パンデミック後の想像できる最悪で最良の結末の一つにすぎないこと 

 パンデミック終息の為、世界中の大手製薬会社が国の支援を受けて、これまで認可されてこなかったRNA型のワクチンを製造した。

 RAN型は理論上では効果が期待できるが生体実験の安全性が証明されておらず二十年以上も保留されてきた。

 しかし急激な感染拡大と早急な終息を望んだ各国政府は安全性より経済活動を優先することで認可し接種を奨励した。

 一万人に一人が死のうが残りの九九九九人が助かればその一人は喜んで生贄になってくれるだろうということだ。

 接種は順調に行われた。想定通りの死亡者も出たがマスコミをはじめ政府も騒ぎ立てることも警告もすることなく、以前は言ってなかった「希望する人全員に」という免罪符を連呼し自己責任で対応した。

 ワクチンの副作用で死のうが交通事故で死のうが、災害で数万人が死のうが国にとっては同じ価値観でった。

 接種対象は一二歳以上になり、高齢者への接種が終了してから約一年かけて希望者へワクチンが完了した。もちろん子供は親の希望に沿う形になり本人の希望などは関係なかった。

 

 それから二年が経ち、若者の間からからまことしやかな噂が聞かれるようになった。

 特に若い夫婦からは「妊娠しなくなった」「生理が少なくなった」とか、「風俗が経営難のようだ」「アダルトビデオが売れていない」などいうものも。

 避妊をしなくても子供ができない、もしくは男性の性欲が減退しているという噂だ。

 それらは個人差があることで噂の域が出ない話ばかりなので、実際に統計や検証をすることは無かった。

 しかし現実の数字として出生数にはっきりと現れた。

 ワクチン接種の翌年から全国で数百人しか生まれていないことを政府が正式に発表した。

 以前から医療関係者の間で出産が少ないという印象はあったようだが、それが全国規模であったとは思ってもいなかった。

 しかもそれが世界中で確認されている事実も確認された。

 原因を調査するために医療分野はもちろん環境科学、心理学などあらゆる方面から検証された。

 しかし結論として導きされたのは生殖遺伝子の変異ということになった。

 原因として考えられるのがパンデミック時のワクチン接種しか考えられなかったが、誰もはっきりと言い出す人間はいなかった。

 しかし人々は気づいていた。

 「ワクチン接種でそうなったんだ」と。

 避妊をしなくてもいいということで避妊具の売り上げは落ちた。

 しかし性感染症や性交などで罹患する疾病が急激に増加した。

 妊活や不妊治療が盛んになったが効果がなく、神仏など宗教にすがる人達が増えた。

 離婚も増え女性の就職環境にも影響が現れた。

 LGBTQの人々からは戸籍上の婚姻関係を認めるようという運動が起こったことで、これまで生産性などと拒んできた国も認めざるを得なくなった。

 そしてパートナーとして男性の価値はお金を稼ぐことしか期待されなくなった。

 稼げる女性は男性に優しさを求めたので、どれも持ちあわせていない男は例えイケメンであっても相手にされなくなった。

 これらの状況が十年続いた。世界は接種していなかったパンデミック当時に十二歳未満だった人々に期待した。

 実際彼らは以前のように出産ができていた。

 これによって人口増に期待できるようになったが、同時にワクチンが不妊の原因だということが証明されたことになった。

 しかし先進七カ国政府は共通して「不妊は環境問題からきている、C国の原発から漏れ出した放射性ガスの影響だ」と結論付けた。

 その国はパンデミックの原因だったこともあり世界共通の憎悪対象として世論形成の的となった。

 それを黙って見ているC国出なかった。

 秘密裏に再び新型ウイルスとワクチンを開発するということで対抗した。

 この状況がそれから何回も繰り返され、人類は半減することになり温暖化は解消されることになったのはまだ先の話だった。

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