第4話 始まりを告げる女神の鐘
ノアを真っ直ぐ見つめ、真剣に向き合うアリア。
「へぇ…理由、聞いてもいいか?」
「あれからいろいろ考えたんだけど…まぁなんて言うか、あたしが入って勇者が動いてくれるなら、お互いに目的の為になるな、と思って」
「あぁ、それでいいよ。急に『世界平和の為に!』とか言われたら、誘っといてなんだけど逆に断ると思うし。じゃあ、あいつにも話をしに行こう。家に待機してもらってるから」
席から立ち上がり、会計を行うノア。
「きゅ、急じゃないか?大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、今日の日程が決まった時に、あいつに家に居てくれって頼んである」
「それなら、いいけど…てか、さっきのあたしも払うよ。いくら?」
「いいよ、呼んだのこっちなんだから。気にしないでくれ」
「ありがと…今度はこっちが出すよ」
「また俺と飯食ってくれんの?嬉しいね〜」
ノアが茶化すようにアリアに発言を返す。
「ま、別にあたしは構わないけど…なんてね」
思わせぶりな発言の後、ニヤリと笑うアリア。これにはノアも一本取られたようだ。
「ちょ…そういうこと言うな!紛らわし!」
すっかり顔を赤くするノア。アリアはここぞとばかりに追撃をかける。
「あははっ!お前かわいいな!」
「何だよ、ったく…子供扱いすんな」
「ふふっ…ごめんて」
◇◇◇
「ノア…その人を連れてきて、何のつもりだ?」
「決まってんだろ…言ったぞ、話をしようって」
レオンとノアはお互いに向かい合って座り、勇者パーティーの今後に対して、話し合いが始まろうとしていた。
「悪い、アリア。隣に座っててくれ」
「う、うん…」
「…で、何を話すって?」
「そのことだけどよ、まず…俺達って何だ?」
「それは…勿論、勇者パーティーだ」
一瞬返答に困るレオンだったが、ノアの目を見て答える。
「だよな。で、俺達は今、何をしてる?」
「…魔大陸へ向かう為に訓練中なだけだ。何もしてない訳じゃない」
「いつまで?」
「…それは」
「訓練はさ、いつまでも出来るもんだよな。ずっと理由として使える。でもよ、そろそろそんなこと言ってる時間は終わりじゃないのか?違うか、レオン」
「分かってる…だけど、もうどうすればいいか分からないんだよ!」
「そうやって言い訳か。分かってただろ、お前が勇者として活動し始めてからいずれ来ることだって。もうそれがすぐそこまで来てる。なのに俺達はあの日から何も進んでない。進む時が来たんだ、レオン。もう…旅に出よう。使命を果たしに。国王もそれを望んでる筈だ」
「ノア…」
「ということで、彼女、アリアをパーティーに入ってもらおうと思うんだが、いいか?」
「…良いよ。もう、話はつけてるんだろ?」
どこか諦めたような表情でアリアの加入を認めるレオン。経緯ばどうあれ、自分の加入が認められたことに安堵するアリア。
「話が早いな、レオン。そのとおりだ。だからさ、近々国王に面会に行こうぜ」
「あぁ…その時はアリアさんも着いてきてもらうけど、大丈夫?」
「え、あ、あぁ。あたしは構わないけど…」
「おーし、話は決まりだ!大佐に報告してくるわ。メルヴィルさんと連絡取らねぇとだからさ。二人は何か話しといて」
「お、おい!勝手だな、ったく…」
そう言うレオンの顔はどこか清々しさが感じられた。
◇◇◇
ノアがあっという間に飛び出して行った後、二人には何とも言えない空気が流れていた。
空気を変えるべく、レオンが話し掛ける。
「…アリアさんは、槍が得意だって手合わせの時に言ってたよね。自己流?それとも先生がいた?」
「家が代々槍を扱ってきた家系でさ。その影響で。これは親から教えてもらったんだ」
「へぇ…良いな。俺達は先生は居たけど親は幼い時に亡くなってるからさ…そう云う一緒に修業だとかあんまり無いんだよね。何なら、一緒に過ごした記憶もあんまり無い」
「…15年前の事件のせいで?」
「うん。だから、普通に家族が居るって羨ましいんだよな。ノアは兄弟同然だし、他の皆は今は居ないし…」
「悪い…」
「気にしないいでくれ。ノアに言われたことは前々から気付いてはいたんだ。でも、行動に移すのが怖かっただけ。あいつが言ってくれて良かった。前にアリアさんが疑問をちゃんとぶつけてくれたのも良いきっかけだったんだ」
「ありがとう…てか、さんなんて付けなくていいよ。勇者だろ?歳なんて変わらないし。あたしは今年17。そっちは?」
「俺もだ。じゃあ同い年だな。宜しく、アリア」
レオンが右手を差し出す。
「こちらこそ宜しく。レオン」
アリアもそれに応え、しっかりと握手をする。
◇◇◇
「…そうか。遂にレオンが決心したか。よし、分かった。早急にメルヴィル殿に連絡を入れよう。任せておけ」
「お願いします、大佐。では、失礼します」
「あぁ、それと当日は私もその場に居る、とレオンに伝えておいてくれ」
「分かりました。あ、それと新しい仲間入ったんで」
そう言って颯爽とその場を立ち去るノア。
「え?ど、どういうことだ?聞いてないぞ。説明しろ、ノアー!」
アルフレッドの疑問はノアの耳には届かなかった。
「まさかこうも急にパーティーメンバーが増えるとは…意外だったな」
「まぁ、現状活動出来るのは二人だけですからね…理に適っているのでは?」
「それはそうなんだが…レオンのやつ、新しく入れるつもりはないと前に言ってたからな…どういう心境の変化だ?」
「さぁ…そればかりは聞いてみないと分かりませんね」
「…それもそうだな。会った時にでも聞けばいいだろう」
◇◇◇
「ただいま〜。大佐に言ってきたぜーって…あれ?」
「槍に炎を纏わせられるのか!あの時に見たかったな〜」
「あの時は槍が借りもんだったからさ。やめとこうと思って」
「随分仲良くなってんな…」
話に夢中になり、帰って来たノアに未だ気付いていない二人。
「今度は魔法も見せてくれ。俺もまだあるからさ。他には何かある?」
「一応体術も―って、おぉ、ノア。おかえり」
「おかえり。早かったな。大佐居なかったのか?」
「いや、居たよ。俺が話すことだけ話して帰ってきた」
「どうだった?」
「早めに連絡してくれるって。それと、その時に大佐も立ち会うってさ」
「分かった。じゃあ後は連絡待ちか…」
「何して待つ…?」
レオンとノアの二人が面会までの時間をどうするか考えていた時。
「あのさ…皆で依頼受けてみないか?連携とか、いろいろ気になるし」
「そうだな…パーティーメンバー追加だし、久しぶりに行くのも良いかもしれない。どうだ?ノア」
「良いと思うぜ。なら、連絡が来るまでは連携の調整とかに充てるか」
「よっしゃ!明日、早速行こ―うわっ!!」
アリアがノアの言葉に反応し、椅子から立ち上がろうとした時、バランスを崩し、辺りのものを倒してしまう。
「いてて…ごめん、いろいろ倒しちまった」
「気にすんな。そこにあるのはもう使わないやつだから。よし、新しい勇者パーティーとして、ここから始めようぜ!」
「何かいつの間にか始まったな…」
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