第2話 これからも一緒に




「おめでとうございます。3ヶ月ですよ。」


俺は二週間程前から調子が悪かった。隼人には隠していたけど、ずっと吐き気と倦怠感が続いて、遂に職場で倒れてしまった。


同僚が倒れた俺を医務室へと連れて行ってくれた。



医務室に着くと早退をすすめられ、午後から休みを取った俺は病院に行くと血液検査や尿検査など、一通り検査をして今に至る。


【妊娠。】という言葉に俺は戸惑った。


「お相手は誰か分かりますか?」



先生の視線が狼狽える俺に突き刺さる。


私は心当たりしか無かった。

もちろん相手は同居中の隼人だ。


しかし隼人は最近毎日の様に忙しくて家にあまり帰ってきていなかった。




「どうしよう。」

俺は困った。

隼人の社長としての活動も順調に進んできている。




こんな所で隼人の人生の邪魔をしたくはなかった。




家に帰ると俺はベッドの隅で泣いてしまった。

最近買ったばかりの大きいダブルベッドが俺の心を締め付ける


「もし、要らないと言われてしまったらどうしよう、」

不安で、不安で、たまらなかった。



思い切って隼人に電話をすることにした。


しかし


「……ただいま電話に出ることができません。」

無機質な機械音声が俺の心をまた締め付ける。



コールしてもその携帯は無機質な機械音声を永遠と流すだけで

想いを馳せた愛おしい【恋人】の声は聞こえなかった




「このこと知ったら隼人は、俺の前から居なくなっちゃうのかな……」

視界が涙で歪む。




初めて出会った時から俺は隼人が好きだった。


だから同性同士の結婚が認められ、


隼人に想いを伝え付き合えた日はとても嬉しかった。


これからも彼との関係を続けていたい。

そしていつかは…………


そう思っていた。




しかし順番が狂ってしまった。普通は結婚してから子供なのに、結婚する前に子供ができてしまった。

隼人にとっては最大の不祥事だ。もし他の人にバレたら……


そう思っているうちに涙が溢れた。



「ごめん……隼人。。」


ただひたすらに辛かった。もう彼の隣に居られなくなる。そんな気がしていた。






すると、

「何泣いてるの、陸?」



ずっと、求めていた声が聞こえた。


ああ、俺はついに幻聴まで聞こえてしまったのか。


すると、「おいどうした!大丈夫か?」




ずっと会いたかった隼人がいた。



「どうして…………」

いつもなら仕事中なのに…


すると隼人は

「陸が倒れたって陸の同僚からに聞いて、めちゃくちゃ心配だったんだよ?……大丈夫か?」




隼人の暖かくて、綺麗な手が俺の頭を撫でてくれる。何度も感じた隼人の温もりだった。




「隼人…あのね……ご、ごめんな、さ…い……………………、、」




俺は今日倒れて病院に行ったら、妊娠していたこと、ずっと体調不良を隠していたこと、そして、子供をどうしても産みたいこと。

今思っていることを全て話した。




「ごめんな、俺と陸との2人の問題なのに、ひとりで悩ませて。」




隼人の目に涙が滲んでいた。




そして隼人は俺の頬に流れた涙を拭ってくれると、耳元で囁いた。




「陸、子供のことなんだけどさ…、産んでよ。俺と陸の子供を。絶対可愛いと思うし、俺な、これからもずっと陸と一緒に居たい。陸とだったらどんな困難にも立ち向かえるって思えた。

初めて【この人と家族になりたい】そう思わしてくれたのは陸だけ。

こんな気持ちになったの初めてだよ……

だから俺とこれからも一緒にいてくれるよな?

もちろん。子供と一緒にね?」


隼人はポケットの中から


「最近…仕事の帰り遅くなってごめんな。実はさ、

ずっとこれを選んでたんだ。」


と言うと隼人は小さな小包を渡してくれた。

中には大きなダイヤの指輪が入っていた。


「おまえの指細すぎて店員さん驚いてたぞ。俺があまりにも悩んで仕事終わってから閉店時間ギリギリまで一週間通って指輪を決めてたら店員さんに呆れられたかも(笑)

どんなのがいいですか~?って言われて、奥さんにあった指輪の話をしてたら、いつのまにか陸の話ばっかりしてたんだ、俺。

【素敵な奥さんですね】と言われた時はなんかめちゃくちゃ嬉しかった。



だから陸、俺とこれから一緒に長い物語を歩んでいこうな。」


指輪には2つのリングが交差してひとつになったような模様が描かれていた。


指輪に刻まれた文字はもちろん  H&R 。


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