第4話・星の子供達。3

(´・ω・`)…。(主人公が出てこない。)




受験生を乗せた馬車は雨の中、魔法学園へ到着した。

「アレがネブラ・アルボル・デービス天文台か…。」

何故かご領主様の書斎に建築図面が在ったのでその特徴的な建物は一目で解った。

「おい、バリエンテ、試験会場はあっちだぞ?」

すっかり仲良く成った黒髪オカッパ少年のグランド君が指さす。

「ああ、ごめん。」

後ろに付いて歩く。

流石、助祭見習様で歩く姿もしっかりしている。

「合格すれば何処でも見えるさ、今は目の前の問題を解決するんだ。」

合格の決意を胸に進む助祭見習様。

試験は筆記で午後から実技。

合格発表は10日後。

ココ、学園で。

試験が終わったら学園を見学しよう。

図面に在った”300mm”反射望遠鏡が有るはずだ。

”300mm”って寸法がどんな大きさか見てみたい。

大きな教室の椅子に座って試験が始まるのを待った。


簡単なお昼を食べて…。

実技試験は知っている魔法を教官の前で発動して終わりだ。

その後、面接が在った。

面接は数人で教師数人との対面で順番に質問に答える。

今年の質問は”学園で何を学ぶか?”だった。

毎回ある質問で事前に考えて居たのでに特にトチる事も無く。

普通に終わってしまった。

入学試験からあっけなく解放されてしまった…。

どうしようか?

学園内を彷徨う。

自然と木々の間の天文台ドーム屋根が目立つので足が向く。


「へぇー。」

見上げる天文台は思ったほど大きくなかった。

いや、寸法は図面で知っていたので、現物を見るまでは実感が無かったのだ。

収納から本を取り出し、天文台のページを開く。

この本が書かれた頃は未だ計画段階だったらしい…。

違いを見比べる。

「あなた、ココで何をしているの?」

ぼんやり見上げていると…。

「はい?」

緑色の髪の長いおねえさん…。

あ、貴族だ…。

「申し訳ございません。受験生です。」

「あら、そう、でもココは関係者以外立ち入り禁止よ。」

咎められた。

「はっ!そうでしたか。申し訳ございません。」

「何か理由が在って?」

「いえ、ネブラ・アルボル・デービス天文台を見たいと思っていました。」

「ネブラ…。天測塔の事かしら…。」

「はい、この本に出てくる反射望遠鏡が有るはずです。」

本を示す。

「貴方は何という名前なの?何処のお方。」

「ビゴーニュ領出身のバリエンテと申します。本日、入学試験が終りました。」

「そう…。受験生…。私はアンゼルマ・グリューンベルグと申します。」

「グリューンベルグ様…。」

聞いたことがある地名だ。

「その本を見せなさい。」

「え?その…。」

「早く!」

「は、はい!」

思わず渡してしまう。

ページを捲る緑の髪の…。

「あの…。大事な本でして…。」

答えず最後まで目を通し…。

表紙を眺める。

「そうでしょうね…。著者:ネブラ・アルボル・デービス。原書じゃないの!!落書きして!」

ひどく激昂する貴族。

「いえ、ソレは以前の持ち主の…。」

「何処から盗んだの!」

きつい声だ。

「いえ…。それは、僕がビゴーニュ伯御領主さまから頂いた大事な本です…。」

事情を説明するが…。

「コレは貴方には手がふれる事も許されない様な本です。我が学園でも貸出不可で閲覧も立ち合いが無いとできない重要書籍なんです!!それを貴方は…。」

余計に激怒してしまった。

こまった。

遠巻きに生徒の目が集まる…。

受験生もだ…。

「はーい、なにしてんのアンゼルマさまー、痴話喧嘩?」

のんきな口調で大きな声が掛かる。

遠くから群衆を割って…。

茶色で肩まで伸ばしたおねえさんを先頭に背の低い白髪で犬耳少女が二人、後ろに付いている。

「エリザベータさま…。ちょっと下賤な者がおりますので排除を…。」

怒りを収め優雅に挨拶をする緑の髪の貴族。

「あらそう、何か面白い事かと思って期待しちゃった。」

態度からこの人も貴族だろう。

しかも相当偉い人だ。

貴族に対して令をする。

「ムッ!おねえさま、こやつ兄弟では無さそうです。」スンスン

犬耳白毛の少女が二人前に出て眉鼻に皺を寄せる。

非常に良く似た顔だ、姉妹か双子なのだろうか?

