さねちーの講演


 毬藻高校十周年記念講演会。


 そんなイベントが今日、行われる。

 うちの学校も、そういえば十周年だったか。

 基本的に、そんな感じの認識である。

 体育館に集まり、パイプ椅子に座る。

「司会が春ちゃん先生で、ゲストが、あの社長さんか~。やっと見れるな!」

 結弦が当たり前のように、俺の隣に座る。

「さねちーの講演、楽しみだよねぇ」

「へ、先輩⁉ 何でいるんですか⁉」

 隣の席に、いつの間にか先輩が座っていた。

「だって、一般参加OKじゃん」

 確かに、生徒の隣に保護者が座ったりもしているが。

結弦と先輩に挟まれて、式典が始まった。


 毬藻高校の創立から、主な出来事を振り返るムービーが流される。その中には、サッカー部の全国優勝のことも触れられていた。


「はい。皆さん、こんにちは。二年生、国語担当の薄桜春です。今回は、毬藻高校OBの私が司会を務めさせていただきます」

 先生が若干、緊張しつつ、式次第を話す。

 その後、校長やPTA会長の話、吹奏楽部の演奏が行われた。

 そして、俺達にとってのメインイベント。

真葛秋人講演会。

講演会と言っても、真葛さんが一人で延々と喋る訳ではなく、司会の先生が相槌を打ったり、質問をしたりしている。先生の緊張も幾分か解れてきたようだ。


「こんにちは。ここのOBで真葛コーポレーション所属の真葛秋人です。今回は、このようなめでたい式にお招きいただき、ありがとうございます」

 真葛さんは学校での思い出、どのように会社を作ったのかを語った。


「文化祭の時に劇やって、そのDVDを売ってボロ儲けしたら怒られました」

「ああ、ありましたね、そんなことも」

「僕も意外とやらかしているんですよ。その度に土下座して乗り切ってました」

「出た! 学年トップの土下座!」

「皆さんは真似しないで下さいね」


「会社を興すにあたって、大切にしたことはありますか?」

「実現可能な夢ならいくらでも見て結構! 明確なビジョンを持って周りを説得する! 自分が信じた道を諦めないで!」


 新進気鋭の社長の言葉は、高校生達の心を打ったのだった。

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