宇宙人が来てから・・・
宇宙人がやってきた。
彼らは僕らに「自動車」と「飛行機」というものを教えてくれた。
これらは便利な移動手段としてすぐに広まった。
しかし普及するにつれて自動車での事故死が起きるようになった。
飛行機はめったに事故が起きないが一度に死ぬ数が多かった。
自動車と飛行機を禁止にすべきという声が挙がったが、賛同する人は少なかった。
当たり前のように生活に馴染んでいる、今更元の不便な生活には戻れないと。
事故死だろうが病気だろうが、いずれ死ぬのだから。
不運な一部の事故死者のために他の多くの人々が不便に暮らすことは許されないという。
僕らは自動車と飛行機と共存していくことになった。
相変わらず事故死はなくならない。
でも身近な人が事故に遭ったことはないのだから平気だろう。
再び宇宙人がやってきた。
今度は「電気」というものを教えてくれた。
暗いところでも明るくなり、便利な機械が生まれた。
電気は核分裂というエネルギーで作られる。
宇宙人たちは核融合という別の方法でやっているようだが、僕らには時期早々だという。
発電所は事故を起こすと周囲を汚染させた。
多くの死者が出たことで電気を禁止すべきという話が生まれたが反対が圧倒的に多かった。
長い間宇宙人が来ることがなかった。
僕らはそろそろ来て何か新しいことを教えてくれることを期待していた。
しかし彼らはいつまで経っても現れない。
もう来ないと諦めて宇宙人のことなど忘れていた。
でも宇宙人は何度か来ていた。
新しいモノと一緒に。
新しいものは僕らの目には見えないものだったので誰も気付かなかっただけだった。
それはウイルスだった。
ウイルスは僕らの生活が便利で活発なほど死者を増やしていた。
楽しいことを我慢しておとなしく生きていれば感染のリスクは少ないそうだ。
でも僕らは便利で楽しい生活を捨てることはできなかった。
一部の感染者のために我慢などできない。
自動車や飛行機と同じだ。
いずれ死ぬのだから、死ぬ時まで楽しく生きるべきだ。
僕の周りに自動車や飛行機でもウイルスで死んでいる人はいない。
たぶん大丈夫だろう。
全ての人が同じように考えていた。
そして僕らはウイルスとも共存していくことになった。
宇宙人が来た。
今度は何を持ってきたのだろうか。
あと何回ぐらい宇宙人は来るのだろうか。
僕は長生きしたいと思った。
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