市街戦の開幕
私はすぐにアカデミーを出た。もともと連れて行こうとしたメンバーたち……に加えて、勝手についてきた子たちまで連れて。
「アルカ、なんで来たの?」
私の隣にぴったりくっついて走っていたアルカが鼻を鳴らした。
「お姉様がまた一人で無理してるのか監視しに行くんですよ」
「危ないかもしれないわよ。帰りなさい」
「いやです。お姉様こそ危ないかもしれない所にむやみに行くじゃないですか」
「……はぁ。みんなから離れないで」
まったく、頑固なんだわね。
なぜアルカがここにいるのかというと、実は私のミスのせいだ。突然の計画変更でアカデミーからちょっと出るって連絡をしたけど、ついアルカがその理由に関心を持ってしまったのだ。思わず素直に話したら、すぐにアルカが私を追いかけてきた。おまけにリディアとジェフィスまで一緒に。
「まぁ、君が向かっている時点で他の子たちを止める名分は足りないぞ」
ジェリアは笑いながらそう言うだけだった。
とにかく、不本意ながら規模が大きくなってしまったみんなを連れて王都の中を走った。いや、正確には屋根の上を移動していた。地上は邪魔物が多いから。
『隠された島の主人』の信奉者たちが安息領と戦っているという場所は……すぐ見つけた。そもそも騒乱事態が起きて一帯が騒がしくなったのだ。しかもなかなか本格的に戦っているのか、戦闘中と見られる魔力の揺れまで感じられた。
「どっちが始めたかはわからないけど、迷惑がひどいわね本当に」
到着まではあまりかからなかった。私たちが早かったからでもあったけれど、交戦地域が広くてそもそも距離が遠くなかったのだ。
私たちはすぐに地上に下り立った。交戦地域の周辺を統制する騎士が見えた。私はすぐにその騎士に近づいた。
「失礼します!」
「誰……貴方は!?」
相手は私を見てびっくりした。私は相手を知らないのに……といっても、公爵令嬢だし嘱望される騎士候補の私の顔はもう有名だから仕方ない。うわぁ、これ自分の口で言うとすごく恥ずかしいわ。
「アカデミー騎士科五年生、テリア・マイティ・オステノヴァと申します。生意気ですが騎士見習いとして様子を見に来ましたわ」
「オステノヴァ公爵令嬢にお会いします。永遠騎士団第6-2十人隊所属の平騎士、テナント・アルギスです。状況を見に来られたんですか?」
「はい。『隠された島の主人』の信奉者たちと安息領の間で戦いが起きたと聞きました。内部状況は機密ですの?」
「いいえ、そうではありません。そしてオステノヴァ公爵令嬢が訪問したら、すぐに事実通り説明するよう指示されました」
その瞬間、ジェリアはプッと笑い出した。ジェリアだけでなく、ロベルとトリアも同じ反応だった。それを見たアルカは細目をあけて私を見た。
「お姉様、どれだけこんなことに干渉して……」
「あ、アルギス卿! 状況はどうですの!?」
アルカの声を覆い隠そうとして声を荒げてしまった。テナントさんは苦笑いして口を開いた。
「安息領出現の届出が騎士団に受け付けられました。すぐに対応部隊が出動したのですが、その部隊が安息領に遭遇するのとほぼ同時に『隠された島の主人』の信奉者たちが乱入しました。彼らは安息領を攻撃するだけで、騎士団に敵対の意思は示していませんが……」
「が?」
「安息領を攻撃することだけを優先し、むやみに戦闘を繰り広げています。安息領もローレースを大量解放しまいました。そのように戦闘の規模が大きくなり、現在市街の被害が大きくなっています」
「騎士団では何を?」
「一旦一帯を統制し、民間人の避難に力を入れています。区域をパトロールしていた部隊と対応部隊だけでは騎士の数が足りないのです。そのため、本隊の支援が来るまでは民間人を安全に避難させることに力を入れています」
「ありがとうございます。上部から私の乱入は防ぐよう指示されましたの?」
「いいえ。むしろオステノヴァの令嬢が乱入しようとするなら、すぐ道を開くように言われました」
「あら、ありがとうございます。それじゃすぐ好意に頼るようにしましょう」
やっぱり永遠騎士団。王都と周辺一帯を守る騎士団なので、私とは何かと交流が多かった。それだけに私がどんな者なのかをよく知っているわね。
私はすぐに中に突撃しようとした。でもその直前、テナントさんが私を呼び止めた。
「お気をつけください、オステノヴァ公爵令嬢。中にいる奴ら、特に安息領の方が尋常ではありません。雑兵たちも普通の雑兵たちと違っていましたが、特に彼らを率いるトップが相当な実力者のようです。こちらの百夫長が一撃で制圧されました。死ななかったのも相手が手加減をしたおかげでした」
「ご警告ありがとうございます」
私はすぐにエリアに入った。そして魔力が感じられる方向に走った。間もなく魔物が見えた。複数の魔物を合成して作り出したザコキメラ、ローレースアルファだ。
「お姉様! あれは……!?」
「安息領の奴らが作り出した魔物のキメラよ。早く始末するわ!」
私はすぐに〈選別者〉を発動して自分自身を強化した後、自ら雷電となって突進した。
――『万壊電』専用技〈雷神化〉
突進しながら周辺一帯を雷電で埋め尽くした。ローレースアルファたちは一瞬で全滅した。他のみんなが武器を取る時間さえなかった。
「早いな」
「もう隠す必要がないから」
〈雷神化〉を維持したまま、その速度を利用して素早く移動した。他のみんなが必死に私についてくる気配を後にして、途中で出会う魔物を全部破壊して燃やしながら、私はまず一番大きな魔力が感じられる所に向かった。
【すごい巨大な魔力だね。魔力量だけを見れば今まで会ったすべての存在の中でも最大じゃない?】
[そう。息詰まるほど濃密で巨大な魔力……誰なのか分かる気がするわ]
見当はつく。だからこそ歩みを急いだ。
早く
―――――
読んでくださってありがとうございます!
面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!
一個だけでもいいから、☆とフォローをくだされば嬉しいです! 力になります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます