アザラシとコーヒーカップ

「可愛い!」

 私達はアイスランドくしろの水族館で、アザラシを見ていた。

「うん」

「次はペンギンを見に行こうよ」

「うん」


            ◆


「ここでも、あまり会話弾んでないな~」

「アザラシも丸々太って美味しそうだね、とか言っても良さそうなのに」

「それは、どうなんだ?」

「ゴールデンカムイのアザラシ回見た?」

「ごめん、見てない」

「僕のめっちゃおススメ」

「分かった、時間できたら見るよ」

 吉野達は遊園地エリアに行くみたいだ。


            ◇


「有明君、何から乗る?」

「染井さんが乗りたいやつからでいいよ」

「絶叫系以外なら何でもいいよ」

 アイスランドくしろのジェットコースターは昔乗ったことあるが、ここで自分は絶叫系がダメだと気付いた。このレベルでダメなのだから、何処へ行ってもダメだろう。

「じゃあ……、コーヒーカップとか」

「うん」

 無難なチョイスだ。


 有明君はコーヒーカップも程よく回してくれた。

 ぐるんぐるんに回し過ぎて、女の人が怒ってるカップルもいたから、余計に有明君が彼氏さんで良かったと思う。

 有明君が彼氏さん、私の。

 その響だけで嬉しかった。


             ◆


「雪兎! 回し過ぎだ! し、死ぬかと思った」

「いやぁ、せっかく来たんだから楽しまないと!」

「よ、吉野達は……?」

「昼ご飯にするんじゃないかな。レストランに入っていくよ」


              ◇


「何食べる?」

「オムライスかな」

「私はカレーライスにするね」

 食券を買って、料理が出来上がるのを待つ。

「今日はありがとうね」

「うん」

「オムライス好きなの?」

「うん、まあそれなりに」

 いつか私の料理を食べてもらいたいと思う。

「一番好きな食べ物って何?」

「一番は難しいな。けっこう何でも食べれるかな」

「甘いものとかは平気?」

「うん。大丈夫」

「今度、サッカー部の皆に何か作ってあげようと思うんだけど、どうかな?」

「きっと皆、喜ぶと思うよ」

「うん、楽しみにしててね」

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