第61話 プレンズの実力

 プレンズが本領を発揮するのは回復能力において。

 プレンズが動けなくなったあの場で、本来一番の使い手はプレンズ本人だった。


「さて、それじゃあ魔法の方を試してもらおうか。特に状態異常についてだ」

「試すというのはわかったのですが、実際にどのようにされるのですか? 今は誰も治せるような状態ではありませんよ?」

「その疑問はもっともだ。魔法によって治せるか試すなんて、誰かがかからないとわからない。ただの治癒ならケガを治せばいいが、麻痺や毒はそうそうなれない。だが、魔属性の魔法なら多少の異常はかけられる」

「魔属性……普通の人では扱えない魔法ですよね?」

「らしいな」

「やはり、魔獣の使い手という話は本当だったのですか?」

「それはそうだが、今回使うのは俺だ」

「すごいです! ルカラ様が使えるなんて。しかもその様子を拝めるなんて、感激です」


 さて、目を輝かせ喜んでくれているが、王族独自の回復魔法を使えるプレンズも十分すごい。

 事実、クリア後解放キャラなだけあり、回復面で見たら聖属性の完全上位互換。最終ステータスこそ突出していないが、邪神戦でいてくれたらどれだけ助かるかという存在。


 呪いで封じられたという状況になればプレンズの力は使えないが、プレンズを封じれば俺が直せる。

 それに、邪神の力もそうぽんぽん打てるものでもない。せいぜい直近ならあと二発くらい。それも、治せるとわかっていてプレンズに使うことはないだろう。

 そうなれば、あとは倒すだけ。普通のデバフがめんどいだけの邪神。


 さあ、プレンズの実力。披露してもらうか。


「ユイシャ」

「何? ルカラ」


 人混みに向けて手招きするとユイシャが駆け足で来てくれた。


「色々と魔法をかけていく。苦しいかもしれないが、俺としては一番信頼してるからこそ頼めることだ。やってくれるか?」

「ルカラ…………」

「……一番信頼……」

「ん?」

「い、いえ。なんでもありません」


 何かに浸ってなかなか答えないユイシャに変わり、ぼそっと言ったプレンズの言葉が気になったが、なんでもないらしい。

 そんなことを考えていると、ユイシャは天を仰ぎ出した。


「わたしは大丈夫だよ。ルカラ。とうとう、とうとうわたしの気持ちをわかってくれたんだね。やっぱり、あの時かな? さあ、来て!」

「いや、そうじゃない」


 ユイシャはいきなりハグでもするように両手を広げてきた。

 今から状態異常にかかるというのに、どうしてこうもノリノリなのか。加えて、まだ何もしていないのに、はあはあ言っている。ユイシャだからか。


 プレンズもさすがに何も言えなくなっている。

 これは早めにやらなくては。


「それじゃ、このユイシャに状態異常をかけていくから、プレンズ、治していってくれ」

「は、はい。わかりました」


「『ダーク・ポイズン』」

「ああっ!」

「『ポイズン・ケア』!」

 どうやら、毒は簡単に治してしまったようだ。


「『ダーク・パラライズ』」

「あう!」

「『パラライズ?・ケア』!」

 麻痺も治すか。


「『ダーク・バーン』」

「うあっ!」

「『バーン・ケア』!」

 ほう、火傷まで。


「『ダーク・コンフュージョン』」

「あ、あれ、クラクラする」

「『コンフュージョン・ケア』!」

 混乱も治すか。


 なら、


「……? はあ、はあ。ルカラぁ……」


 無詠唱。状態異常。重ねがけ。


 あまり活躍の機会がないから、俺としてもうまく使えているかわからないが、プレンズはこれに気づくか?


「これは……『オール・ケア』!」

「はあはあ……え、あ、あれっ?」


 普段とは違う息の荒さからユイシャの状態を見抜いたのか?


 そこまで長いこと接していたわけではないはずだが、変化を見抜く観察眼。見事だな。


 やりづらかったが、涙目になって頬を赤くしながら、さらなる状態異常を求めるような顔をしてくるユイシャ。

 内にいるルカラの嗜虐心が刺激されるが、いかんいかん。


 ユイシャを気遣って軽度にしておいたが、どれも初級魔法で完全に回復されてしまったようだ。

 プレンズの実力は本物。イレギュラーによる加入だったが問題なさそうだ。


 まあ、ここまでの実力だと邪神の呪いも自分で治せただろと言いたくなりそうだが、小学生に緊急対応を求めるのは酷だ。

 そもそも邪神は最大の警戒で力を封じるようにしてきていたのだから使えなくさせられているというものだ。


「さすがプレンズだな。実力はどれを取ってもバッチリだ」

「ありがとうございます!」

「え、もう終わり?」

「これ以上続けるわけにはいかない。もうユイシャもボロボロだからな。休んでおけよ?」

「……! うん!」


 なんかやたら嬉しそうにプレンズに治してと頼み出したな。






――――――――――――――――――――

【あとがき】

読んでくださりありがとうございます!


新作を書きました。


「キセキなんか滅んでしまえ!〜ようやくドロドロに溶けた肉体が戻ったと思ったら、美少女と肉体が入れ替わっている〜」

https://kakuyomu.jp/works/16818093078003870075/episodes/16818093078434506059


よろしければ読んでみてください。


よろしくお願いします!

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