第2話 エンカウントしよう
「ここが…蔵書庫かぁ」
リアの記憶を頼りに、無駄に広い(ついでに古臭い)屋敷の蔵書庫についた私。
…勢いで来ちゃったけど、これ、勝手に入っていいのかなぁ。
しかし、誰かに確認を取るのも大変だ。なんせこの屋敷、広いわりに使用人の数が極端に少ない。事実あのメイドさん以降、誰にも会っていないのだ。
どうやってこんなに広い屋敷を管理しているのだろうね…。
「うーん、どうしよ」
…
…まあいいや、女は度胸…前世が女だったかどうかすら定かじゃないけど、まあとにかく当たって砕けろだ!
ということで扉を開き中に入る。
蔵書庫の中は何だが薄暗い感じだ。構造は元の世界のヨーロッパの古い大学の図書館という感じで中々に広い。
すごいね、腐っても公爵家ってかんじだね。
とにかく、情報を集めよう、幸い文字は読める。あとはこの世界について書かれた本がどこにあるかだが…うーん、リアの記憶にはない、これは地道に探すしか…。
と、そんな感じで思案にふけっていると。
「おい、お前」
「ひゃい!?」
突然声を掛けられた。え、誰かいたの!
慌てて声のした方へ振り向く。
果たして、そこには…銀髪の浅黒い肌をした長身の青年が立っていた。
誰!?
…あれでもなんかどこかで見たことがあるような?
「あ、あなた…誰?」
私が取り敢えず誰何すると。
「質問するのは俺の方だ…お前、どうやって入ってきた?」
質問するのは俺の方って…どうやってって…
「えっと…普通に?」
「普通に…だと?」
この人は何を言っているのだろうか…
「おかしい…人払いの魔法を最大出力で掛けたはずだが…」
いや、ホントに何言ってんのこの人。
人払いの魔法を最大出力?なぜに?
「お前、名前は?」
銀髪の青年が私に問うてくる。
私の方が質問したいのだけど、リアの記憶の中にこんな人が屋敷にいるなんてものはなかったし…でもどこかで見た顔なんだよね…。
しかしなんかこの人には逆らっちゃまずいと本能的が訴えてくるんだよね…ここはそれに従って素直に質問に答えよう。
「リア・コーザリティー…」
「コーザリティー…なるほど、お前がこの家の長女か…なるほどお前が…」
えーと
「あ、あなたの名前が」
今度は私が彼に名前を問う。
「俺の名前はないな」
名前が…ない?
「いったいどう…」
私が疑問を口にしようとした瞬間、彼が
「が、配下や人間どもからは「魔王」と、そう呼ばれている」
そう言った。
―ドバァッ!
その瞬間、彼から威圧的な赤いオーラが放たれる。ついでに一対の赤い翼も彼の背中から現れる。
その威圧感はすさまじく私の体は勝手に震え始める。
魔…王…?
そこで私は思い出す、そうだ!この青年はこの赤い翼は、リアが本の挿絵で見た!
その本のタイトルは「魔王の軌跡」だった。
内容は魔王はアル大陸の征服を宣言している。だが今のところ動きはなく、彼の意図は不明。しかしその強さは世界最強であり人類から畏敬を持たれており、さらには魔王を崇拝する人もそこそこいるのだとか。
昔魔王を討伐するため、人類側の魔王的な存在である勇者が神から貸し与えられた聖剣を携えて魔王城に向かったがボコボコにされて逃げ帰ってきたとか。
とにかく、本の内容によるとそんな感じらしい。
「…ほ、本物?」
「あ?証明にここら一体を吹き飛ばしてやろうか?」
あ、なんかヤバい事言ってるううう!
れ、冷静になれ、リア、考えよう。
…えーと、魔王が人払いの魔法?を最大出力?でかけて、この歴史だけはある公爵家の屋敷の蔵書庫で何かしているところに私が入ってきたと…
うーむ
うん
「あれ、私って、今割とピンチ?」
「…まあ、ありたいていに言えばそうだな」
わあ、魔王からのお墨付き!
「…どけ座すれば見逃してもらえたり?」
「…どけ座だと?」
あれ、この世界にどけ座の文化はないのかなぁ…。
「取り敢えず私が死ない方法なんかないかな!」
なんか怖すぎてやけくそになってきた。というか夢じゃなければせっかくあの地獄から解放されたと思われるのに、即死亡とか勘弁!
「くく、それを俺に聞くか?…それはもちろん俺を倒すしかないんじゃないか?」
魔王さん、余裕たっぷりですね、そりゃそうか、八歳児が相手だもんね。
「…でも聖剣とか持ってないし」
「聖剣か…今は勇者が不在だからな、案外神とやらに祈れば運が良ければ貸し与えられるんじゃないか?」
魔王さん、意外とノリがいい、こっちは命の危機なのに!
…しかし運が良ければねぇ…勇者って魔王の口ぶりからすると世界に一人なんでしょ?それこそ宝くじ当たるより低い確率なんじゃないの?
はぁ、そんなの無理に決まっている…まてよ?
確か神を名乗る声が言うには私は運がすごくいいらしい。
…これはワンチャンスあるのでは?
「…ちなみどうやったら貸してもらえるの?」
「…お前、肝が据わりすぎじゃないか?…確か、前にボコった勇者は「いでよ、聖剣」とか言って召喚していたな」
いや、教えてくれるんかい、殺す気満々なのに親切な魔王、これもうわからないね(諦観)。
…はぁ取り敢えずやってみる、か。失敗したら死だけど。
私は片手を上に掲げる。
「ほう、本当にやるのか、くくく、お前面白いな」
なんか、魔王に笑われているが無視する。
そして…
「いでよ!聖剣!」
と言いう。
…まあ、何も起きな
―カアアアッ!
と、突然掲げた手の先が強烈な光を放つ。
「きゃあああ目がががが!」
ま、眩しすぎる!
「な…まさか!」
魔王が驚愕の声を上げている。
そしてしばらくして光が収まる。
気が付くと掲げた片手に何かを握っている感触が伝わってくる。
それを目の前に持ってくる。
それは…美しい剣だった、碧く透き通るような刃、他にも各所が黄金で飾り付けられている。
…これって
「…聖剣…だと…まさか成功させるとは…これがコーザリティー家の血筋の力か!」
…魔王がなんか言ってる。血筋の力?たぶん関係ないと思うけど。
とにかく。
うん…ここからどうしよう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます