裏切られた者の怒り
この手記はおそらく真実だと、パメラはすぐに確信した。筆跡も確かだが、何よりも当時の状況と合っているから。
今になって思えば、アディオンはいつもティステに申し訳ないようだった。いつも彼女を配慮し、顔色を伺い、時には罪悪感があるようだった。そしてティステが理由を尋ねると、いつも返事を避けた。リニアに相談しても同じだった。
手記を見ると、リニアはアディオンが決定を下した後も激しく反対した。だがアディオンが意志を固めると、リニアは結局彼と一緒に罪を背負うことにした。アディオンの反対にも意を曲げずに。
『私の魂はきっと地獄に落ちてバラバラに裂けるだろう』
『この道をリニアに一緒にさせることはできない』
『しかし……彼女の言葉は私に救いをくれた』
「いや、救いではない。そう考えることすらもティステに対する私の罪をさらに重くする憎らしい逃避に過ぎない』
その節で、パメラは手記を閉じてしまった。これ以上読む必要がなかったから。
アディオンはティステに罪がないことを知っていた。むしろ彼はティステを愛していたし、最後まで他の方法がないか悩んだ。しかし結局、方法がないと判断した。そして政治的目的のために罪を被せたのだ。
そうしなければならなかった理由は……皮肉なことに、ティステが完璧で理想的な公女だからだった。
テリベル公爵家のイメージはティステが作ったものだった。ティステの人柄と人望がテリベル公爵家の格を高めたし、テリベル公爵はそれを十分に活用した。そのため、それを破るためにはイメージの主軸であるティステを悪女にするのが最も確実な方法だった。
すべてを知ってしまったパメラの胸の奥底で、感情が湧いた。
「……ふざけないで」
罪がないことを知っていたって? ティステに恋をしていたって? それが何の関係があるのか。結局裏切って殺したという結末であることを。
「……バカみたい」
他に方法がなかったって? 政治的目的のために? 本当になかったかは知るすべがない。さらに、テリベル公爵の反乱である一年の血河とその直後の三王国征伐はアルトヴィア王国軍とアディオン王子の圧倒的な力で素早く終結した。それほどの力があるのに、ティステの死がなかったといって王家が敗北する可能性があったのか。内戦が手に負えないほど拡大する可能性があったのか。
「ふざけないで……!!」
ティステの人柄と人望を削らざるを得なかったって? ならばなぜそれを利用しなかったのか? ティステの勢力は公爵とは別物だった。むしろティステに真実を知らせ、協力を要請していたら、他の方法を見つけることができたかもしれない。父のことだからそうはいかないと思ったのか?
どんな事情があっても、
「ふざけないで、ふざけないで、バカみたい、ふざけないでフザケナイデバカミタイフザケナイデこのクソヤロウが……!!!」
恋? 裏事情? 関係ない。全然関係ない。結局、真実は一つだけだ。彼らは
パメラの感情が暴走し、魔法が暴れた。書庫の本棚と本がめちゃくちゃに壊れ、引き裂かれ、飛び回った。アレクは慌てて彼女に駆け寄った。
「殿下! どうか落ち着……くっ、氷壁よ!」
アレクの氷壁は暴走する魔力を遮断した。しかしパメラを落ち着かせることはできなかった。いくら叫んで、時には魔法を試してみても、パメラの魔法を落ち着かせることは不可能だった。被害が広がらないように防ぐだけで限界だった。
結局、パメラが落ち着くまでには十分かかった。
「……アレク。もう大丈夫ですの」
「本当に大丈夫ですか?」
「はい、ご心配をおかけして申し訳ありません」
アレクは氷壁を解除するとすぐにパメラに駆けつけた。そして視線だけで彼女の状態を確認し、傷がないことに安堵した。直後ひざまずいた。
「申し訳ございません。暴れる魔法が殿下を傷つけるかもしれないのに、周辺に被害が広がることを防ぐことしかできませんでした」
「大丈夫です。それが貴方の最善だったはずですから。貴方が怪我をしなくてよかったです」
パメラは指パッチンをした。めちゃくちゃになった本棚と本が瞬く間に元に戻った。そしてアディオンの手記も元の場所に向かって飛んでいった。
「誰の手記かわからないっておっしゃったこと、嘘でしょう?」
「……申し訳ございません」
「理解しますわ。貴方の父上である皇帝が無実の公女を殺す内容です、と言うことはできなかったでしょうから。父上の恥部を私に見せることさえためらったのでしょう。でも、見せてくださってありがとうございます。……それで、貴方はどう思いますの?」
「……正しくないことでした。どんな目的と背景があっても、自分を信じていたはずの人に罪を被せて処刑したのは、その人に対する裏切りです」
「フフ、それなら罪を問うしかないですわね」
アレクは当惑した。罪を問う、その言葉の意味をすぐに悟ったから。
パメラは微笑んだ。
「選択肢をあげますわよ。一つは今日見たことを忘れて平凡な見習い騎士に戻ること。そしてもう一つは私についてくること」
「殿下についていく……何をなさるんですか?」
「罪があるならその代価を払わなければならない。これは私が父上から教わったものですの。その言葉を……実践させるべきですわね」
それ以上の説明は必要なかった。
アレクはためらった。見習いとはいえ騎士の彼にとって、皇帝に反旗を翻すというのはあり得ないことだから。しかし彼は非公式ではあるが、パメラの騎士になった。そしてパメラがティステの転生者であることを知らなくても、皇帝に罪があることは明白だった。それに背を向けるのも彼の正義に反する。
「一つだけお答えください。またこの国に血の河が流れるのですか?」
「断言はできませんけれど、そうはならないようにしますわよ。正直、可能だという自信はありませんけれど」
アレクは悩んだ。しかし、その悩みは長くなかった。
パメラの手を優しく握った彼は彼女の手の甲に口づけをした。それが答えだった。
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