発見

 トリアから資料を受け取って数日後、アカデミー第二練習場。


 私は久しぶりにジェリアと模擬戦をしていた。


「はああああ!」


 力強い気合の音が鳴り、砕けた氷片が散乱した。


 そして紫色の雷電を散らしながらその間を走り回る私と、そんな私をまるで不動の要塞のように堅く立って迎撃するジェリアがいた。


 ジェリアは愛剣である冬氷剣が羽のように軽く素早く振り回した。だけど剣の重さに魔力まで重なった結果、台風のような衝撃波が周辺を襲った。


「くっ!?」


 そんなジェリアだったけれど、私の斬撃はそれさえも突破して彼女の頬にかすめた。それだけでなく、暴風のように吹きまくるジェリアの斬撃を正確に弾き飛ばした。


 もちろん、ジェリアもやられてばかりじゃない。彼女の重剣は私の高速剣に劣らず速く、四方から湧き出る氷が刃や槍、鉄槌など多様な形状に変わって私を襲った。それらすべての猛攻が私の勢いを止めようとした。


「ふん!」


 紫色の雷電が一帯を明るく染めた。『万壊電』特有の崩壊の力が氷を全て破壊し、その勢いのままジェリアにまで飛ぶ。しかし、ジェリアはジェリアで氷と魔力で雷電を相殺した。


 相殺される魔力と魔力の間を二本の剣が走った。剣身がぶつかって火花を散り、その炎を切り裂きながら重剣が私に迫ってきた。


 でもその時、私はすでにジェリアの頭の上に飛び上がった状態だった。


「!?」


 ほんの少し遅れてそれに気づいたジェリアが私を振り返るのと、私が両手に持った双剣・・・・・・・・を振り回したのはほぼ同時だった。


 瞬間的に作られた氷の盾は『万壊電』が入れられた斬撃であっけなく崩れた。でもジェリアは避ける代わりに、氷と魔弾を一瞬にして大量に作り出して物量で相殺した。


 ――狂竜剣流〈竜の爪〉


 散らばる魔力光の間を通過した多重斬撃。剣を交差させて防いだけど、その瞬間恐ろしい衝撃と圧力が私を襲った。


「くっ!?」


 ドカンと、まるで爆弾が爆発したかのような轟音が鳴った。私はその威力を剣で受け止めたけれど、勢いを殺せずにそのまま練習場の果てまで飛ばされてしまった。


 腕がしびれるよね、これ。


 そんな感想を抱きながらも、私は前を見る前に先に剣を振り上げた。


 ――天空流〈三日月描き〉


 ――狂竜剣流〈竜の拳〉


 私が放った魔力の斬撃と、瞬く間に突進してきたジェリアの衝撃波がぶつかり合った。魔力が爆散して練習場の結界を揺るがした。


 その余波が消える前にジェリアが『冬天』の力を込めた斬撃を飛ばした。


 ――紫光技特性模写、『鋼体』・『獄炎』・『万壊電』


『鋼体』で体に怪力を付与し、両手にそれぞれ紫色の火炎と雷電を与えた斬撃でジェリアの攻撃を粉砕した。


 逆に攻撃を防げなかったジェリアが大きく後退した。私はそんな彼女を追跡して剣を振り回した。重剣を持ち上げて防御姿勢をとったジェリアを殴りつけて剣ごと吹き飛ばした。


 次の瞬間、私は雷火をまき散らしながらまたジェリアの上へ移動した。


 ――天空流〈流星撃ち〉


 狂竜剣流、『冬天』専用技〈昇天〉


 冷気と氷が入り混じって暴風のように吹きまくる斬撃が放たれた。だけど私の〈流星撃ち〉がその中心を正確に貫いた。


 ジェリアはその突きを流したけど姿勢が崩れた。そして下に突進した私が剣を振り下ろすと地を転がって避けた。


「……ほんの数日しか経っていないのに何よ。怖いじゃない」


 追い上げずにそう話しかけると、ジェリアは警戒するように魔力を高めながらも鼻で笑った。


「終始優勢だった奴からそんなこと言われたくないぞ」


「でも本気よ。数日前と比べると、魔力の使い方ががらりと変わったじゃない」


「まぁ、いい見本があったからな。おかげで早く分かったぞ」


「そんなレベル以上だもの」


「まぁ、緊張していろ。すぐ追いかけるからな」


 ただの虚勢とは聞こえないのでもっと怖いよね。


 入学式の日までは、ジェリアは身体強化だけが完璧だった。力を爆発させて圧倒的な破壊力を発散するのが少し未熟だった。でも、わずか数日ぶりに、すでにその弱点をかなり克服したようだ。


 ……さすが攻略対象者の才能。凄まじい。中ボスである私が言うことではないけど。


 まぁ、模擬戦をしながらそれを感じたので、双剣を取り出したわけでもあるし。


「それで? まさかここでやめようとしてるんじゃないよな? やっと体が温めたぞ」


「心配しないで。私も一度剣を抜いたらおしまいを見たいだ……もの!!」


 文字通り閃光になってジェリアに飛びかかった。


 ジェリアは重剣を壁のように立てて私の剣を止め、反撃で十数個の氷槍を作って撃った。それを私の双剣が全て撃墜したけれど、壊れた氷片一つ一つが全部鋭い刃になって雨のように降り注いだ。


