週末異世界

「ちゃんと勉強したの?」

「お前は怠け者だ、姉と兄は優秀なのにな」

「はぁぁー……」

「考えてないからこうなるんだ」

「もっと頭使え」

「こんなこともできないの?」

「あなたは、どうしようか……誰か班に入れてあげて」


 ここにTNTがあればいいのにな。

 もしくは一瞬で灰にできる魔法。


 金曜日23時59分、ヘッドホンで現実音を塞ぐ。

 瞼を閉ざした――。


 暗闇を抜ければ異世界。

 様々な人種と亜種が行き交う街。

 空にはドラゴン。

 ギルドがあってランクがあって、レベルやステータスがあって、肉汁たっぷりのメシとアルコール。

 軽蔑の目も揶揄いもない、自分らしくいられる世界。


 日曜日23時59分。

 さよならを告げる。

 ヘッドホンを外す。

 瞼を開けた――。

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