適性判別
広い空間を支配するのは厳粛な空気だった。
壇上に向かって長い椅子が並んで配置されているホール。壇上には演説のようなことをするための場が設けられていた。アルトヴィア帝国の国教であるパルマ教の典型的な神殿である。
いや、典型的という言葉は語弊がある。ここは帝国皇城の真横に隣接するパルマ教の本部、俗に本堂と呼ばれる神殿だから。大きさもインテリアも一般的な神殿とは比べ物にならないほどだ。ここで宗教行事を執行する者もまた、それに相応しい地位だけが選ばれる。
その本堂の座席はすでに満席。席が足りなくて立っている人も多かった。そして観客の面々は高位貴族や官僚など、一様に〝パワー〟のある者たちだけだった。
この場とすべての観客が、ただ第一皇女パメラの〝適性判別〟を見学するために設けられた。
本当に、あまりにも大げさじゃない――というのがパメラの本音だった。そもそも適性判別自体はこんなに大げさな行事でもなく、ただ皇女ということでこの場が設けられたのだから。
「それでは、パメラ・ハリス・アルトヴィア第一皇女殿下の適性判別儀式を始めます」
帝都の司教を代表する者、中央大司教が緊張した声を出した。パルマ教でもかなり高い地位の中央大司教でさえ、今だけは緊張していた。
「女神パルマが我々人間にお与えくださった祝福された力。魔法と名付けられたその力をより強力で意味のある使用ができる才能。また、女神がお授けなさった祝福された才能、それを適性と言います」
それを知らない人はこの場にいないはずなのに、と。パメラは心だけで苦笑いした。形式的な手続きが時には滑稽だと思いながら。
中央大司教の言葉通り、この世界には魔法というものがある。しかし、誰もが使える共用魔法には制約が多い。本格的な特異性を発揮できるようにするのが適性だということだ。
人間なら、適性は一人につき一つ。どんな適性かは先天の才能の領域だが、普通適性を覚醒させる時期は八才から十才の間。それで十才の時に適性判別意識を通じて、自分の適性が何かを確認してもらう。
「皇女殿下。この水晶球にお手を」
パメラの頭より少し小さいくらいの大きさの水晶球だった。そこに手を当てて、水晶球から観測される魔力反応を解析すること。適性判別はそんな簡単な意識だ。
「……簡単な儀式を大げさにしすぎじゃないですの?」
パメラは中央大司教にだけ聞こえるように小さく話した。大司教は苦笑いした。
「殿下はアルトヴィア王国が帝国に生まれ変わった後に初めて適性判別儀式をお行いになる皇族です。それだけ皇女殿下に期待する人が多いしかありません。しかも殿下のご両親であるお二人様とも優れた適性を持って生まれた方々です。そのため、さらに期待感も大きいでしょう」
「負担ですわね。このまま何でもない適性が出てしまったら、みんながっかりするでしょう。勝手に期待して勝手にがっかりして、本当に不合理ですの」
「ハハ、それはそうですが、王国の歴史を見るとつまらない適性でも政務の能力を認められ、能力のある君主として記録された方々も多いです。適性だけですべてが決まるわけではありませんのでご安心くださいませ」
「ありがとうございます、大司教」
実はそう言ったが、パメラは妙な予感を感じていた。いや、予感というより不安というか。それは自分が転生者だということのためだった。
前世のパメラ、すなわちティステは世界で最も希少で強力な適性の能力者だった。その適性をまともに生かす機会さえ得られず刑場の露と消えてしまったが、適性判別当時は大きな期待を受けていた。そしてささやかではあるが、幼い時に明らかにその適性を活用した業績を残したりもした。
その魂を受け継いだ転生者であるパメラなら、ティステの適性をそのまま受け継いだ可能性がある。パメラが心配していたのはそれだ。前世の記憶を取り戻した後に調べた事実だが、ティステが悪女という濡れ衣を着せられて処刑された後、その適性に対する評価すら微妙になったから。
水晶球の反応を見守っていた大司教の表情が一変した。驚愕、当惑、そして期待感と少しだけの心配。その表情を見たパメラは、懸念が的中したことに気づいた。
「パメラ・ハリス・アルトヴィア第一皇女殿下の適性が判別されました」
死んだように静かになった神殿に大司教の声が響いた。
その内容は――それこそパメラが心配し、ある程度予感した事実。
「殿下の適性は『万能』です」
『万能』。その名の通り、すべてを網羅する万能の力である。女神パルマが直接付与するたった一つの特別な適性を除いて、残りのすべての適性の力を自由自在に扱うことができるという能力。
そして……悪女ティステ・ハリス・テリベルの適性でもあった。
「『万能』とは……! 死ぬ前に二番目の『万能』の適性者を見ることになるとは。一生の光栄です」
「でも『万能』は
「適性はただの才能です。同じ適性だからといって人性まで同じだという保障はないですね」
「でも悪女ティステは適性のせいでもっと傲慢になったという話も……」
……つまらない。そう思って、パメラは小さく鼻を鳴らした。
悪女も何も、全部濡れ衣にすぎない。しかし、ティステのイメージはすでにそのように定着しており、真実を知らない彼らの盲目的な非難を責めるつもりはなかった。
しかし『万能』はちょうどいい力だ。
〝ティステ〟の仇敵はこの国の皇帝と皇后。政治的にも物理的にも、彼らを打倒するためには力が必要だ。強力な適性は有用な力になってくれるだろう。
……いつの間にか親を打倒することをだんだん受け入れていくことを自覚しながらも、パメラは考えを止めなかった。
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