「あらそうなの三女ヴィーネ次女シュネーはどう?」

「間違いないですおねえさま…。この者は私たちの兄妹では無いです。」スンスン。

もう一人の獣人の少女が答えた。

「貴方、お名前は?」

「はい、ビゴーニュ領出身のバリエンテと申します。本日、入学試験で帰りに学園内を散策していました。」

「あら…。」

「関係者以外立ち入り禁止区域に居たので誰何しておりました。」

頭を垂れたまま答える緑髪の貴族。

「ふーん、それはいけないわね。」

「申し訳ございませんでした。」

素直に謝る。

「あら、そう。判っているのなら入学してからここに来なさい…。でよろしいですか?アンゼルマさま。」

「そうですわね。」

「はい、入学できる日を待ち望んでおります!!」

頭を下げるが緑の髪のお嬢様は顔を歪めている。

「じゃあ、解散でいいわね?」

「はい。」

「はい…。あの本を。」

緑の貴族が睨む。

「本?」

首を傾げる茶色の髪の貴族のお嬢様。

「星の本ですご領主ビゴーニュ様から頂いた…。大事な本で没収されて…。」

貴族の小脇に挟む本を示す。

「いいえ、之は学園の本です。」

身体を防ぐ貴族。

「僕の本です!」

「ふーん、良いわアンゼルマさま私にお見せになって。」

「しかし…。既に落書きされて…。」

「まあ、私が判断してあげる、お父様の本なら本人に聞いて見れば良いし。学園の本なら直ぐに解るわ。」

渋々、緑髪が茶色髪に渡す。

「おねえさま、おとうさまの香りはしません。」スンスン(次女)

「こやつの香りですね…。」スンスン

激しい犬耳獣人の白い姉妹のテイスティングに晒される僕の本…。

「あらそうなの?図書館の本ではない?」

「こやつのにおいで間違いないですおねえさま…。イネスかあさまのにおいはしませんね。」スンスン

「はい、かび臭くありません。」スンスン

ページを開いて中を確認する茶色髪の貴族のお嬢さん。

「あら、本当だわ、御父様の字…。間違いないわ…。この文字は御父様の暗号で誰にも読めない文字なの…。」

本を開き、ご領主様の書き込みを示すお嬢様。

「そんな…。」

「はい、貴方ものでしょ?」

閉じて僕に本を返される。

それを妨害する緑の髪のお嬢様。

「しかし!ソレは非常に貴重な本です!下賤な者が持っていて良い本ではありません!!」

「ご領主様から頂いた本です、貴重な物だと思いますが”この本で学べ”と言われたので僕にとって大事な本なんです。」

「戯言です!」

「ふーん、少なくとも、この子の言っていることに今の所嘘はないわ。後は御父様に聞いてみるだけね…。」

「エリザヴェータさまこのような下賤な者の言うことを…。」

緑のお嬢様に睨まれる。

「うーん、アンゼルマさま、納得できないのなら…。私がこの本を預かるわ。」

「…。」

「僕の…。」

言いかけて止めた。

お父ビゴーニュ様に聞いてみるわ…。貴方、お父様の領地のご出身なのね?もう一度お名前を。」

「バリエンテです。」

「バリエンテ…。解ったわ、入学式には返すから。」

「この者が入学できるとは思えませんが?」

「まあ、それならお父ビゴーニュ様から直接返すようにしてあげる。」

「いえ…。あの、ご領主ビゴーニュ様のお手を煩わせる訳には…。」

焦る、この方はご領主様の王都の子供達…。

本妻貴族のお子様方だ。

身分が違いすぎる。

「まあ、あのお父様が貴方に本を譲ったのは何か理由が有るからなのよ…。ちょっと知りたいわ。」

にこやかに…。

ちょっと意地悪そうにほほ笑むお嬢様…。

絶対に面倒な事に成りそうな予感しかない。

「お父様の判断で、よろしいでしょうか?アンゼルマ・グリューンベルグさま?」

「そ。れ、でよろしいかと思います…。」

少し…。悔しそう?いや、恐怖だ。

「さあ、皆さん。問題は解決したので図書室へいきましょう。」

「「はい、」おねえさま」

お嬢さまが白い犬耳を引き連れ立ち去ると..

「ふん!」

ソッポを向いて大股で緑の髪のお嬢様が立ち去った。

僕は茫然と…。

「本、帰ってくるかな…。」

この学園に通うのが酷く不安に成った。




(#◎皿◎´)主人公なぞ居ない…。

(´・ω・`)仕様です…。(ククククッ誰が転生者かな…。)

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