告白

修学旅行をどう乗り切るか。

 二年生のこの一大イベントをつい最近まで戦々恐々と待っていた。ぼっちで二泊三日の旅行は辛すぎる。周りは友達と楽しんでいるのに自分は一人。一人の方が楽、孤独を愛している、とか言いきっているメンタルなら大丈夫だろう。しかし俺は口先では強がっていながら、本音は友達がほしいのだった。

 長月結弦と友達になって、サッカー部の皆とも打ち解けて迎えた修学旅行。

今日はサッカー部で京都巡りをする。

楽しい! めっちゃ楽しい!


 先輩と先生は嵐山に行くらしいが、俺達は京都中心部を周る事になっている。

 能見が、新選組が好きらしいので、壬生寺や屯所跡に行った。実際の刀傷とかを見て、興奮する能見。俺は平和主義者なので、斬り合いとかは勘弁だった。

「有明君は新撰組とか好き?」

「いや、俺はそこまで詳しくはないけど、ドラマとか映画でなら見たことあるよ」

「そうなんだ。私、名前くらいしか詳しく知らなくて」

「俺の推しは鬼の副長・土方歳三だな! カッコいいし」

 新撰組オタクの能見が話に入って来る。

「お、鬼?」

「隊の規律を破る奴は切腹なんだぜ」

「怖い」

 何故、能見がそんな怖い土方歳三推しなのかは分からないが、新選組は男のロマンって奴なのかもしれない。


 次は清水寺に行った。

 丁度、紅葉の季節だったので、絶景だった。

 近くのカフェで抹茶パフェを食べた。

「美味しいね、有明君」

「そうだね」

 俺達二人のやりとりを正面に座った結弦が、にやにやと笑っている。

「どうしたんだよ」

「いや~、別にぃ」


最後に京都タワーに着いた。

皆でエレベーターに乗り、展望台から京都の街を見下ろす。

気を利かしたのか結弦が俺と染井さんを残して、先に降りていった。

「あとは、ロミオとジュリエットで、ごゆっくり」

 いくら鈍い俺でも、この後の展開は予想できる。

「あのさ、有明君」

「何?」

「私、有明君のことが……」

「うん」

「好きです! 付き合って下さい!」

 シンプルに分かりやすい告白だった。

 俺の答えは……。

「うん。ありがとう」

 断るという選択肢はなかった。断った先の、彼女の悲しい顔を見たくはなかったから。

「おめでとう!」

 何処からか先輩が湧いてきた。

「いや~、カップルだねぇ」

 染井さんが顔を真っ赤にしている。

 三人で京都タワーを降りていくと、結弦達が驚いていた。

「雪兎先輩⁉ 何で」

「いや~、そろそろ吉野も告白されるかと思うと、ワクワクが止まらなくてねぇ。来ちゃった」

「で、どうだったんですか⁉」

 何故か雪兎先輩がⅤサインをする。

「わ~、おめでと~」

「やったな! 吉野!」

 サッカー部一同から祝福され、二人とも真っ赤になってしまう。

「よし、春ちゃんにも連絡しよう!」

「今日は祭りだ~」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る