異世界放浪記
獣耳の少女はオートバイ(ロータリー式)に跨り野原の道を走る。
後ろでテント一式と革を張った道具箱が時々跳ねた。
鍔付き帽子をかぶり、丸みのある頭頂部に生えた獣耳は穴から突き出ている。
改良したズボンから飛び出す短い尻尾。
ゴーグル越しに道の先を臨む。
ぼこぼこの穴があちこちにできている道を慎重に抜けた。
丸みのある獣耳をぴくりと動かす。
オートバイを止めて、左足でサイドスタンドを下ろす。
大きな石を円形に並べた中央には、突けば一瞬で崩れるような黒い棒が何度も何度も重ねられた形跡があった。
雨風を防げていたはずのボロボロの布と、支えていた途中で折れた太い棒。
オートバイから降りた少女は道具から分厚い本を取り出す。
ページを捲り、大陸の地図に点々と印がつけられた部分に目を通した。
焚火をしながら過ごす著者の自画像と日記。
自画像と景色を照らし合わせ、少女は確信を得て頷く。
丸みのある耳をぴくぴくと動かし、短い尻尾を横に揺らす。
指先で空気を弾かせると、破裂音が鳴る。
すると、灰に近い棒が見る見るうちに再生していき、燃える前に戻って行く。
次に人差し指と中指を棒に向け、小さく唱えた。
一瞬にして火花が散り点き、赤と橙の煌めく炎となる。
「あったかぁ……」
ホッと安心したように呟き、少女は焚火にまったり微笑んだ。
ふと、目に入った焚火の石。
いくつも文字が彫られている。
少女はすぐに「あぁ」と目を輝かせ、前に倣って文字を彫った……――。
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