有明君と私 ~ドキドキ! クリスマスデート~

待ち合わせ

今日は有明君と遊園地デート。

 楽しみ過ぎる。

 家で一番可愛い服を着て、お父さんには友達と出かけるって嘘を吐いて、外に出た。

 彼氏なんて認めてくれそうもないから。

 修学旅行で告白をして、早や一か月。

 クリスマスに初デートすることが叶った。

 嬉しい嬉しい嬉しい。


          ◆


「春ちゃん、事件だよ!」

「な、何だ⁉」

「吉野と紗夜ぴょんが今日デートするんだって~」

「それは事件だな!」

「早速、見守りに行こう!」

「おう!」


          ◇

 

 バスで待ち合わせ場所まで向かう。

「有明君!」

 先に有明君が来ていた。待ち合わせ10分前。

「早いね。待たせちゃったかな?」

「いや、全然」

目的地の「アイスランドくしろ」までは、またバスを乗り換えて行く。

「じゃあ行こうか」


          ◆


「どこ行くんだろうな」

「釧路市のデートスポットなんて限られてんじゃん。動物園かアイスランドかイオンの三択だよ。で、このバス路線に乗ったってことはアイスランドくしろに向かってる」

 俺と雪兎はバレないように、帽子とメガネ、マスクで変装し、バスに乗り込んだ。

 吉野達の3席後ろに座り、会話を聞く。

 

 あれ? 吉野って、こんなに話せない奴だったか?

 天気の話をしてから会話がない。

 いつもの俺達との面白会話は何処へ?


         ◇


 か、会話が続かない……。

 こんな沈黙ばかりで、有明君、嫌じゃないかな。

「アイスランドくしろって初めて行くな。染井さんは行ったことあるの?」

 有明君が話してくれた。嬉しい。

「子どもの頃に行ったことあるよ。この季節はイルミネーションが綺麗なの」

「へえ、楽しみだな」


         ◆


「雪兎は行ったことあるのか、アイスランドくしろ」

「そりゃあるよ。まだ両親がいた頃だけど」

「ごめん」

「いいよ、別に」

 雪兎の暗い部分を、どう回避するのか、俺はまだ攻略出来ていない。

  

 いつの間にかアイスランドくしろ前に着いた。

 アイスランドくしろは小さな水族館と遊園地が合わさった施設だ。この時期はイルミネーションもあることから、カップルで程々に賑わっていた。男二人は、あまり見かけない。

 吉野と染井は、先に水族館の方に行くようだ。付いていこう。

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