才能
宣言通り〝激しく行く〟アレクの剣筋はさすがに厳しかった。
パメラが反撃する隙をなくす連続攻撃が続いた。パメラも攻撃を受け流して何とかアレクの隙を作ろうとしたが、今のアレクは少しも姿勢を崩さなかった。わざと欺瞞や対処が困難な攻撃なしに正直な剣路だけ選んでいるにもかかわらず、純粋な技術と身体能力がパメラを追い詰めた。
だが、パメラもやられてばかりではなかった。
「はあ、あっ!」
少し余裕ができた瞬間、パメラは全力で剣を振り回した。二人の剣が激しくぶつかった。だがアレクの剣がパメラの力を柔らかく受け流し、パメラの姿勢が大きく崩れた。
「あっ!?」
「果敢なお試みでしたが、白々しすぎです」
アレクは転びそうとするパメラを優しく受け取った。
「でも本当にすごいですね。剣を握ってからわずか何日目というのが信じられないほどです」
「貴方には全然届かないですけどね」
「せいぜい基礎を何日か習っただけの十才の皇女様に負けてしまったら、自分引退しまいますが? 実はここまで相手ができるだけでも自分の立場は十分に危険です。これも『万能』と関係がありますか?」
「まぁ、そうですね。そういえば、もう一度手合わせしてから申し上げるという約束でしたよね?」
パメラは服を手で叩きながら言った。
「動作制御魔法ということ、ご存じですの?」
「動作制御……聞いたことはあります。頭の中で描いたイメージ通りに体が動くように制御する魔法だったのでしょうか」
「はい。普通は文字通り思った通りの動きを取るのです。でも少し応用すれば技術を身につけることもできますわよ」
本来の動作制御魔法は頭の中で動作のイメージを描き、そのイメージを体で具現する。しかし、魔法の設計段階であらかじめ動作と技術を組み込めば、思考段階を省略して動作を身につけることができる。まるで長い間練習してきた熟練者のように自然に動作と技術を展開できるのだ。
パメラはアレクから学んだ基礎と視察の時に見た騎士団の訓練の様子などを魔法で再構成し、体につける魔法を開発した。それが身体に熟練した剣術を付与する〈剣術発現〉である。
アレクはパメラの説明を聞いて驚嘆した。
「すごいですね。魔法をそんな風に構成するなんて初めて聞きました」
「まぁ、『万能』じゃないとやりにくい曲芸ですから。身体能力系の適性なら可能かもしれませんけれど」
「いくら『万能』でも、殿下はまだ十才です。それでも適性を理解して魔法をお扱いになる能力がすでにご円熟です。これは天才としか……」
アレクの称賛を聞いていたパメラは、余計に照れくさそうになった。天才も何も、前世の記憶があるだけだけど――というのが彼女の本音だった。
実際、動作制御魔法の発展原理を発見した者は前世のパメラ、すなわちティステだった。そのきっかけも実はダンスが下手だったことを克服するために。いわば練習を飛ばして便法を追求したのだから、ティステには恥ずかしい黒歴史だった。その黒歴史がこんなに役に立つとは思わなかった。
「そして殿下。魔法もすごいですが、結局説明によると、その魔法は技術を身につけるだけみたいですね。しかし殿下は反射的な対応と臨機応変も相当なレベルでした。魔法とは別に、剣の才能があるのは確かです。見習い騎士の目なので信頼できないかもしれませんが」
「ふふ、いいえ。そこまで情熱的におっしゃるのなら信じますわ」
実はパメラ自身も少しは自覚していた。技は魔法で付与するとしても、その技を活用する感覚が思ったより優れていると。
ただ疑問なのは、前世のティステは全般的に体を使うこと自体が苦手だったということ。ダンスのために動作制御魔法を開発したのもそのためだった。ところが、今のパメラは魔法で付与した以上を活用している。もしかしたら……これは〝ティステ〟ではなく〝パメラ〟の才能なのだろうか。そんな気がするくらい。
「とにかく、私はもっとできますわよ。どうせならもっと手合わせをしてみたいんですけど……」
「それでは魔法を含む手合わせをしてみませんか?」
「魔法を含む?」
「はい。殿下の魔法センスなら、魔法と一緒の方が優れているはずです」
「面白そうですわね。一度やってみましょう」
そうして魔法を使う手合わせが始まった。その結果は――想像以上だった。
「盾よ!」
アレクの呪文を詠唱して作られた氷の盾を、パメラの火が溶かした。アレクの剣は炎を切り裂いたが、突然現れた光の盾が剣を弾き出した。そして数本の光の剣がアレクに撃たれた。
「槍よ! 敵の軍勢を打ち砕け!」
氷の槍の軍勢が光の剣の弾幕を撃退した。しかし、追加で現れた火の剣のため、パメラには届かなかった。続いて雷電の剣が速いスピードでアレクを牽制し、その隙をパメラの剣が刺した。アレクがそれを受け取った瞬間、今度は彼の足元から岩の剣が突き出た。
「巨人よ! 踏み鳴らせ!」
強烈な衝撃波が岩の剣の弾幕を踏んで砕いた。地鳴りがパメラのバランスまで奪った。しかしアレクの剣が彼女を狙った瞬間、氷の鎖が彼の剣を束縛した。今度こそパメラが剣を放った。
「剣よ。我が手で輝け」
アレクは首を動くだけでパメラの剣を避け、片手でパメラの手首をつかんだ。そして反対側の手が氷の剣でパメラの魔法を切り裂き、彼女の首を狙った。
「……それなりに自信はあったのに」
「自信あるのが当然の実力でした。……本当にすごいですね」
「あら、お世辞も言いすぎると聞きづらいんですのよ?」
「本気です」
アレクの表情は真剣だった。いや、むしろ少しだけど熱に浮かれた感じさえあった。
―――――
読んでくださってありがとうございます!
面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!
一個だけでもいいから、☆とフォローをくだされば嬉しいです! 力になります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます