才能ある者の発見
「あの騎士は誰ですの?」
騎士団長に似ている青い髪と瞳の少年だった。年齢は恐らくパメラより二、三才ぐらい年上だろう。アルトヴィア帝国騎士団は初めて入団すればまず見習いとしてスタートし、資格を備えれば本隊に昇格する仕組みだ。年から見れば多分あの騎士も見習いだろう。
騎士団長はパメラが指摘した騎士を見て眉をひそめた。
「あの騎士が気に入りませんか?」
「いいえ、逆です。まだ見習いのようですけれども、才能のある方のようで」
騎士団長は安堵したようにそっと微笑んだ。すぐ苦笑いに変わってしまったが。
「皇女殿下にそうおっしゃっていただけて光栄です。しかし、まだあいつはいろいろ不足です。見習いとして入団したばかりの新人でもあります」
「あら、入団したばかりの方ですって? 経歴のある方の実力だと思いましたけれども。すごい方になりそうですわね。それより騎士団長に似た外見で、騎士団長が光栄だとおっしゃったということは……」
「やはり聡明な殿下らしいですね。そうです私の息子です」
「あら、さすがに優れた武家であるタルマン伯爵家らしいですわね」
タルマン伯爵。代々アルトヴィア王国の高位騎士を輩出してきた名家である。王国の歴代騎士団長の四割ほどがタルマン伯爵家の出身であり、騎士団長でない時でさえ軍権の重要な実権を握っていた名家。現在の帝国騎士団長である彼が現タルマン伯爵だ。
幼いタルマンを眺めるパメラの目がさらに輝いた。
パメラが騎士団視察を決めた理由は二つ。一つは騎士団の戦闘訓練を自分の魔法鍛錬の参考にするため。そして二つは自分を補佐し、計画を手伝う騎士の抱き込みだった。
年輪のある騎士たちは強いが、自分の側に抱き込むのは難しい。皇女として彼らの忠誠は受けることができるが、場合によっては現皇帝と敵対しなければならない立場には抱き込めない。
そこでパメラはまだ若い見習い騎士をターゲットに決めた。才能のある見習い騎士を選んで自分の傍に置くために。もちろん見習いといっても堂々と皇帝に敵対することはできないが、皇帝の恥部をさらけ出し共感を引き出すことができれば、自分を助けてくれると期待したからだ。
もちろん、相手がパメラの意図通りに動いてくれるという保証はない。そのため、タルマン伯爵の息子はさらに適任だった。才能と実力があって
「騎士団長。息子さんと話す時間をいただけますの?」
「構いませんが、なぜですか?」
「若いけれど優れた方と縁を結んでおくことは大切なことですからね。将来は私の傍で私を守ってくれる方だと思います」
「まさか私の息子を直属の近衛にするということですか!?」
騎士団長の顔に心からの驚愕が広がった。
騎士団には皇室を守護する近衛騎士隊が存在する。しかし、近衛騎士隊の基本的な役割は〝皇室〟を守ること。その中で皇族個人を守る専属の職位として直属の近衛が別途存在する。
直属近衛は皇族が直接選ぶ存在。当然だが、その立場に選ばれるのは大変光栄であり、見習いの時からその立場が内定する者はほとんどいない。最も多くの騎士団長を輩出したタルマン伯爵家でさえ例外ではない。
それを知っていながら、パメラは平然と微笑んだ。
「そうなることもあるでしょう。おかしいですか?」
「実力足りない息子を高評価してくださったこと、身に余る光栄です。しかし、私の息子がその立場に耐えられるとは思えません」
「心配しないでくださいね。彼を直属の近衛にするかどうかは、彼の成長を見て決めますから。私も個人的な感情だけで資格のない人に重要な職位を与えるバカではありません」
「それはよかったのですが……」
「それでも私の目には自信はあります。まぁ、たった十才の皇女が騎士の才能の何を知っているのかと思えば、言うことはありませんけれど」
しかし、パメラはある程度は受け入れられているはずだと判断した。騎士団長として当然息子の才能については自ら判断を下したことがあるだろうから。そして決定的に……彼には
結局、騎士団長はため息をついた。
「かしこまりました。殿下のお言葉どおり席を取らせていただきます。ただし、私の息子に失望されたと私に不満をお表しになるのはおやめください」
「ご心配なく。がっかりすることはないでしょうから」
「……それは『万能』の適性が教えてくれたことですか?」
「ふふ、さぁね」
もちろん騎士団長の息子の才能を見抜いたのは『万能』の能力で作り出した探知魔法の力だ。だが、そういう力の使い方を身につけたのは前世の記憶のおかげだから、適性の力だけで分かったとは言えないだろう。
とにかく、欲しい人材を見つけた。それがとても気分が良くて、パメラは満面の笑みを浮かべた。
***
アレクシス・ネオ・タルマン。騎士団長の息子だが、誰もその事実を取り上げないほど優れた才能と努力だけで騎士団に入団した若い天才だ。
入団試験の時はわざと髪の毛と瞳の色を偽装し、名前さえ騙してタルマン伯爵家であることを隠した。それでも本来の実力だけで
だがそんな彼でさえ、目の前の状況には言葉が出なかった。
「お会いできて嬉しいですの、アレクシス・ネオ・タルマン卿。私はこの国の第一皇女、パメラ・ハリス・アルトヴィアですの」
第一皇女の直接指名。父にその話を聞いた時は、父が冗談をしているのだと思った。私的な席だったら一発殴りたいくらい。
しかし、父の態度は限りなく真剣だった。息子が皇女に無礼を犯さないようにと念入りに頼む姿は到底冗談のようではなかった。そして来てみると本当にパメラ皇女がいた。さらに、部屋の中に護衛のための騎士が二人いる以外は、完全に一対一だ。
アレクは緊張して唾をゴクリと呑んだ。
―――――
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