東京裁判 令和
三年前の東京五輪で世界的な感染爆発が起き、先進国はもちろん医療体制が脆弱な国々までも人口が半減することになった。
欧米を主体とする国々は日本の責任を問うために新しい連合国の枠組みをつくって日本を包囲した。
当然その中に日本は入っていない。外れたのは日本と中国だけだった。
連合国は太平洋戦争時の極東裁判のごとく、当時の日本政府の責任を明らかにしようとした。
二人の総理経験者、関係大臣はもちろんアドバイザーとされたスポンサー、報道機関など総勢千名以上を拘束した。
政治家官僚は東京拘置所に、民間人は府中刑務所に収監された。
太平洋戦争時は天皇の責任が審議されたが、今回は明確に反対をしていたという事実があるので一切問われることなかった。
裁判はすみやかに行われたが人数が多いこともあり一年以上を費やした。
その結果、総理経験者は終身刑、大臣は懲役三十年、スポンサーは罰金一兆円を分割、報道機関は放映時間の半減と特派員の追放となった。
当時のパンデミック初期の元総理収監前の会見が残っている。
「あれは中国が仕掛けたものだ、日本は被害者に過ぎないのに何故僕個人の責任を問われるのか理解できない。
どさくさに紛れて妻までも収監されている。
納得いかない、日本国民を信じている」
などと言ったが、日本国民の誰もが当然の結果として溜飲していた。
二人目の元総理はこう言っている。
「私は先輩議員の顔を立てていただけに過ぎない、関係利権を守り日本の経済を守った功績を無視している。
感染で亡くなった方は残念だが、高齢者はコロナでなくても遅かれ早かれ亡くなる。
年金財源を改善したのは未来の日本の為になるのではないのか。
学者たちがよけいな事を言ったりしたから中途半端な五輪になったのは間違いないのだ。
全てを政治家に任せておけば最小限被害で収まっていたはず。
責任を取らせるなら分科会の連中だ」
長いものに巻かれすぎて他人の考えより自分の利益しか目に入らなかった人間が最後に言った言葉として歴史に残った。
国民は悪質な政治家、官僚、企業を生み出してしまった従来の学歴重視社会の見直しを考えるようになった。
幸い、裁判を主催した新しい国際連合は日本を改造するこことで意見がまとまっていた。
手始めに不都合な条項が書かれている憲法を改正した。
以前から差別的とされていた夫婦別姓と同姓婚を認め、教育と就職の価値観の改善を大幅に見直し、利権重視の風潮、世襲、親族議員を条件付きで禁止した。
世襲はコネを継ぐことと同じなので利権の温床となっているゆえにだ。
しかし議員活動以外に収入が無い政治家が急死した場合に限って立候補は認められた。
あとは選挙民しだいになる。
五輪で日本は滅亡の危機に落ちいったが、その後の日本が世界でも手本となるような国となるきっかけで、人間万事が塞翁が馬(SAIOUGAUMA)という言葉が世界に流行り出したのはまだ先の話だった。
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