奈良公園

また夜7時までに旅館に着いて、夕食を食べる。

 奈良の旅館にて。

「で、どうやって告白したんだよ」

「どうって、告白は染井さんからだよ」

「何て」

「えっと、シンプルに『好きです。付き合って下さい』だよ」

「シンプル・イズ・ザベスト!」

「それでOKした訳だ」

「いや~、染井さん可愛いもんな~、そりゃOKするよな」

 最初は俺と染井さんの話で持ち切りだったのだが、途中から話題が変わった。

「そういえば、長月はどうなんだよ」

「好きな人とかいるのかよ」

 結弦の恋バナか、確かに聞いたこと無いな。

「ああ、俺彼女いるから」

「えええええええええええええ⁉」

「何でそんなに驚くんだよ、吉野」

「誰だよ!」

「誰って……。お前ら知らないよ」

「遠距離ってやつか」

「うん、まあそんなとこ」 


 

 三日目は奈良公園。

 告白をされ、それを受けた俺は染井さんと晴れてお付き合いをすることになったのだが、何しろ初めてなので、どうすればいいか分からない。

 何となく染井さんの隣に行ってみる。

「あ、有明君! 鹿せんべいとかあげてみる?」

「あっ、うん。中々ない機会だし、あげてみようかな」

「うん」

 鹿せんべいを持った人間を、鹿は包囲して容赦なく「くれくれ」と言ってくる。俺も染井さんも、それには、たじたじになってしまった。その様子を菱川が面白がって動画に撮っている。

「二人の共同作業は鹿せんべいかぁ」

 先輩が学生に混じって、普通にいる。

「先輩、助けて下さいよお」

「鹿せんべい、あげ終わったら自然と離れていくよ」

 確かに、その通りだった。現金な鹿達だ。


 その後、東大寺や春日大社を見て、俺達の修学旅行は終わったのだった。


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