第1話 彼等の日常
レオン·ヴァーミリオン、現在16歳。
彼は幼馴染みの4人とパーティーを結成し、冒険者稼業に勤しんでいた。
「炎魔法-
「任せろ!-旋風斬り-」
2mはあろう猪の魔物を流れるような剣技で斬り裂くと、他の仲間達が集まってくる。
「さすがレオン!もし仕留め損なったら、あたしがこの拳で仕留めるところだったよ!」
そう言って拳を合わせるシャル。
「レオンなら心配することないって分かってたけどな。シャルの拳で仕留めちまったら原形が残るか不安だし」
「もう、お兄ちゃん!あたしだって技使うかどうかぐらい判断できますー!」
「さぁ、どうだかな…」
「ほら、二人とも喧嘩しないの。レオン、ノア、ありがとね。さぁ、この魔物を処理するよ」
血抜きなどの処理を終えた後、討伐証明の為の牙を折る。解体はせず、そのまま魔法の
「これで3体目。後はギルドに牙を提出すれば依頼は終了だ!」
「お疲れ、レオン。…ふー、やっと終わったよー。さっさと出しに行って、夕飯にしよ!」
シャルは体を伸ばしながらそう言うと、早くも夕食のことを考えている。が、まだ辺りは明るく、夕方には少し早いところだろう。
「まだ早いんじゃないか?どうせ待つんだろうし、店でも回ろうぜ」
「いいね、それもあり!さすがノア!」
◇◇◇
活動拠点である北部で最も発展している街、レイヴォールに戻ってきたレオン達。
冒険者ギルドに入ると、依頼完了の報告をする。
「はい、
「2体分お願いします。1体は使うので大丈夫です」
「かしこまりました。では、査定を行いますので、奥の部屋で素材の提出をお願いします。1時間後に受付へこの紙を提出して下さい。代金をお支払いします」
「分かりました。では、後ほど」
レオン達はギルドを出ると商店街へ向かう。
「ふー。なぁ、レオン。何か武具屋にでも行かねぇか?新作とか出てるかもしれねぇしさ」
「良いな。じゃあ親方のとこにでも行くか」
「それがさ、通りの方に新しい店が出来たんだと。そこ行ってみねぇか?」
「そこならやめとけ。見た目重視で確かにかっこいいがあまり耐久性無いぞ」
新しい武具屋について話している二人の会話に、バーニィが参加する。
「あら、バーニィ随分知ってるのね」
「お兄ちゃんね、そこできた時に速攻で買いに行って、試しに使った時に壊してるんだよ」
「おい、シャル!ばらすなよ!」
妹の思わぬ裏切りに呆気に取られるバーニィ。
「なーんだ。バーニィが店破壊してたのか。なら、やめとくわ」
「おい!そこまでやってねぇよ!」
「ははは…。でもバーニィがそう言うならやめとくかな。試し斬りで店を壊したくはないし」
「いや、だからやってねぇって!」
ノアの発言に合わせるレオン。
レオンもふざけていることを感じ取り、思わず突っ込むバーニィ。
◇◇◇
その後、規定の時間を迎えたのちに代金を受け取り、彼らは行きつけの店に向かい、夕食を取る。
「今日はついてたな…。ギルドに買い取ってもらった巨大猪の一体が雌だったなんてよ!」
「普段は子育てで出てこないらしいわね。それだけに雌の肉は高く売れるもの」
「あいつらどっちも牙でっかいもんな…。ラッキーだったぜ、ほんとに」
「で、今日のご飯は珍しくこんなに豪華なんだね!」
シャルが目を輝かせて言う。もう待ち切れないようだ。そこにレオンが補足を入れる。
「あぁ、でもまだ結構残ってる。何しろ巨大猪の雌は千体につき一体程度しか市場に出ないらしいからな」
「へー。じゃああたし達ほんとについてたんだ」
「だからって毎回こんな贅沢ができると思っちゃ駄目よ。滅多にないことなんだからね」
「分かってるって!ね、早く食べようよ!」
「うん、そうね。食べましょうか」
彼らは夕食を進め、夜は更ける。周りの程よい雰囲気も、彼らの気分を向上させていく。
◇◇◇
夕食を取った後、彼ら5人は帰り道を歩く。
彼らの足取りはいつもよりゆっくりだ。それもそのはず。ギルドの近くいつもの店で今日はいつもは頼まないような料理も5人は食べたのだ。
「あー、美味しかった!今日は猪様に感謝だねぇ」
「そうだな。じゃあ今日はもう宿に戻ろうか?バーニィ。また明日も早いし」
「…そうするか。明日は
「さっき準備したと思うけど、道具の用意は大丈夫?装備もチェックしてある?」
「あったりまえよ!俺には心配事なんてねぇんだから」
そう言ってどんと胸を叩くノア。
「…そう言って2回目の依頼の時に早々に剣を宿に置いていったのは誰だったかしら?」
「いや、それは、その…いろいろ有ったし…。てか、もうそれ2年は前だぞ!もういいじゃねぇか!…うん?何だ、この匂い…」
「まぁまぁ。あれから装備は忘れたことないんだし、オリビアも程々にしてやりなよ。ノアもそうやっているとまた忘れるかもしれないだろ、な?あ、あれ、消えた…」
「…そっか。もう2年も前なんだね…」
「シャル…」
「…無理するなよ?」
オリビアとバーニィがシャルに声をかける。二人ともシャルを心配しているようだ。
「ううん、大丈夫だよ。でも、やっぱりなぁって思うだけ…」
「…俺達にできることはあれ以上なかった。仕方ないことだったんだ」
4人の間に沈黙が流れる。その空気を破壊する男が1人。
紙袋を抱えたノアが小走りで合流してくる。
「おーい、何か暗いぞ?お前ら!な、シャルもこれ食ってみろよ!この串の肉、うっまいぞぉ!」
「ノア…」
「何だよ、レオンも食いたいのか?なら、ほれこいつ食っていいぞ」
「ん?あ、ありがとう」
「…よくまだ食べれるわね、ノアは。ずっと黙ってどうしたの?シャル」
「…おいしい。オリビアもちょっと食べなよ!これ、すっごい美味しいよノア!どこに売ってたの!?」
「お前らが話してる時に、何か良い匂いがするからつられてつい、買ってきちまった」
「おい、ノア…」
「な、何だよ。バーニィ」
バーニィに後ろから肩を掴まれ、声をかけられたことで、思わず少しびっくりするノア。
「…俺にも一本くれ」
「…わ、私も少し…。シャルに一口もらったけど、美味しかった」
「なら、少し戻るだけだから皆で買いに行こうぜ!」
「よーし、もう今日は前祝いで食べちゃうぞー!」
「お前ら、待てって!はえーよ!それに食い過ぎだろー!」
シャルを連れ、戻るノア。それを追いかけるバーニィ。
後ろから見ている二人。
「…明日は頑張ろう、オリビア」
「えぇ、今日は結構食べちゃったから。その分動かさなきゃね」
「…3人とも速いな。俺らも追いつこうか」
「うん、そうね」
駆け足で3人の元へ向かうレオンとオリビア。
今夜は時折吹く風が心地良かった。綺麗な星空が5人を優しく迎えていた。
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