01-04話:【歴史】コンスタンティノープル最後の日(3人称)
時は西暦1453年、5月29日。
東ローマ帝国首都コンスタンティノープルは、オスマン帝国に完全に包囲されていた。オスマン帝国メフメト2世は、コンスタンティノープルの城壁の外側に建てた「ローマの城」を橋頭保となし、攻城戦の足がかりとしていたのだ。
東ローマ帝国軍7千に対し、オスマン帝国軍はスルタン直属の最精鋭イェニチェリ2万人を含めた総数10万人、それに加え大艦隊での海上封鎖。この状況下では援軍を期待する余地は一切ない。残念なことではあるが、東ローマ帝国に勝機が残っているとはお世辞にも言えない状況であった。
しかし、東ローマ帝国軍は善戦した。コンスタンティノープルの城壁を背に13倍以上の敵に善戦して見せたのだ。しかし
そして、そのきっかけは、急に訪れる。傭兵隊長ジョヴァンニ隊長が負傷し、指揮系統に大きな混乱が生じたのだ。そして、これを機に戦況は善戦から苦戦に一気に転がり落ちる。そう、古来、指揮官を失った軍隊ほど、脆く崩れやすいものはないのだ。
ついに、最後の防衛線であるブラケルナエ地区のケルコポルタ門の通用口をオスマン帝国軍が突破すると、状況は苦戦から壊滅へと変化する。そう、ここに至っては、東ローマ帝国の敗戦は必定といわざる得ない状況に追い詰められたのだ。
そう約1400年続いたローマ帝国が、約1000年以上続いた東ローマ帝国が終わる。ミレニアム帝国が、世界の地図から消える。その存在は歴史上、もしくは、過去形でのみ語られれることが許される日が、もう目の前まで来ているのだ。
しかし、そんな運命に最後まで抵抗する男もいる。東ローマ帝国の皇帝コンスタンティノス11世パレオロゴス。おそらくローマ帝国最後の皇帝となるであろう男だ。そう、この男は、最後まで自国の勝利を信じて疑うことはなかったのだ。
ハギアソフィアのバルコニーに出た皇帝パレオロゴスは、コンスタンティノープルの城壁に翻る深紅の「新月旗」を見て激高し、左胸の上に身につけていた帝国の国章、双頭の鷲の紋章をちぎり捨て、皇帝のきらびやかな衣装を脱ぎ捨てて、こう叫んだ。
「誰か朕の首を刎ねるキリスト教徒はいないのか!」
皇帝の居城、ハギア・ソフィアは、この一喝で一瞬で沈黙に包まれる。
「よし、そのようなものは誰もいないな。これから、この帝国を守る最後の奇跡を、最後の勝利を邪教徒から奪い取りにいく。気概のあるものは余に続け!あの邪教徒どもを聖都コンスタンティノープルから駆逐してやるぞ!」
皇帝パレオロゴスは
その後、皇帝パレオロゴスをみたものはいなかった。
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