先輩と俺  その漆  ~雪兎くんのワクワクお宅訪問!~

ポケモン

 ああ、この状況をどう説明したらいいのだろうか。

 右手には、元憧れの先輩。左手にはニートの兄。

 何故か、実家のリビングでお茶菓子片手に談笑(でもないけど)をしている。


 ことの発端はクリスマスが終わった頃に遡る。


「吉野君はいいなぁ。彼女とクリスマスデート出来て」

「じゃあ、先輩も彼女作ったらどうですか」

「う~ん、まあ作ろうと思えばいつでも作れるんだけど~」

「じゃあ、さっさと作ってください」

「いや~、でもほら僕は何かに縛られるの嫌だからさぁ」

「そうですもんね」

「吉野~、何か冷たくなぁい?」

「言っておきますけど、俺はまだ怒ってますからね」

 つい先日、俺と染井さんは初デートをした訳だが、その道中を先輩と先生はストーカーよろしく、ずっと監視していたのだ。染井さんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたし、こんな先輩達に付き合わせて申し訳ない気持ちだ。先輩は、その場では謝っていたけれど、本当に反省なんてする訳がないと思っている。

 まあ、あの後のお揃いのネックレスを買う提案だけは良かったけれど。俺は今も首にかかっているネックレスをと、ちらりと見て思った。


「吉野はお正月帰省する?」

「一応、正月くらいは帰りますけど」

「じゃあ、僕も付いていっていい?」

「何でですか?」

「ヒマだから」

 そんなこんなで、お正月の帰省を先輩と共に迎えることになったのだった。



「お兄さん、ゲーム得意だったよね!」

 先輩は挨拶の後、いきなりそう言った。

 久しぶりに家族以外の他人と会話をした兄は、おそらく頭の中がいっぱいいっぱいになっていることであろう。そんな兄をよそに先輩は続ける。

「じゃーん、持ってきちゃいました~」

 先輩の手にはパッケージからして、おどろおどろしいゲームが握られていた。

「明らかにホラーゲームじゃないですか!」

「何なの? 吉野君、ホラー苦手?」

「グロそうなのは嫌ですよ」

「だったら、ポケモンやろう!」

 ゲームではなく、思い出のポケモン語りが始まった。

「やっぱりリザードンが格好いいと思いますよ」

「僕は熊キャラだけど、熊縛りとかしないから。まあキテルグマとツンベアーは入れてやってもいいけど」

「何ですか、新しいポケモンですか」

「吉野君たら、さてはダイパ(ダイヤモンド・パールの略)で記憶止まってるな」

「確かにダイパ以降はやってないですが」

「お兄さんの好きなポケモンは?」

「……ブイズ(イーブイとその進化系)が好きです」

「何かそれっぽい!」

「サンダースとかですね」

「ポケモン世界でありそうな犯罪を紹介するよ! イーブイにテキトーな進化の石を投げつける!」

「ヒイッ」

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