暦語り ~人生のロスタイム~
病室にて
人生は短い。
そして、俺の人生は普通の人よりも、もっと短い。
そんなことを医者から聞かされていた。
だったら、その限られた短い人生を、精一杯生きてやる。
生き切ってやる。
トンデモないくらいすごいことをしてやる。
それを俺の夢にしよう。
一気に駆け上がるような。
そんな人生も悪くない。
でも、やっぱり、あいつらと、もっと一緒にいたい。
もう少しだけ。あと少しだけ。
俺にロスタイムをくれ。
本当は生きていたいんだ。
「もう俺は永くない。だから、別れよう」
最愛の人に別れを告げた。
彼女、撫子には、幸せになってほしい。
俺のことをずっと引きずっていたら、あいつは新しい恋が出来ない。
辛いけれど、別れなければいけない。
「バカッ! 何で、そんなこと言うのよ! 私にはアンタしかいないの! アンタは絶対死なないし、私も絶対別れないから! ……っ!」
キスで黙らせる。荒療治か。
「病院で大声を出すな。……分かってくれ」
きっと、お前を思ってくれる奴はいる。
もしかしたら、もう近くに……。
でも、まあ人生何があるか分からねえけど。
そうは言っても、こればっかりは分かる。
自分の身体が、そろそろ限界ってことくらいは。
ふと窓の外を見ると、近くの公園でサッカーボールを蹴っている小学生くらいの男の子が見えた。
「外出禁止が何だってんだ」
最期の時くらい好きなことさせろっての。
そういえば、俺がサッカーを始めたのって、撫子の影響だったよな。
あいつにカッコいいって言ってもらいたくて。
それでサッカーにハマって。
秋人と春が付いてきて、
雪兎に出会って、
立夏とフレッド先生に出会って、
全国優勝を成し遂げた。
ホント、奇跡だよなあ。
二回目は、きっともう起こらないだろうけど。
「よお、俺と一緒にサッカーしようぜ」
「お前、名前は?」
「……吉野、有明吉野」
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