確信

【アルカもなかなかだね。どう、アルカの成長を目撃した気分は?】


[ああ、最高よ]


 イシリンの問いに答え、精一杯沸き立っていた魔力を落ち着かせた。〈選別者〉の威圧感が消え、体から力があふれていた感じも消えた。まだ〈選別者〉を解除していないアルカの威圧感が肌にピリピリとした感じを与えた。


 私の力に比べると赤ん坊同然のレベルだけど、習得したばかりだから仕方ないだろう。むしろ覚醒したばかりの力でここまでやり遂げたことを褒めたいくらいだから。


 いや、本当に客観的にもすごいことよ。覚醒するやいなや『冬天』と『加速』と『結火』までこんなにも使ってみせたから。特に最後のそれは私も心から驚いた。


 突然発生した爆発はリディアの技術である〈爆炎気雷〉。目に見えない、魔力も感知されないように隠蔽された〈爆炎石〉を虚空に設置する技だ。威力は低いけれど隠蔽性の高いそれを、さらに威力を限界まで犠牲にして隠蔽力を極限まで高めたのだ。私の感覚さえ欺くほど。


 ……私もゲームから出てきたから知っているだけで、リディアがあの技を私の前で使ったことは一度もなかったのに。もしかしてリディアがアルカと模擬戦をする時だけこっそり見せてくれたのかしら?


 一方、アルカは少し心配そうな顔で私を見ていた。……心配?


「どうしたの? せっかく勝ったくせに」


「……! 勝ったんですよね? 私の勝ちなんですよね!?」


「ええ。私が設定した勝利条件を満たしたじゃない」


「やった!」


 ……あ、ひょっとしたら私が認めないかもしれないと思って不安だったのかしら? 強くなっても可愛いわね、本当に。


 けれど、言うべきことは言わないと。


「しっかり力を悟らせたわね。出来したわ」


「いいえ、お姉様のおかげです。こうなってから分かりました。序盤に魔力を大量に注ぎ込んだのがこのためでしたよね?」


「あら、バレたわね」


 アルカの言う通りだ。


『万魔掌握』が特性複製をするためには複製する対象となる魔力を一定量以上吸収しなければならない。そしてその能力を初めて覚醒させる条件は複製する魔力が大量に蓄積されること。


 今のアルカはゲームの彼女に比べて他人の魔力に早く接したけど、その力に気づくにははるかに足りなかった。それで私はわざと魔力を大量に注ぎ込むことで、必要な魔力量を今この場で急激に注入した。


「お姉様は本当にすごいです。私も知らない私の力をそんなによくご存知だなんて」


「偶然なのよ。むしろ自覚したばかりの力をあんなに上手に使った貴方の方がすごいわ」


「……私はまだまだです。うまく使ったとも言えませんし」


 アルカは苦笑いしながら自分の手を見下ろした。


 確かに、速度を急いで上げてうまくコントロールできなかったわね。それに技術が足りなくて力に依存する傾向も相変わらずだし。でも今回のことでもっと大きな力を得たのでさらに、その力をきちんと使う方法を身につけなければならない。


「少し残念だったわね。その問題を解決する方法は練習だけ。だからこれからは私が直接鍛えてあげる」


 大変だと泣いても手加減はしないわよ。気苦労をさせたことに対するささやかな復讐としてね。


 自己中で利己的な考えだったけど、なぜかアルカは嬉しそうに目を輝かせた。


「それは本当ですよね!?」


「え? 何が?」


鍛えてくださるって!」


「え、ええ。そういうつもりなんだけど……」


「やった!」


 そこに注目した? 妹を愛する姉として嬉しいけど、何かちょっと微妙な気分だ。


 とにかく一件落着だね……と思ってほっとした。でもその時、アルカが少し真剣な顔をした。


「ところでお姉様、この前啓示夢をくれた邪毒神が誰なのか分かったんです」


「え?」


 急に? 私が現場実習に行った間、何か進展があったのかしら?


 そう思ったけど、アルカの次の言葉は驚くべきものだった。


「さっき気を失った時、その邪毒神に会いました。いや、本人がそう主張しただけだったんですけどね」


 アルカはその時の状況とやり取りを詳しく話してくれた。


 啓示夢の邪毒神が『隠された島の主人』だって? いや、それよりあいつがその空間にいた魔力の塊を制御したなんて、一体どういうこと?


 アルカの思い通り、それはアルカ自身の力だ。そのため、アルカはそこに接触しただけでも自分の力の本質に気づき、力をどのように使うべきか気づいた。ゲームではその過程で他の存在が介入したことはなかった。


 そうだったはずなのに。


〝自分の努力でここに至ったのじゃないからかな?〟


 ……あの邪毒神はどこまで知っているの?


 本当にあの邪毒神がアルカに啓示夢をくれた奴なら。その邪毒神は私のことをアルカに知らせ、アルカが力を覚醒させるのに役立ったということになる。でも、話しているのを見るとアルカのことをそんなによく思っているようじゃない。


〝平行世界を司るという理論もあります〟


 ……キャサリン先生が『隠された島の主人』についてそう言ったとき、私はそれがまるでゲームのさまざまなルートを連想させるようだと思った。


 それだけならただの当て推量に過ぎない。でもアルカが見た啓示夢にはゲームの中の私の姿もあった。今この世界で私が犯した無謀なことだけならともかく、ゲームの姿まであったというのは………意味が完全に変わる。


 その邪毒神の正体は……いくつかの推測はある。でも全部根拠が足りない憶測だ。それに矛盾する点もあるし。だから正体まではまだ分からない。けれど、一つだけは確かだ。


 それは。




『隠された島の主人』は……主人公のアルカと敵対者の私に対し、何か介入しようとしているとのこと。


―――――


読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とフォローをくだされば嬉しいです! 力になります!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る