01-05話:【ホラー】時を売ります(1人称)

 僕はとある・・・店の前に来ていた。その店の名は「時を売る店」、その名の通り、自分の持っている時間を売ってお金に変えることができるお店だ。明日は綾ちゃんとの初デート、嫌われないように、めいっぱいのエスコートをしないとね。


「ひっひひ、いらっしゃい。今日はどれだけの時間をお売りになりますか、1年20万円で買い取らせていただきますじゃ。お名前と売りたい時間を教えてくださいまし。ひっひひ」


「僕の名前は、良和よしかず、とりあえず100万円が欲しいから5年分で」


 僕は、不気味な老婆にそう希望を伝えると、老婆は僕に目を閉じるように言った。僕は言われるがままに目を閉じ、老婆の返事をじっと待った。


「ひっひひ、確かに5年分の時間をいただきました。これはその対価の100万円ですじゃ、ひっひひ」


 老婆はそういって俺に100万円を手渡した。俺は自分の体を隅々まで確認したが何も変わったところはない。もしかして、これはボロ儲けじゃないのか?そう考えた俺は味をしめ、あっという間にこの「時を売る店」の常連になった。


 綾さんと過ごす時間はとても有意義であった。綾さんは、渋い男が好きということもあって、どんどん渋くなる私との関係は、日を重ねるごとに親密になっていった。


 私はこの店で売った時間を使って、綾さんと様々な時間を共有した。海外旅行にもいった、車も買った、まさにやりたい放題。この世の春を私は満喫していた。


 そして、私はいよいよ綾ちゃんにプロポーズをすることを決意した。


「ひっひひ、、いらっしゃい。今日はどれだけの時間をお売りになりますか、1年20万円で買い取らせていただきますよ。お名前と売りたい時間を教えてください。ひっひひ」


「私の名前は、良和よしかず、とりあえず婚約指輪は奮発したいから、400万円が欲しいから20年分で」


 そして、いよいよプロポーズ当日、わしは奮発した婚約指輪を持って、すかいつりぃ・・・・・・の前で待ち合わせしたのじゃ。


「綾しゃん。わしと結婚してくだされ、ほれ、婚約指輪じゃ」


 わし渾身こんしんのプロポーズに綾しゃんは、不思議な顔を浮かべていた。


「ごめんなさい、私、お爺さんとどこかでお会いしましたか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る