テリアの納得
「アルカ……」
私は目を閉じた。
言いたいことは多い。許可したくない気持ちは相変わらず強い。そして許可できない理由が決してアルカを信じないからではないということを言いたい。
けれど……そんなことは今言っても別に意味がない。
「決心はしっかりしてるよね?」
目を開けてアルカを眺めた。彼女の目は依然として断固としていて、確信に満ちていた。その気持ちに応えてあげたいと思うくらい。
アルカは堂々と頷いた。
「はい。現場実習は一ヶ月くらいですよね? その間、私も確実に変わっていると思います」
「ふーん……そう」
一人で物思いにふけって曖昧な態度で答えてしまった。そのせいで私が認めないと思ったのだろう。アルカは不安そうな顔でまた口を開いた。
「ダメ……なんですか?」
「いや、そういうことじゃないわ。ただちょっと考えてただけよ」
ニッコリ笑ってアルカの頭に手をのせた。アルカは少し驚いたように目を丸くした。でもすぐに恥ずかしそうに笑いながら、私の手に自分の手を重ねた。私もその心に惹かれて気分がよくなった。
「よし、私も一つ考えておくわ」
「……もしかして何とか断る方法を探そうとしているのじゃないですか?」
……妹よ。そんなに疑わしいように見ないでくれる? お姉ちゃんがそんなに信じられないの? 私もそういうお姉ちゃんだということは認めるけど。
「違うわよ。私も真剣に応じてあげようとしてね」
「許してくれるんですか!?」
すぐ目を輝かせながら飛びつくアルカ。あのね、先に言い出したのは貴方でしょ? なんでそう反応するのよ?
「せっかちすぎじゃない。とりあえず現場実習が終わった後でまた話そうよ」
「はい! 頑張ります!」
「でも覚悟しなさい」
「えっ?」
アルカは可愛く首をかしげた。
……うっ。うっかり降伏するところだった。危ないよこの子。
「貴方は私が現場実習に行っている間に変わると言ったけど、具体的にどうやってそれを証明するの?」
「それは……力自慢?」
「……そうだと思ったわ。具体的な方法なんて考えたことないよね? だからその方法は私が決めるわよ」
アルカは不安そうな顔をした。
私がどんな方法を使うかわからないからだろう。もしこのすべてが言い訳で、何かとんでもないことを要求して無理やり拒否すると思ったのかもしれない。
「フフッ、心配しないでね。変なことはしないから。ただ……貴方の目標は単に執行部に入部することだけじゃないでしょう? 私についてくるのだから。ところでね、私と一緒に戦うためには必ず満たさなきゃならない条件があるわよ」
「条件、ですか? それは何ですか?」
「それは後の楽しみとして残しておくわ。でもとにかく力に関することよ。だから貴方がすべきことに変化はないの。ただ一つヒントをあげるとしたら……貴方の力が何なのかをよく考えてみて」
「私の力……特性のことですか?」
「そう。条件が何なのかは話してくれないけど、貴方の力がその条件とかなり密接な関係があるということだけは言っておくわ。貴方が言った〝変わる〟ことのためにもね」
「……はい、信じます」
幸い、アルカはそれで納得して退いてくれた。
アルカが席を立つやいなやイシリンが話しかけた。
【どういうつもり? 本当に許すの?】
[アルカに言った通りよ。条件を満たせば許してあげられるわ]
【ふーん。この前までは絶対反対じゃなかったの? 急にどうしてそう思ったの?】
イシリンの言う通りだ。この前まではどんな条件があっても許すつもりはなかったから。
[貴方が言ったじゃない? 万全を期したいなら〝主人公〟であるアルカの力も必要じゃないかって]
【それはそう。でも貴方は〝主人公〟の空席を直接埋めるという立場だったじゃない?】
[ええ、そうだったわね。でも今回感じたわ。アルカが真剣に意地を張ったら、私としては止められないのよ。もし私がここでずっと意地を張っていたらどうなると思う?]
【……そうね。アルカが諦めてくれたら幸いだけど、貴方の言うことを聞かずに勝手に追いかけてくる可能性もあるわ】
[そうなるとかえって危険じゃない。むしろ私の傍で統制できる状態が良いわよ。もちろん無条件で許すつもりはないの。現場実習が終わった後に私が掲げた条件を満たさなきゃ、何をしてもアルカに諦めさせる]
【そういえば条件って言ったよね? 何の条件をかけるつもり?】
[それは秘密にしておくわ。不合理な条件のようなものではないの]
条件とはいえ、厳密に言えば必ず必要な要素だ。もしその条件を満たさなければ、私についてきてもアルカが危険になるだけだから。最悪、その条件を満たせなかったせいでアルカが死んじゃうかもしれない。
……もしアルカが条件を満たせなくても意地を張るなら、その時は殴ってでも諦めさせる。アルカの安全のためにも。
ただし、アルカなら必ずその条件を満たすことができるという信頼はある。今のアルカを信じる心……もあるけれど、実はゲームのアルカを考えて下した判断だ。
アルカの特性、『万魔掌握』の真の力。そしてこの世界の〝主人公〟であるアルカの成長速度と限界のない潜在力。もし今その力を覚醒させることができれば、アルカの力はゲームとは比べ物にならないほどすごくなる。そうなれば、これ以上私が守ってあげる必要さえなくなる。
「……楽しみだね」
思わず口からつぶやくほど心が高揚した。
喧嘩をした時はどうなるか心配していた。でもアルカはバカな姉を憎まず、強い気持ちで近づいてくれた。それなら私も姉として恩返しをしなきゃいけないだろう。
そんな期待感を抱いたまま時間が経ち、私は現場実習に向かった。
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