第5話 友達になろう(脅迫)

「待ちなさーい!」


侵入者の少年を追いかけて走る私。


なぜかは知らないが体が軽い…おかしい、リアの記憶だと私はそんなに運動するタイプではなかった…というかほぼ引きこもりみたいなものだったはずだ。


と少年が庭を抜け、茂みの中へ入っていった。


逃がすか!いや別に子供だし逃がしてもいいだろうけど…


そんなことを考えていたらいつの間にか森に入っていた、と同時に少年を見失っていしまった。


私の前に4つのけもの道がある、このどれかに行ったんだろう。


「ここは私の運を信じて!」


右端の道を選んでさらに突き進む。














俺の名前はアキ、コード村に住んでる農民の子供だ。今年で8歳だ!


コード村にはでかくて古臭い屋敷がある。なんかここら一体を治めるコーなんとか公爵?の屋敷らしい。俺は度胸だめしで仲間とこの貴族様の屋敷にどこまで近づけるか試していた。


今日の騎士はやる気がないほうだったらしくなんと俺は屋敷のすぐそばまで到達できた。


この度胸試しは俺の勝ちだ!そう思っていたら、屋敷の廊下を歩いている人、俺と同い年くらいと思われる女の子を目撃した。


その子は驚くほど綺麗で…しばらく見惚れてしまっていた。それがいけなかった。


その女の子と目が合ったのだ。


「え?」


「あ」


ヤバいばれた!


「っやべ!」


俺は一目散に逃げだした。


と、後ろから窓が開く音がしたので走りながら振り返ると、あの女の子が窓から飛び出してきていた。


すげぇ身軽だ!てっ!まずい!逃げなければ


俺は庭を抜け茂みに入りそのまま森にある秘密基地に向かう。


森にはいってしばらくして振り返ってみると誰もいない、よかった、どうやら逃げ切れたみたいだ。


俺はそのまま俺の仲間、ソイとメルのいる秘密基地についた。


秘密基地は俺たちがこっそり立てた掘っ立て小屋だ。


「アキ君どうしたの?そんなに息を切らして」


メルが問いかけてくる、メルは隣の家の女の子で年齢は7歳だ。


「そうだよ、どうしたんだ?」


ソイも問いかけてくる、ソイは俺の悪友だ。


「やばい、屋敷の人間に見つかっちまった」


「ええッ!」


「まずいじゃん、僕たち衛兵につかまっちゃうよ!」


「大丈夫逃げ切った…」


「誰から逃げきったって?」


な?


俺たちは一斉に声のした小屋の入り口へ振り返る。


そこには先ほどの女の子が腕を組んで立っていた。



場に沈黙が落ちる、ちらりと横を見るとソイはただぼーっと彼女の見つめていた。


さっきの俺みたく見惚れてるらしい。


馬鹿か、見惚れている場合じゃねぇ!


どうする、この状況。


…しかたねぇここは俺の必殺技を出すしかねぇ!


必殺!


ド☆ケ☆ザ!


「すみませんでしたぁああああ!」


俺は旅のにーちゃんに教えてもらったどけ座を敢行する。


どうだ!


女の子の反応は…


「え、この世界にどけ座の文化ってあったの…!?」


なんか驚愕していた。


思っていた反応と違う。


と、その時突然、黙っていたメルが女の子に向かって突撃した。


「へ?」


そしてメルはその女の子に抱き着く。


「かわいいいいっ!何この子!、めっちゃ可愛い!」


「ちょ、あなた、突然何を!」


やばいメルが暴走した!


あいつはかわいい物?が大好きだらか、この女の子がメルのお眼鏡にかなってしまって暴走したのだろう。


…しかし。


どけ座したままの俺。


見惚れたままのソイ。


女の子に抱き着いて離れないメル。


困惑する謎の女の子。



どうすればいいんだ、この混沌とした状況…!












「「「すみませんでしたぁああ!」」」


「…なるほどね」


追いついたと思ったら、なんか突然あの少年がどけ座しだして、さらに突然彼の隣にいた女の子が抱き着いてきて…訳が分からず、しばらく困惑していた。


まあ今は状況も落ち着いて私の目の前で三人が首をそろえて頭を下げている。


「度胸試しに屋敷に近づいたと」


「「「は、はい」」」


しかし、子供にあそこまで入り込まれるとは…衛兵は何をやっていたのだろうか?


これはこの屋敷の警備の責任者である騎士団長に報告した方がいいだろう。


まあ騎士団といっても領地の規模相応のものだけどね…。


と考えにふけっていると


「あ、あのあなたは…?」


「私?私はリア・コーザリティー、コーザリティー家の長女よ」


「やべぇ…本物の貴族様だ…」


なんか3人が震えだしている、この世界の貴族ってそんなにおそれられているのかな?


というか…どうしようこの状況、衛兵に突き出すと意気込んできたが冷静になるとなんかめんどくさい。取り敢えず子供が勝手に侵入していたことだけを衛兵長に伝えよう。


ということで


「よし、このことはなかったことにしましょう」


「「「え」」」


三人が驚いている。


衛兵に突き出されると思っていたのだろうか?まあ最初はそのつもりだったけど。


「その代わり条件があるの」


「じょ、条件?」


どけ座の少年が答える。


そう条件は…


「私と友達になってくれないかな?」


「「「へ?」」」


私は思ったのだ。屋敷では使用人以外は独りぼっち。孤独すぎる!


そこでだ、外で友達をつくればいいのだ、そういうことだ。


ちなみに今思いついたということは秘密だゾ。


「え、えーっと、あ」


どけ座の少年が何か言おうとしたところで


「「ぜひ!」」


残りの二人が食い気味に答える、よし成功!


「お、おい、お前ら…相手は貴族様だぞ!そんな気軽に…」


「いーじゃん、アキ君、その貴族様から提案してくれているんだし、しかもかわいい!」


「そーだ!…あ、いやその、アキ!それに、見逃してもらえる条件なんだろ!」


「いや、そーだが…」


ということで、一歩踏み出し、どけ座の少年、アキの手を取る。


「ということで、よろしくね!アキ、私の事はリアでいーよ!」


「うぉ…はあ、わかりまし…いやわかったよリア、よろしくな」


おお、この少年なかなか肝が据わっている。


と、3人のなかで唯一の女の子が割り込んでくる。


「はいはーい、私はメル!よろしくねリアちゃん!」


「よろしくね!メル!」


そして…


「…君は?」


「あ、いえ、あの、えーと、そ、ソイです、よ、よろしくお願いします!」


「うん、よろしく!ソイ!」


よし三人と自己紹介ができた。


異世界で初の友達ゲットだぜ!


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