第3話 束の間の休日
あの後、レオンとバーニィは翌日は休みにするということをそれぞれ伝え、レオンがオリビアと二人で出かけるということを二人に伝えると、シャルは察したようだが、ノアは分からなかったようなので、明確に自分達の関係を二人にも話し、大層驚かれていた。
『へぇ〜っ!おめでとう!別に隠すことじゃないのに〜』
『ったく、ほんとだよ…。水くせぇじゃんか』
『いや、なんか…恥ずかしかったというか…』
『照れんな!気持ちわりぃ!』
その後は、それぞれ予定を立て、レオンとオリビアの二人も明日の予定の確認をすると、各自就寝についた。
『じゃあ、明日俺は先に噴水の前に居るよ』
『分かった。なら、10時に待ちあわせね。ちゃんと間に合わせる』
『うん、じゃあ今日はおやすみ』
◇◇◇
翌朝、レオンは待ちあわせ時刻の2時間前に目が覚めた。
「…結構早く目が覚めたな。まぁ、二人で出掛けるのは久しぶりだし、そういうこともあるか」
レオンが階段を降りると、オリビアと会う。
「…後でね。楽しみにしてる」
「うん。俺もだ」
顔を洗い、寝間着から着替えた後、パンとサラダを軽く取ると、朝の鍛錬をするため、剣を持ち、庭へ出る。
「よし、先ずは素振り百回。ふっ…はっ。」
「なんだ、今日もやってんのか。今日は二人で出掛けるんだろ?」
今、起きてきたバーニィがレオンに声をかける。バーニィはまだ眠そうだ。
「あぁ、だから今日は早めに切り上げた後、風呂に入って30分前には出るよ」
「そうか、待ちあわせには遅れるなよ。俺も前に友達と待ち合わせして、ひどい目にあったことがあるからな。それと、俺らは今日は個別で街をぶらつくつもりだ。邪魔はしないから、自由にしてこいよ」
「あぁ、そっちも楽しんでな」
◇◇◇
その後、レオンは9時半頃に家を出ると、十分もしないうちに噴水の前に着いた。
まだオリビアは家から出た様子は無かったので、少しすればそのうちやってくるだろう。
「お待たせ」
「いや、全然待ってないよ」
「嘘。私より大分早めに出てた」
「二人で出かけるのは久しぶりだからな。待ち切れなかった」
「ふふ、ありがとう。先ずはどこ行く?」
「あぁ、最初に行きたいとこがあってさ…」
久しぶりに訪れた休日を二人は楽しんだ。
それは、レオンとオリビアの二人だけではなく、ノア達三人も同じだった。
「二人さー、今頃何してるんだろうね」
「さぁな…。今日は市場もやってるし、いろいろ周ったりしてるんじゃねぇの?」
シャルのつぶやきにノアが返す。
バーニィは今日の当番である食器洗いを行いながら、二人の会話を聞いていた。
「…ふーん。じゃあ、二人が何やってるのか見に行きますかねぇ」
「シャル!?邪魔しないって昨日話したろ?」
「勿論、邪魔はしないよ。邪魔は、ね」
「シャル…いつからこんな風になったんだ…」
シャルが悪い顔をする。
バーニィが妹の所業に呆れていた。
◇◇◇
飲み会の翌日、アルフレッド達が冒険者のリストを調べている最中…
「…頭が痛い。二日酔いだな…顔洗ってくる」
「…だから飲み過ぎには注意して下さいと、あれ程言ったのに…。ん?これは…もしかして…」
アルフレッドが席を外す中、レナードがリストを調べている最中、ある部分に注目する。
「ふう…さっぱりした。うん?どうした、レナ」
戻って来たアルフレッドが、レナードに声を掛ける。
「中佐、リストのこのページのこの記述を見てください」
「何か見つけたんですか?レナさん」
「フィンもこっちに来なさい。これを見て」
3人はリストのとある1箇所に注目する。
「…これは。2年前に冒険者登録しているな」
「えぇ…。それに現在16歳。年齢も合致してますね」
「登録名はレオンだけか…。だが、行ってみる価値はある。レナ、最短でいつ行ける?」
「えぇと…2日後からなら空いてますね。特務課なので」
「え?二人で直撃するんですか?」
フィンはアルフレッドが北へ向かう提案をすることに驚く。が、それにレナードが何の疑問も持たず予定の確認をすることにも驚いていた。
「勿論だ。今までもそうしてきた。つまり、明後日は課長と二人で仕事は頼んだぞ」
「えぇ〜。僕、課長暑苦しくて苦手なんですよ〜。僕も連れてって下さい!」
「断る。別に大して忙しい訳でもないんだから別に良いだろう。また食堂でも手伝ってきたらどうだ?」
「…鍋ひっくり返すのでやです。いいですよ。話しかける暇もないくらい働きますから。あんな大声で喋られたらたまったもんじゃ…」
その時、大きく特務課の部屋のドアが開く音がする。
「特務課の諸君!遅れてすまないな!久々に同期の奴らと話してたら、時間を過ぎていた!」
「…おはようございます。カイル課長」
「どうした?声が小さいぞ!フィン!」
彼はカイル·ディアス。特務課の課長であり、アルフレッドとレナードの二人を特務課に引き入れた人物だ。
190cmにも届くその身長と大柄な体格から、特務課の大熊とも呼ばれる。
「3人とも居るなら丁度いい。そろそろあいつが復帰できそうだ」
「先輩が帰ってくるんですか!良かった〜」
フィンがカイルの言葉に安堵を浮かべる。
が、会話をレナードが切り、先ほどの話題に戻す。
「カイル課長、それは分かりました。が、今は後にしましょう。候補者が出ました」
先ほどまでの態度とはうって変わり、カイルの目つきが変わる。
「…本当か?今回はどれくらいあると見る?」
カイルの真剣な眼差しに、レナードも慎重になる。
「…まだ現地での確認をしていないため、何とも言えませんが今回はまだ可能性はあるかと」
「…そうか。アルフレッド、レナード、二人とも頼んだぞ」
「「はい」」
◇◇◇
そろそろ日も暮れてくる5時過ぎ頃。二人は今日一日を楽しんだ後、帰路についていた。
「今日は楽しかったね」
「あぁ、久しぶりに二人で過ごせて俺も嬉しかったよ」
だがそこに忍び寄る影が3つ。
「くっ…。やっと見つけたと思ったら既にイベントは終了してたとは!!」
「…いや、お前らが買い食いとかに夢中になってた上に自力で探すって言って魔力感知も使わなかったからだろ」
「正論は要らねぇぜ、バーニィ!だが、ほんのすこしだけ、使えば良かったと後悔している…」
そう言って拳を握るノア。シャルも頷き、それに同意する。
「いや、甘いぞ、ノアくん!仲間の一人や二人、自力で探しだせなくて何が仲間だと言うのかね!」
「…はっ。確かにそうですね。俺が間違ってました。隊長」
「うむ、分かれば良いのだ」
「うん。急にお前らのそれ、何?」
そんなおバカトリオには気づく素振りもなく、二人は他愛もない話をしていた。
「三人とももう帰ってるかな」
「どうだろうな、シャルとかは買い食いして夕飯要らないとか言ってるんじゃないか?」
「ふふ、そうかもね。当たってそう」
「…!オリビア。門の向こう側。8時の方向」
急にレオンの雰囲気が変わる。何かを魔力感知で察知したようだ。
「うん、馬車が3台襲われてるね。…挟まれた。不味いかも」
「急ごう」
二人の気配が変わったことは、三人も気付いていた。
「何か…あったのかな?」
「俺らも行こう。二人に何かあったら困る」
「…慎重に行くぜ、バーニィ」
二人は門を抜けると馬車が襲われている場所へ向かう。
一定の距離を取りつつも、三人もその後を追う。
「あれだ!魔物に囲まれてる!身体強化で一気に行く!オリビアも後ろから頼む!-身体強化-」
「任せて!-身体強化-」
レオンが自身に身体強化を掛け、オリビアもそれに続く。
そこに…
「レオン、オリビア!俺らも参戦するぜ!」
「ノア!?何でここに?ていうか今俺らって…」
「レオン、細かいことはあとだよ!-魔闘術-開放!」
「シャル、いきなり開放して大丈夫かよ?」
「こうゆうのはさっさと終わらせるに限るよ!お兄ちゃん!」
「ま、それもそうか…。俺も、-
「このノア様に掛かって来いよ、ブタ野郎ども。-挑発-!」
ノアが不敵な笑みを浮かべ、バスタードソードを引き抜くと挑発を発動させる。
◇◇◇
「急げ!門までは直ぐそこだ!このままなら何とか間に合うはずだ!」
「馬鹿者!これ以上のスピードは出すんじゃない!止まれなくなるぞ!それに誰が乗っているのか忘れたのか!」
「落とす訳にも行かないだろ!っ…!前方、オークが三体出たぞぉぉぉ!」
馬車のスピードを一気に落とさせる。だが、それは間に合わず、オークの振り下ろす棍棒に馬が殴られる。
強制的に馬車は止められた。後続の馬車も同じく止められる。
「お前ら、戦闘だ!馬車から下りろ!後方にゴブリンが十以上!オークが前後含め四!更に後ろにも居る!やるぞ、お前ら!執事さんよ、あんたも参加するんだ!レイは主人を守れ!」
「はい!」
だが、予想以上の敵の多さに困惑する一同。なし崩し的に戦闘が始まるが、こちらが劣勢だった。
がその時だった。
「助太刀に入ります!オークはこっちに任せてください!」
突如現れた5人がオークの視線を引き付けた。
「これは…-挑発-!?良いスキルを持つ者が居るな…。それに使いこなせている…」
執事が挑発のスキルに気が付く。
「喰らえ、-烈火斬-!」
先頭に居たレオンがスキルを発すると、剣の尖端から炎が拡がり、そのまま襲いかかるオークを縦に真っ二つに切り裂く。切り裂いた先からオークの身体が燃え、朽ちてゆく。
「ご無事ですか!?」
他の三人も残りのオークをあっさりと倒し、残った魔物の討伐を行う。一気に魔物は討伐され、囲まれていたはずの者たちはその一瞬の攻撃に開いた口が塞がらなかった。
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