お化け屋敷と観覧車

              ◆



「何か、次はお化け屋敷の方に行ってるよ」

「二人とも怖いの平気そうだしな」

「アイスランドくしろのお化け屋敷のチープさは中々笑えるから、僕達も行ってみよう」


 確かに、昔ながらの遊園地のお化け屋敷という感じはする。作り物感しかないお化けの人形が飛び出して来るだけだ。

「ほら、怖くないでしょ?」

「ああ、うん」

「これじゃあ、きゃあ怖いって抱き着く作戦が出来ないよ」

「元々、そんなキャラじゃないだろ、染井は」

「まあ僕、紗夜ぴょんとそんな絡みないし、どんなキャラかはいまいち分からないんだよね」

「そんな関係性なのに、気軽に紗夜ぴょんとか呼べるのがすごいよ」

「好感度とか気にせずに、あだ名とか付けれるタイプ」

「そうだった、お前はそういう奴だった」


              ◇


「ぜ、全然怖くなかったね」

「そうだね」

 怖かったら、手くらい繋いじゃおうと思ってたのに! アイスランドくしろのバカ!

「次は何乗る?」

「シューティングとかやってみたいかな」

「うん」

 私は全然当てられなくて散々だったが、有明君が「気にすることないよ」と言ってくれた。


              ◆


「おっ、シューティングに行くんだね。腕が鳴るぜ!」

「雪兎、鉄砲系得意だもんな」

 雪兎は最高得点を叩き出し、電子版に載った。

「次は、とうとう観覧車に行くみたいだね」

「そろそろデートも終盤か」

「観覧車の頂上でキスとかしちゃったり?」

「わあ、生徒の不純異性交流だ! でも許す!」

「テンション上がってきた!」


              ◇


「最後に観覧車に乗ろう」

「うん」

 最後、という言葉に名残惜しくなる。

 有明君は楽しんでくれただろうか。

 有明君と向かい合って座る。

「有明君、今日はありがとうね。私と一緒で楽しかった?」

「うん。楽しかったよ」

「ありがとう。良かったぁ」

「ん? ちょっといい?」

 有明君が立ち上がって、私の方へ身を乗り出した。

 え? ちょっと、まだ心の準備が~。


「先輩!」

「へ、先輩……?」

 後ろを振り向くと、雪兎先輩と春ちゃんが後ろのゴンドラから、窓に張り付いて、こちらを見ていた。

「え、え~」

 

 観覧車を降りると、有明君は、次に降りてくる雪兎先輩と春ちゃんを待ち構えていた。

「あははぁ、バレちゃったぁ」

「いつからですか?」

「最初からかな」

「すまん。バス乗るところから」

「デートの後付けるとか、どんだけヒマなんですか」

「だって気になるじゃん」

「ごめん」

「全くもう先輩達は。染井さんもごめん」

「え、有明君が謝ることなくない?」

「そりゃそうだ。先輩も反省して下さいよ」

「はいは~い」

 本当に反省するのかな? 分かんないけど。

「初デート記念にさ、何か買いなよ」

この提案はナイスだった。

二人で記念のネックレスをお揃いで買った。


ネックレス、一生大切にするね。


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