青春、逃避

 三輪トラックに乗り込んで、少年少女が舗道を走る。

 黙々とハンドルを握る少年。

 助手席にスマホを見ながら道案内する少女。

 荷台には少年2人と少女1人。

 他は大きなリュックとバッテリー。

 広大な湖沿いに走る三輪トラックは、山に落ちていく夕日を背景にただ走る。


「もうすぐ夜だねー泊まるとこあんの?」

「あるだろ、モーテルのひとつぐらい」

「野宿は誰か起きてないといけないしな」



「…………」

「もう少ししたら、モーテルが見えてくるはずです」


 案内役の少女に頷いて返事をする。

 ただただ広い景色を真っ直ぐ進むと、建物が見えてきた。

 道沿いにあるモーテルの看板には値段が書かれている。


「派手に使うわけにはいきませんからね」

「…………」


 駐車場に止めて、荷台にいた少年少女はやれやれ、と降りる。


「1泊、はい、5人で。1室で大丈夫です」


 受付を済ませた案内役は寡黙な少年達と一緒にリュックとバッテリーを運ぶ。

 三輪トラックを施錠し、狭い部屋に5人が集まる。


「ベッドひとつだけかぁ」

「狭いね、2人はベッドで俺らソファと床で寝よう」


 案内役は首を振る。


「私は床で構いません」

「…………」


 寡黙な少年と扉近くに並んで座り込んだ。


「じゃあ3人で寝る?」

「別にどっちでもいいよ、アタシ」

「俺も」


 少年はリュックからブロック菓子を取りだす。

 みんなに投げ配る。

 少女は備え付けの小型テレビをつけた。

 報道番組の途中、アナウンサーが淡々と深刻な表情で読み上げる。


『殺人と誘拐が同時に発生した2件の一家殺人事件、未だ犯人の行方は分からず、目撃証言もないまま捜査が難航している模様です。被害者は共に夫婦で、彼らの子供が忽然と姿を消し、行方不明となっています』


 全員が沈黙する。


 寡黙な少年は、重たい唇をニヤリ、と壁に向かって微笑んだ――。

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