第12.5話 SIDEエドワード&SIDEホッグス
《号外 ヴァーミリオンは生きていた!父の後を継ぎ、新たな勇者へ!》
「遂にレオンが勇者になったか…」
俺は街で配られていた号外記事を読みながら、そう呟いた。
あの事件が起きる半年前、つまりレオンが生まれて半年の頃に一度見たきりで、親子共々あの襲撃事件で死んだと思われていたレオン。それがどうやってか生き伸びていて、あれから十五年も経ってから、まさか命を救われるとはな…人生とは分からないものだ。
生きていることに驚いているのもあったが、エリオットによく似ていた。俺はあいつの母は知らないが、エリオットとは目の色が違う。恐らく母親からの遺伝だろう。
「そう言えばあの時に聞き忘れたな…サ―」
「はい、ここに」
エドワードが名前を呼ぶより速くやって来る。彼もそれに全く動じず話を続ける。
「お前、ルーファスの腕の紋章覚えてるか?」
「えぇ、未だにしっかりと。騎士学校在学中には十字の下線は三本線でしたが、初成人後は二本線、卒業後に一本線、『継承』後には十字も無くなっていた、と記憶しております」
「だろう?これはうろ覚えだが…確かあいつから、制限を外すには『鍵』が必要だと聞いたことがある。ルーファスの場合は確か血縁者だった。エリオットには、ルーファスが生きていたから、そもそも紋章は無かった筈だ。だが、レオンには紋章があるにも関わらず、血縁者は居ない…仲間のケインはヴァーミリオンの血は引いていないんだろ?俺達が心配することじゃねぇが…『継承』せずに、あいつは勇者として、活動出来るのか?」
「陛下に認められたということは、今は活動できるだけの力は有るということでしょう。ですが、これから先、今のままでは太刀打ち出来ない相手が現れた場合…難しいかもしれません」
「レオンのやつも今のところ来そうにないしな…直接行くか。いつ空いてる?」
「今週ですと…4日後ですな」
「よし、4日後、王都に行く。それまでにさっさと仕事を終わらせるぞ」
「はい。かしこまりました」
俺はレオンに『継承』について知らせるため、王都へ向かうことにした。
◇◇◇
今日、勇者の任命式が行われた。この目でもう一度見るとは思わなかった。
先代やエリオットは自分たちの代で戦争を終わらせることを目標にしていたから。
「…団長、勇者の彼、エリオットさんにそっくりですね。俺最初に見たとき本当にびっくりしましたよ」
「クラウド…本人の前で言うんじゃないぞ。レオンは父親を重ねられるのをかなり気にしている。言うだけなら構わんかもしれんが、エリオットと同一視するな。俺も反省している」
「あぁ…団長と魔法師団長が勇者様に何かやったって聞きましたけど、そういうことですか?」
「あぁ、そうだ…そのせいで正直、俺とあいつはレオンからの印象が良くない。特にあいつの方がな…」
「…魔法師団長って誤解されやすいタイプですし、本人もそれを自覚しながら直さないから、更に誤解させるんですよね…」
俺の話に同意するクラウド。こいつも俺の側付きとして魔法師団長に何度も会っているので、俺の話をよく理解出来ていた。お互い、冒険者の頃から知ってるしな。
「お蔭で冒険者時代何度トラブルが起きたことか…」
「二人とも、私語は慎みなさい。陛下の御前ですよ」
その声に驚き、横を見ると、滅多に公の場に出ないことで有名なラドルファス様が居た。
「ラドルファス様…何故ここに?」
「居てはいけませんか?新たな勇者誕生の場に」
「いえ!とんでもないです。そんなことはありません」
「なら、良いでしょう。黙って彼の勇姿を見守ろうではないですか」
「はい!」
レオンが陛下から儀式用の聖剣を受け取っている。これで正式に彼が勇者に任命されたということか。
それにしても、ラドルファス様に会ったのは数年ぶりだろうか。いや、もっと会ってないかもしれない。
だが、何故かこれからはそう珍しくも無い気がした。
◇◇◇
「どうです、彼。見込みは?」
式が終わった後、ラドルファス様に話し掛けられた。
「クラウド、先に戻っていいぞ」
「はい、分かりました」
俺は素直な印象を伝えた。
「そうですね…悪くないと思います。発見の経緯についても聞いていますし、申し分ないかと」
「なるほど…では、レオン達勇者パーティーに稽古をつけてくれと頼んだ場合、引き受けてくれますか?」
「因みに…断ったらどうなります?」
俺は恐らく意味の無いであろう質問をした。
まぁ、俺としても別に断るつもりは無いのだが。
「国王から命令が来るかと思いますよ」
「そうですよね…分かりました。この場でお引き受けします」
「それは良かった。では、私はこれで。魔法師団長にも伝えねばなりませんので」
「あ、あいつにもですか?」
「当然でしょう。魔法も鍛えねば、バランスが悪いでしょうに」
あいつが引き受けるとは思えんのだが…
まぁ、俺が言っても仕方あるまい。言わんでおこう。
その後噂によると、やはりあいつは断り、後に王命が下ったとのことだった。
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