婚約破棄された伯爵令嬢は悪女を目指す。-そうしないと御家の危機だそうです。-

焼肉バンタム

第1話・プロローグ。

横浜生まれのわたしは短大を出て、地元でOLをしていた。

青春の殆どをゲームで過ごした位のゲーム好き。

外ではそれなりに見栄えに気を付けた。

いわゆる隠れオタクと言う奴だ。


周りにゲームする人が居なかったので…。

いや、居なかった訳ではない、同じジャンルのゲームをする人が居なかったのでゲームの興奮や推しを共有する友達が居なかった。

だから、成人に成って無難な家から通える会社のOLで…。

忙しい時期以外は残業も無い職場で土日は友人に誘われなかったら殆ど家でゲームしていた。

そう、ありとあらゆるAVG…。

恋愛RPG。

百合から鬼畜ゲー。

推しサイコー!

成人の財力!凄い!!

花の金曜日、わたしは会社帰りに大手チェーン店のゲーム屋を出た。

「ちょっと多かったかな?」

下げたゲーム屋さんの袋がぱんぱんだ…。

新作ゲームをGETした!

割引券を貰ったのだ、使わねば。

そして、ワゴンで古いゲームが投げ売りだった。

ひゃっはー!ゲームのジャケ買いだ!!

今月のゲーム代を超えてしまったけど、大丈夫!

コレだけ有れば二か月は戦える!!

自分へのご褒美だー!!

「ふんふんふんふーん。」

好きなゲームの鼻歌をBGMに足も軽くバス停を目指す。

今日は徹夜でゲームだ!!

「あ!君あぶな…。」

スーツ姿の男の人が叫ぶ。

「え!」

目の前の歩道の信号は赤に変わっていた…。

トラックのヘッドライトが眩しい…。

アーーーーーッ!!


気が付いたら

何もない空間だった…。

「あれー。」

光が浮いている…。

「私は在る世界の眷属を束ねる者です…。」

「はあ?」

「我が眷属からはあなたの概念で言う神と呼ばれています…。」

「神様ですか?」

「はい…。あなたは死んでしまった…。魂が彷徨っているのでこちらに呼びました。」

「彷徨って…。まあ。ゲームには未練があったけど…。」

「はい…。彷徨えるあなたの魂にお願いがあります…。私の子供達が他の眷属からの攻撃を受けて混乱しています…。このままでは子供達が殺し合ってしまう…。」

「ええっ!大変ですね…。」

「子供達を正しい道へと導く使者として、他の眷属の使者から子供達を守って欲しいのです。」

「他の眷属…。使者…。他にも神様が居るんですか?」

「はい…。沢山います。使者は眷属達を束ねて…守り、戦い。そして眷属から離れた者も居ます。」

「えー。戦争はちょっと…。」

「闘争だけが眷属の繁栄ではありません…。戦争はその手段の一つです。」

「わたしは何をすれば?戦争パートは苦手なんですが。」

「あなたは私の眷属の子として産まれ、我が眷属を導いて分裂の危機を救ってほしいのです。」

「つまり聖女様なんだ。」

「あなたの概念ではそのような者です、眷属を纏める手段の一つだと思います。別の方法でも構いません。このままでは私は分裂してしまう…。」

「別の方法…。特に思いつかないけど…。」

「あなたは我が眷属として一生を掛頂きます。それなりの階級の眷属の子として生まれ変わります。」

「おおっ!良いね貴族の御姫様!能力値ボーナスは?スキルは?」

「その概念は存在していません…。但し、わたしの声を聞くことが出来ます。」

「神の声だー!」

「信仰が上がればあなたの身体に奇跡を起こす事ができます。」

「レベルアップだ!!」

「軌跡を成すには、信仰心を集めて下さい。他の眷属の魂を捧げて下さい。」

「他の眷属は全部敵なのですか?」

「敵対する眷属も居ますが…。基本的には不干渉です…。他の眷属でも子供達は協力し合っている場合もあります。攻撃的な使者も居ます。眷属を離れてしまった使者も…。」

「敵対する眷属…。友好的な眷属、攻撃的な使者…。うん、わかった。」

「はぐれの使者には十分に気を付けて下さい。前任者は、他のはぐれ使者に殺されてしまいました…。」

「はぐれメ夕ルに殺される前任者!!」

「敵対する眷属でも使者でも回心させれば信仰心が上がります。」

「布教活動か…。苦手なんだよね…。イマイチ推しの良さが伝えられないんだ…。それで良いなら頑張ります。」

「では…。あなたの人生が始まります…。」

「さあ!目指せ聖女さま!!イケメンと結婚してゴールイン!」


わたしは、気が付いたら大貴族の三女に転生していた!

