第4話 追いかけよう

「手を組んで…なにするの?」


先の事は未定でも現時点で何をするのかが知りたい。


「まず第一に俺がここで調べものをしていることを誰にも話すな…お前が話さなければ誰にもばれることはない」


え、でも


「…私にはばれたじゃん」


「それはお前の異常すぎる幸運値のせいだな…お前以外にあの人払いの魔法が突破されることはないな」


私の運はそこまで異常なのかぁ…というかこれどちらかと言うと悪運では?


「第二に…お前を俺が鍛えてやる」


「はえ?」


鍛えるって、何故に?


「いや…別に強くなりたいかそういう願望はないんだけど…」


「もし世界大戦の阻止に失敗したら、お前、勇者だから戦場に駆り出せれるぞ」


「…ええ」


それは勘弁してほしい!


「だからある程度強く…最低でも俺に次ぐ位強くなってもらわないと、従軍拒否して逃げ出すこともできなくなる」


「勇者ってこと言わなければ…」


「だめだ、この世界には神託を授かる巫女がいるからな、そいつ経由でいずればれるぞ?」


やっぱ悪運が強いのでは?なにが運がいいだ!


「あと強くないと魑魅魍魎蔓延るこの世界では色々不利だ」


「せっかく公爵家に生まれたのに…」


「公爵と言っても歴史だけだからお前の家は…実質的には男爵家みたいなもんだ…まあなにか秘密は抱えているみたいだが…」


「秘密?」


「まあそれはおいおいでいい、まずは取り敢えずお前にはさっさと強くなってもらわないと話にならねぇ」


「さっさとって…へ?もっと成長してからとかじゃなくて?」


「ああ、明日から鍛えてやる」


「あの…私、まだ8歳児なのですが…」


「精神年齢は大人だろ、問題ない」


「問題大ありだよ!肉体年齢は年相応なのに」


「どっちにしろそんなに余裕はない、強くなるのだって時間が掛かる、それとも悲惨な総力戦に兵器として参加したいか?」


う、それは…絶対に嫌だ…


…はぁ…選択肢はないか…さすが魔王


「それほどでもない」


「褒めてない!ていうか心を読むな!」


…強くなる鍛錬かぁ、絶対厳しいやつじゃん…


「まあ取り敢えず今日はそんなところだ、解散だ、明日のこの時間に再びここに来い…俺のことは誰にも言うなよ」


「マイペースすぎる!」


「魔王だからな」


「誇らしげにするなし!」


ああ、もう色々と疲れた。


「もう、いいや取り敢えず、お風呂入って寝よ」


家は名ばかりの公爵家だからね、割と自由がある。そういう意味ではあたりなのかもしれないけど…


「風呂?」


椅子に座って読書の態勢に入った魔王が顔を上げ疑問の声を上げてくる。


え、なに?


「まさかこの世界にはお風呂がないとか言わないでしょうね…」


はは、まさか


「ないぞ?」


「はえ?」


え、マジ?


「…クリーンと唱えてみろ」


「え?」


「そう唱えてみろ」


なによ、いきなり、えーと


「クリーン」


そう唱えた瞬間、私の体が一瞬だけほのかに光ったそして


「…あれ、なんかさっぱりしたような?」


「その魔法は体を適度に清潔に保つ、それがある故、この世界一般には風呂という文化はない」


「えぇ…情緒がないい」


「その魔法がある故、この世界では疫病の発生が極端に少ないからな…どうしても風呂に入りたいなら、温泉という文化が一応あるからそこに行くといい」


「ちなみにどこに?」


「ここからだと1000kmほど先だな」


「遠いよ!」


「というかこの程度の知識、お前も持っているはずだが?」


え、ああそういえば…確かにリアの記憶にもそうあるね…


「はぁ、もういい寝る」


「まだ日が落ちる前だがな」


「うるさい!」


「お前、本当に8歳児みたいだな」


余計なお世話だ!
















魔王と別れ無駄に長い廊下を歩いて自室に向かう私。


聖剣はいつの間にか消えていたけど、魔王曰く、いつでも召喚できるのだとか、別にいらないのだけどね…


あれ、そういえば使用人にしか会ってないけど公爵家の人間は…


えーと、リアの記憶によるとお父様は公務で王都に行っていて、お母さまは…故人なのか。


そして長男で嫡男のお兄様は学園都市の貴族学院に行っていると…なんとこの屋敷,


使用人以外は私一人なのかぁ…


しかし私のどこが幸運なのだろうか?


…でも魔王にあったことで戦争に巻き込まれる可能性がへったからある意味では幸運なのかなぁ。


そんなことを考えながら窓の外をちらっと見た。


「え?」


「あ」


そして、目が合った、粗末な服を着ている割に普通に清潔そうな今の私と同じ齢くらいと思われる少年と。


…あれ、窓の外って屋敷の庭のはずなんだけど?この子誰


「っやべ!」


そう呟いた少年は逃げるように走りだす。


その瞬間私は反射的に窓を開け身を乗り出す。


あれ、なんか体が羽のように軽いような。


てっ、いまはいい、それより侵入者と思われる少年を追わないと!


今の私はちょっとイライラしてるんだ、不審者は子供だろうと、とりあえず捕まえてに騎士に突き出してやるわ!


私はそんな普通に大人げないことを思いながら少年を追う。


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