微かな綻び
──────て。──────から。
夢を見ていた。覚えのない場所で知らない人に何かを言われている夢。
でも、やけにその声が心地よくて……
(あれ?)
気がついたら朝だった。
何を言われてたかどころか、夢の詳細すら曖昧になっている。夢あるあるだね。
ただ、その夢が何か大切なことに繋がってることだけを、私は何故か理解していた。
◇◇◇◇
「おはよ、霞」
「おはよー」
「おはよう、2人とも」
今日も2人と登校する。
幼なじみである2人とは、生まれた時からの付き合いだ。家も近いんだよ。
因みに私は、顔のパーツは結構いいと思うが、茶色の髪に黒の瞳という、地味ーな配色のせいであまり美少女には見えない。ちぇ。
「どうした?」
密かに2人のことを妬んでいると、玖音が声をかけてきた。
「いや、2人ともかっこいいし可愛いなぁって思って」
「どうしたのよ急に……」
杏姫に怪訝な顔をされるが気にしない気にしない。
「なんでもなーい。さ、いこいこ!」
「あ、ちょっと待ってよ!」
「走ると危ないよ!」
走って行くと2人が追いかけてくる。走ると危ないって子供じゃないんだから……。
あれ?というか私、2人と登校しなかった時ってあったっけ?
ふと、疑問が湧き出てくる。
そういえば1回もなかったような……いくら幼なじみだからってそんなことあるかな?
そういう、ものかな?
うん、きっとそうだよね。幼なじみだもん。
私は、拭えない違和感を感じながらも、学校へ向かうのだった。
◇◇◇◇
(うん。順調だ)
そこは箱庭の地下。少年は今日も、何かを行っている。誰も知らない計画を、実行するために。
(だかやっぱり幼い頃からのやつだと根強いな……少し、手伝ってやるか)
この瞬間、ひっそりと行われていた「それ」が、初めて明確な形を持って、動き出した。
◇◇◇◇
その日の夜。
私は、また夢を見ていた。
────逃げて。─────なら、必ず──────から。
昨日よりハッキリしているその声の持ち主が誰だか、私は知っている。
そこに誰がいたかも。
どうしてそこにいるかも。
この後……何が起こるかも。
でも、私はそんなこと知らない。知らないけど、私は知っている。
…………あれ?
私は知っていて、それは私が知らないからで、知っているのはどうしてなのかも知っていて、知らないけど知っているのに知らないから知っていて知らない知らない知っている知っている知っている知っている知っている知っている────────────
「……っあ!?」
また、気がついたら朝だった。
気分は最悪。
変な夢を見ていた。今朝よりもはっきりしていて、内容も覚えている。でも…………
この夢のことを深く考えてしまったら、今私が持っている大切な何かが失われてしまう気がして、
私はこれ以上、考えることが出来なくなった。
◇◇◇◇
箱庭の地下にて。
(成功、か?)
少年は悩んでいた。
今日自分の行ったことが成功と言えるかどうか。
(あの記憶は俺のものだ。渡した俺の知っているという自覚と自分の知らないという自覚が混ざっちまったか……。ま、あの記憶は
少年は今日も行動する。全ては愛しき──────のために。
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