大きなお屋敷に、美しい街並みと綺麗な海!

本当に剣と魔法と魔物の世界だ!

神さまこの身体のスペック最高です!!

美形ですスタイル良いです!身体も軽くて剣も魔法も使えます。


さあ!がんばるぞい!


海を見下ろす大きな屋敷にお父様とお爺様が久しぶりにやって来た…。

「お爺様、お父様お久しぶりです。」

ふっ、ふーん。

本物のお嬢様ですぞ!

お約束のイケメンの婚約者も居ますよ!

相手も大貴族だよ!

「おお、アマーリア大きくなったな…。」

「父上…。良かったのでしょうか?」

「ああ、これ以上あの宮廷の好き勝手にはさせん!特にあの偽皇帝にはな!!」

「しかし…。我が家の名声は地に落ちたままです。」

「解っている!!だからこそだ!」

声を荒げるお爺様…。

何時も優しいのに珍しい。

「おお、すまんなアマーリア。大きな声を出してしまった…。」

激アマ顔に成るお爺様。

「アマーリア、未だ剣の鍛錬はしているのか?乗馬も?」

「はい。もちろんですお父様。」

家に馬が在るなら乗馬はお姫様のステータスだよ!

「そうか…。ほどほどにしておきなさい…。」

女が剣の訓練していると…。

皆が女騎士は止めておけと注意してくる…。

くっころが多いのかも…。

「いや…。良いことだ、魔法も覚えているのだな?」

「はい、もっと魔法の勉強がしたいです…。」

顔を見合わせるお爺様とお父様…。

以前からも言ってる…。

魔導書が欲しいと。

「アマーリア、よく聞いてくれ、ディオニュース家との縁談だが…。破談に成った。」

え?

「ええー!!」

嘘…。金髪イケメンの男の子なのに…。

絶対イケメンが…。

「アマーリア聞いてくれ…。帝都で恐ろしいことが起きた…。」

お父様が深刻な顔で話す。

「なんです?お父様?」

「皇帝の持っていた正統の指輪が偽物だった…。」

えーなにそれ。

「正統の指輪はマリー・ルイーズ・ペニャーリアさまの所にある事が証明された…。」

「あのクソ皇帝め!我がカーレー一族にルイーズ様殺害の汚名を着せおって!!許さんぞ!アルカンターラ!!」

激高するお爺様…。

「今、帝国は二つに割れようとしている…。カルロス13世派と正統派だ…。内戦が起きても可笑しくない状態だ…。我々、正統派の主である我々カーレーに味方は少ない。」

「では…。ディオニュース家は…。」

「カルロス13世派に付いた…。元々は親カルロス13世だ…。ソレを見込んでの縁談だ。」

「正統の指輪はマリー様の物だ…。帝国の支配者はマリー様だ…。しかし、あの大魔法使いは我々も敵だと…。くそっ!何故だ!」

ブツブツ話すお爺様…。

続けるお父様。

「アマーリア、カーレーの名を伏せてロジーナ王国の魔法学園に行きなさい…。王国の魔法を覚えて来るんだ。」

「魔法学園には…。クロウ殿下がお見えだ…。どんな手段を使っても良い。クロウ殿下をこのカーレーにお招きするのだ…。」

お爺様がわたしの髪に優しく触れる。

「父上!」

「良いか…。アマーリア、元々はルイーズ様をお招きできなかったこの爺の失態だ…。すまない…。謝る。だがマリー様は生きておりクロウ殿下が居られる!!」

涙を溜めるお爺様…。

「父上!!お止め下さい。」

遂に膝を付いたお爺様…。

「アマーリア、頼む!どんな手段でも良い…。お前の美貌でも身体でも…。なんでも使え。正統の指輪とクロウ殿下をこのカーレーへ…。」

目の前に…。

”神の特別試練:正統の指輪奪還任務…。王国の若様を美貌でコマせ!!”

え?ナニコレ…。

文字じゃま。サイテー

「お父様?」

「良いんだ。アマーリア、帝国を離れ…。王国で楽しんできてくれ…。我々は見方を増やす努力を行う。卒業する頃には内戦も終わる…。」

「クロウ殿下をお招き出来ればカーレーに味方する貴族は増える…。今は敵ばかりだが正統な帝国の所有者であるクロウ殿下の下に付く貴族軍は増えるだろう。このカーレーの町を焼かれる前に!!」

それは嫌だ。

美味しい海の幸とこの町、美しくて大好きなのに…。

なら神様、聖女悪女に成ってあげましょう!!

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