変異株発見 スムーズな入国禁止の裏で

 ここはある国の大統領の執務室。 

 部屋の主と閣僚たちが和やかに談笑していた。


 「しかし今回の手際はスムーズににいきましたな」

 

 最初に口を開いたのは交通関係の大臣だった。


 「それはもう入国禁止が発令されるまで2日間しかなかったのですから、本当にギリギリでした」

 

 それに答えたのは外交関係の大臣だった。

 そう彼らが話しているのは新型感染症の新たな変異株が国内に入ることを防ぐための水際政策として緊急に発令した外国人入国禁止措置のことである。

 そして発令寸前で入国してきた外国人から早速変異株が発見されたという知らせがたった今入ってきたところだ。

 

 「前政権では結果的に水際が機能しなくて政権の無能ぶりがろていしましたかな。現政権が有能であることをアピールするにはもってこいでした」


 「それにしてもタイミングよく感染者がすぐに発見できてよかったですな。これで早すぎたと文句を言われることも無いうえに瞬時に決断できると国民は思ことでしょう」


 「まあそうだが、もしかしてたまたま発見できたとおもっているのですかな」


 外交大臣は得意そうに交通関係大臣に言う。


 「今回は会えて感染して無症状の外国人を派遣してもらったんだよ。ほら外交官だという情報があっただろう。ついでに同じ機内にいた人々もほとんどは協力者として隔離に報酬がでることになっている。もちろん支払いはその国であるがね」


 「そうだたんですか、いやはやおみそれしました」


 「まあ大したことはやっていない。変異株と言っても本人はワクチンを2回接種済みというから。むしろ医療が進んだわが国で治療ができることで安心しているようだよ」

 

 これでその国との関係はより密接になって行く。お互いに助け合うという姿勢が我が国からの一方的な搾取でないことへの布石となるわけだから。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る