「ふん!!」


 紫の雷を四方にまき散らして氷を吹き飛ばすと同時に、私自身は魔力たっぷりの剣を振り回す。ジェリアは後ろに下がって避けた。


 斬撃は代わりに一帯の地を破壊し、大小の破片と土埃が飛び散った。


「しまっ……!?」


 当惑した声を流すジェリア。遅ればせながらミスに気づいたのだろう。


 不安定になった足場のせいでジェリアはぐらついた。


 私はそんなジェリアの周りの空間を駆け巡り、斬撃を浴びせた。するとジェリアが怒声を上げた。


「本っ当にコバエみたいだな!!」


 巨大な〈竜の拳〉が四方を掃いて破片を吹き飛ばした。


 相殺はした。でもその間、ジェリアは氷で足元を安定させて姿勢を固めた。


 ――狂竜剣流〈竜の咆哮〉


 巨大な魔力砲が発射された。私は上空に跳躍して避けたけど、一歩遅れてそれがジェリアの狙いだと気づいた。


 ――『冬天』専用技〈冬の城塞〉


 上空一帯の広範囲な領域が同時に凍りつき、まるで周りを塞ぐような氷構造物を形成した。


 目的は多分……いや、間違いなく私の空中機動を封鎖すること。その証拠で私が跳躍してきた下側も瞬く間に氷に覆われた。


 そしてジェリアはすでに大量の魔力を剣に集めていた。


 ――狂竜剣流『冬天』専用技〈暴食の歯〉


 放たれた嵐は、ジェリアが構築した氷の通路よりもはるかに大きかった。だけど通路にぶつかって削られていくどころか、逆に通路の氷を吸収してますます密度が高くなった。


 ――紫光技特性模写『爆裂』・『獄炎』・『拡散』


 極限まで魔力を込めた斬撃を全力で放つ。


 十字を描く巨大な斬撃が氷の通路を打ち砕いた。そしてそのまま〈暴食の歯〉とぶつかって互いを激しく押し出した。魔力が爆発して激しい風が吹き荒れた。


 私は両攻撃が競合する地点に向かって正面から突進した。


 ――天空流〈彗星描き〉


 衝突して渦巻く魔力を突き抜けて下へ。


 ミキサーのように容赦なく私をすりおろそうとする魔力を逆に突き破って進んだ。


 ジェリアは私の攻撃を避けた。しかし私はジェリアを追いかけず、そのまま地面に激突した。そして凝縮した魔力を剣に集中してそのまま爆発させた。


 ドカァァンとうるさい音が鳴り、『爆裂』と『拡散』の力でまるで大きな隕石でも落ちたように地面が爆発した。後ろに避けていたジェリアを練習場の果てまで衝撃波だけで押し出してしまうほどだった。


 それでも魔力を整える気配が感じられるのを見れば、やっぱりジェリアはこの程度でビビって縮こまる子ではないようだ。まぁ、ゲームでもそうだったわね。


 でも私はジェリアに立ち向かわなかった。なぜなら私が作ったクレーターの下……もう少し具体的には、私の足元で見逃せばいけない魔力が感じられたから。


 強力な隠蔽の魔力で隠された気配。だけど『浄潔世界』の能力者である私なら感知できないわけがない気配だった。


 私は密かに魔力を送って隠蔽工作の魔力を弱めた。


「これは……」


「何だ? どうした?」


 いつの間にか近づいてきたジェリアがクレーターの前でこちらをのぞき込んだ。


 私の魔力の流れを通じて戦闘態勢を解除したことを感じたのだろう。


「ちょっとこっち来て。何か見つけたわ」


「ちっ、すごく面白かったのに。何を見つけたと……」


 ジェリアはイライラしたため息をついた。でもクレーターの下に来て私が見つけた魔力の気配を確認した瞬間、先ほどとは違う意味で眉をひそめた。


「何だこれ?」


「ちょっと待って」


 私は刃先に魔力を集中して地に撃った。瞬く間に地中に潜り込んだ魔力が気配の根源をつかんだ。魔力でそれを包み、引っ張って地面から抜いた。


 それが現れるとジェリアはまた眉をひそめた。


「これは……邪毒陣?」


 まるで魔法陣のように怪しい紋様をした陣と、そこから少しずつ流れ出る邪毒。


 ジェリアの言う通り、邪毒陣と呼ばれる特殊な物だ。簡単に言えば、邪毒に特化した魔法陣のようなものというか。


 主な機能は邪毒を広めたり、急速に吐き出したり、邪毒に関連するものを強化したりなど。何であれ要は〝邪毒に関わる現象を起こす〟ということ。


 こう言えば何か危険千万なテロ用のようだけど、ごく少量の邪毒は上手く管理すれば有益な用途に使われることもありうる。三年前の私が母上の前で使った魔道具もそのようなケースだ。


 ただし、いくら安全な魔道具や邪毒陣でも、下手をすると被害を起こしかねない危険物であることは変わらない。そのため、その取り扱いは厳重に管理される。


 当然だけどこんに地中に隠された邪毒陣はそんな〝厳重に管理される〟ケースではない。


 その上、この邪毒陣は私が弱体化させるまでは強力な隠蔽の魔力で保護されていた。私の特性が邪毒に極度に敏感な『浄潔世界』でなかったら、その気配を見つけることができなかっただろう。


「どんな奴が設置したんだ?」


 ジェリアの目が鋭くなった。その上、『冬天』の魔力が漏れ、周りの気温も急激に下がっていた。


 ……おっと、これは危ない。


 まずはジェリアから落ち着かせよう。


―――――


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