第24話
野菜ダンジョンに入り、下層を目指しつつも通る各層で野菜モンスターたちと触れ合う。
一層の大根、二層のナスとほうれん草、三層のサツマイモとオクラ。
彼らとの幸せな時間を過ごし、緊張した面持ちで階段を降りて、初めて四層に降り立った。
四層もここまでと変わらない景色で、洞窟が続いていた。
従魔のテンちゃんたちと共に、中を歩いて進む。歩く速度はみんなに歩幅を合わせているので少しゆっくりだ。
くねくねした道を進んで、間もなく広間に着くと思った時、奥から聞きなれないガシャンガシャンという金属の音が聞こえてきた。
ここには僕と千聖ちゃんしか入れない。もし千聖ちゃんが入っているのなら、他の野菜モンスターたちが教えてくれたはずだ。となると、奥で待っているのは紛れもなく野菜モンスターだ。
少し緊張しながら広間に入ると――――そこにじっと佇んだ二体の野菜モンスターが僕を見つめていた。
左側は大きな金属製の盾を持ち、大きさは1メートルになるかという大きさのジャガイモ。
右側に立つのは長い金属製の槍を片手で持った1メートルを超える長身のきゅうりだ。
ただ、今までの野菜モンスターとは違い、明らかにこちらに殺気のようなものを放っている。
さらによくよく見ると後方には彼らより少し小さいが、白い帽子と白い杖を持っているピーマンと、黒い帽子と黒い杖を持っているしし唐が見えた。
彼らの前に僕達が立つと、じゃがいもが聞こえない声で何かを呟いた。
【ご主人様。彼らからここは自分達に勝てないと、野菜モンスターには会わせないということです】
「そうか……彼らはここの守護神のようなものだな?」
【はい】
「…………どうしても戦わないといけないのか? 僕は野菜を傷つけたくないし、戦いたくない」
そう話すときゅうりが持っていた槍で地面を叩いて何かを話す。怒っているように見える。
【え、えっと……】
「テンちゃん。大丈夫だ。ちゃんと教えてくれ」
【はい………………「お前の軟弱さで僕達は一度死んだ。そんな脆弱な奴に僕達の子供を預けることはできない。もう一度信頼を勝ち取りなら、僕達を倒して力を示せ」……です……】
「そっか。ちゃんと言ってくれてありがとうな。テンちゃん」
彼らが怒っている理由はもっともだ。
それに――――
「分かった。でも一つだけちゃんと言っておくよ…………俺は情けない自分に誰よりも怒っている。だからこれからはちゃんと野菜を守ってみせる。だからこれから強くなるために頑張るから、挑戦を受けてくれ」
きゅうりがこちらに近づいてきて、手を差し伸べた。
僕と握手を交わすと、元の場所に戻り、僕に向かって槍を構える。他のメンバーもこちらに武器を構えた。
「テンちゃんたちはあまり無理しないように!」
【はいっ!】
そして、僕達と野菜モンスターたちの戦いが始まった。
◆
「ぐはっ!」
【ご主人様!】
「す、すまんな。テンちゃん」
テンちゃんたちも一緒になってくれて戦い、野菜モンスターたちに挑んでいるが、全く歯が立たない。
きゅうりが槍で地面を叩いて何かを話した。
【ご主人様。きゅうりさんから、今日は帰って冷静に考え直してまた明日くるようにとのことです】
「そうか……わかった。またチャンスをくれてありがとう。また明日くるよ」
そう言い残して、四層を後にして家に戻って行った。
まず、現状持っている野菜を全部使って料理をこなす。
野菜料理で祝福を受けられて強くなれる。それなら明日の戦いに備えてできる限り全力で挑むために全ての野菜を使う。
いま作れそうな料理を可能な限り作り、食べながらテンちゃんたちと作戦会議を行った。
「まず、何をしてもじゃがいもの盾が凄いな」
【そうですね。ご主人様の攻撃を全部防いでましたから】
僕が何かしらの攻撃を行ったとしても、じゃがいもがいち早く大盾で僕の攻撃を防ぐ。
その直後にきゅうりの槍による攻撃と、しし唐による魔法攻撃もまた痛い。
しし唐が放つ魔法攻撃は致命傷にはならないにしても、強烈な痛みを感じるので、できればあれ以上当たりたくはない。
テンちゃんたちの攻撃も強かったけど、向こうは増えた傷をピーマンにより魔法ですぐに傷を治していた。
とてもバランスのよいパーティーで、防御、攻撃、迎撃、回復と四体がちゃんと連携をとっている。
「じゃがいもを何とかしないとな……」
その時、サッちゃんが手を上げた。
【しゃま~! じゃがいも先輩は僕に任せてください!】
「サッちゃん?」
【僕の特技、土堀でじゃがいも先輩を動けなくします~!】
「そっか! それなら明日は僕がじゃがいもの引き留めるから、土堀をお願いな」
【はいな!】
それからテンちゃんたちの特技を色々聞いて、明日の戦いに備えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます