私の大切な人たちの一人になっているなんて。この縁を守っただけでも、転生の甲斐があるかもしれない。
私がそのような感想にふけっている間、ジェフィスは穏やかに笑いながら頷いた。
「感心したよ。やっぱり君を師匠にしたのは間違ってなかったようだね。そうでしょ? 師匠」
こっちはこっちでおかしい。お互いに言い方が楽になったのはいいけど、なぜかジェフィスは私を師匠と呼んだ。そう呼ばれるほどのことはしていないのに。
それよりも今はのんびりと話している場合じゃない。
「ごめんね。アルカ、リディア、ジェフィス、ハンナは先に帰ってくれる? 私はちょっと用事があるの」
「うん? 何の用事?」
「調べたいことがあるの」
私は四人を別々に見送り、残りの人数と一緒に図書館に向かった。目的は『隠された島の主人』のことを調べること。
『隠された島の主人』。その存在を脅威と判断すべきか、それとも助力者と考えるべきか……判断がつかない。
ゲームのいろんなことを知っていることは明らかだ。そしてそれを利用してアルカや私に介入しようとしている以上、私にとっては最も厄介なイレギュラーだ。ゲームの記憶をもとに未来を設計している私にとって、本音を隠したままその知識を利用しようとする存在は邪魔物に過ぎない。
でもあいつはこの世の外に存在する邪毒神。私の方から先に接触することは不可能だ。
もちろん図書館に行って調査しても有意義な手がかりを得ることはできないだろう。けれど
「ロベル。ピエリの動きを監視するのはどうなっているの?」
「ずっと一定に保っています。利用可能人数の五割を利用して何か不穏な行動をしていないか見守っています。今までは何の成果もありませんでしたが」
「最低限だけピエリの監視を続けさせ、残りを全員投入して『隠された島の主人』とその信奉者たちについて調べてちょうだい。できるだけ多くの情報が必要なの」
「調査は現場実習の時に終わったんじゃないですか?」
「実習出発する前にアルカが啓示夢を見たって言ったの。そして今回自分を『隠された島の主人』と主張した誰かがアルカに接触して自分が啓示夢をあげたって主張したそう」
「……それはかなり……気になることですね。かしこまりました。最高優先順位で進めます。ご主人様にも助力を要請されますか?」
「ええ、頼むわ」
よし。外部調査はロベルに任せればいいだろう。
「ジェリア、現場実習で『隠された島の主人』について聞いたことあるの?」
「最近信奉者たちがいろいろ騒がしい邪毒神だろ? そうでなくてもその時に見て聞いたのは結構あるぞ。今からそれをもっと調査しに行くのか?」
「そう。そして………」
私はジェリアに今日の計画を説明……しようとしたけど、部下たちに連絡していたロベルの顔色が変わった。
「お嬢様、計画をお変えになるべきかもしれません」
「え? どうしたの?」
「王都郊外で突然の暴力事態が発生したそうです。一方は安息領で、もう一方は礼のあの邪毒神の信奉者集団だそうです」
急に? ゲームではこの時期に安息領が何かやらかしたことがなかったんだけど?
……と思ったけど、そもそも『隠された島の主人』の介入を考えれば想定外の事態もいくらでも起こりうるだろう。安息領のアジトを襲撃させたこともあるというからなおさら。
もちろん、まだ生徒である私が気にする問題ではない。けれど……どうせあの邪毒神について調べるつもりだったから、これがチャンスかもしれない。
「計画を変更するわ。今からアカデミーの外に行こう」
―――――
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