第2話・星の子供達。1
「バリエンテ、元気でね。王都で変な女にそそのかされない様に。」
「母さんそんなことおきないよ。」
女中服姿の母に答える。
「兄さん元気でね、私もその内、学校へ行くから。」
「ああ、レイヤ。でも流石にその頃には兄さん卒業してるよ?」
学校の制服姿で生意気そうな妹に答える兄。
僕と似て居ない緑の目の色に金髪で長い髪。
妹だ。
兄妹の中で僕だけ父が違う。
その意味を何度も…。
僕に取っての新しい父さんではない。
幼い頃に気が付いた。
旅の途中にお父さんが死んで…。
何処かの村の外れ、土の中に埋められるのを呆然と眺めていた。
酷く寒かった事は覚えている。
多くの人が埋められる中の一つだった。
食べる物も無く、お母さんと大きな町に行った…。
向った先の建物の一室で…。
母と話す男は凄い大男だった。
母の知り合いらしい大男は…。
暖かい食べ物を食べさせてもらった。
ソコでお母さんは働く事に成った…。
僕達は食べ物とベッドに困る事は無くなったが。
お母さんは僕のお母さんでは無くなってしまった。
「三番線の列車は王都行、まもなく発車します。」
大きなメガホンで叫ぶ若い駅員、汽笛の音が響く。
先頭方面で蒸気が空に消える。
ホームで整列した兵士が先頭車両の装甲列車に乗り込み始める。
もう直ぐ発車だ。
「じゃあ、行ってくる。」
着替えの入った行嚢を担いでバックを持つ。
胸には
「いってらっしゃい。」「元気でね!」
家族の声を背に客車に乗り込む。
並ぶ椅子の中で…。
切符の番号を確認して座る。
駅員が扉を閉めた。
旗を振る。
笛の音で客車が揺れる。
ゆっくりと走り出す。
手を振るホームの人達。
王都へ向かう人を見送っている。
客車は動力車と給水車の後、二両で後方は貨車だ。
列車は一日に二本で客車は混んでいる。
皆、乗客は荷物を荷台に置いて椅子に座る。
シートは固い、木製だ…。
コートを脱いで丸めて尻の下に敷く。
手元には本。
後は目的地に付くまで窓の外を見る仕事だ…。
時間を潰す為に本は必要だ。
この列車は日が落ちるまで走ると駅舎で一泊して次の日に夕方には王都の郊外に到着する。
駅舎に宿は有るけど…。
列車の中で夜を明かす。
鉄道は馬車で移動するより早い。
先頭と後方には兵士が乗り込んでいて安全だ。
オーガ位の魔物なら跳ね飛ばして居る。
切符は高額でも総合的に考えると乗り合い馬車より安い。
但し、切符を手に入れる事は難しい。
僕の列車の切符も魔法学園への
母のおかげだ…。
母はご領主様の情婦に成る事で僕の生活を…。
僕の身を立てる事を条件に母はご領主様に身体を差し出したのだ。
ご領主様の女好きは有名だ…。
魔法使いだから仕方が無い。
歴史上そうなので誰もが納得している。
一代で身を建てた軍人で大魔法使いで教授の辺境伯様だ。
この国で命令できるのは国王陛下ぐらいしか居ない。
逆らえば誰でも処刑できる。
後から解ったが、ご領主様はそんな事しない。
多分、母が身体を差し出さなくても。
情婦に成らなくても生活は出来たと思う。
ご領主様の領地ビゴーニュは豊かな場所だ…。
しかも、初めから豊かで有った訳ではない。
ご領主様、一代で豊かにした…。
森を切り開いて農地を開墾して、谷を埋めて湖を作り、用水路を張り巡らして、工場を作って…。
広大な開墾地の草原を羊たちが食み。
工場で作った農機がやせた土地に豆をや綿花を植えて…肥沃な農地に成るまで何度も農機が耕す。
麦の収穫ができるまで。
収穫した綿花や羊の毛は工場で糸に加工され、織機工場で布地に変わる。
この列車の後方の貨車は殆どがビゴーニュ領で作った製品や穀物だ。
王都に出荷して居るのだ…。
ビゴーニュ領の人達は誰も飢えていない。
働けば住むところも食べ物にも困らない。
子供達も…。
しかし、母が情婦に成ったので、僕はご領主様の子供達に混じって高度な教育を受ける事が出来た。
お屋敷の中の書庫を自由に閲覧する許可を貰った。
時々、ご領主様自ら教鞭を取る。
質問に答えてくれる。
ご領主様から星の本を頂いて…。
僕が何不自由する事が無かったのは、母が選んだ事なのだ…。
妹達の父親はご領主様…。
数居る、ご領主様の情婦の中の…。
お屋敷の副メイド長。
この複雑な気持ちは一生、僕から消えないだろう。(NTR!NTR!!)
本を開いて読む。
何度も読み込んだので、どのページに書かれた文も覚えている。
只、ご領主様の書き込んだ暗号は解らない。
最近、記号で無く文字だと解った。
この四角い二つの文字は”
後ろの文字一つで”
幾つかの文字を組み合わせて一つの文字を表している。
そう気が付いてから…。
星の本の内容は凄い濃い内容だ…。
ご領主様の暗号は大地球の重さの計算法から、予測される恒星の大きさ…外周天体の大きさと恒星軌道の直径の算出方法を示唆している…。
軌道偏差から未だ未知の
「おい、君。列車の中で本を読むと乗り物酔いするぞ?」
「あ、はい。すみません。」
気が付くと向かいに座る青年が…。
魔法学園のコートを着ている。
「列車に乗るのは初めてかい?」
「はい!そう言えば、ビゴーニュに来てから…。初めて邦を出ますね。」
「そりゃ、楽しいだろう。何処に行くのだね?」
「王都で…。魔法学園へ受験です。」
「おお、そうか…。僕もね…。始め列車に乗った時は魔法学園への受験だったよ…。緊張してね列車の中で勉強したら、直ぐに乗り物酔いだ。」
苦笑する青年…。
僕より少し年上だろうか?
見た事が無い顔だ、僕達の世代は珍しいのだ。
下の子達は一杯居る。
「あの…。教会関係の方ですか?」
「ああ、教会で育った。北の町の開拓団で来た。北の町生まれのビゴーニュ領育ちだ。」
「なるほど…。僕も初期の入植者です。」
「だろうね。僕達の世代は珍しいからね、子供で入植者は。今は何処もビゴーニュ生まれのビゴーニュ育ちだ…。寂しくもあり賑やかである。」
「そうですね…。」
妹達もビゴーニュ生まれだ。
「僕達はビゴーニュ領に取っての希望の星だ…。受験、上手く行く様に祈っている。学園で同郷が増えるのは僕も嬉しいからね。」
「はい、頑張ります。」
そうだ、母が魔法学園を望んだのだ。
母が通って…。
ご領主様はソコで教師だったそうだ。
高度な算術を使い、多くの論文を書いたそうだ…。
貴族の
この本の暗号は教職時代の物だろう。
恐らく研究の途中の…未発表の論文に関する物だ。
何故ご領主様はこの本を僕に譲ったのだろう?
(#◎皿◎´)偶々…。
(´・ω・`)…。(続き…考えていません。)
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