革命のきっかけは

この一見平和な我が国でレジスタンスとかパルチザンなんて現実的じゃないと思うだろう。

 僕も昔はそうだった。

 世界全体が感染症で混乱し、大規模な戦争や災害が頻発。

 破滅的な未来しか思い描けないのは何もZ世代だけじゃない。

 政府は胡散臭い知識人と言われる人間を持ち上げている。

 研究実績もない見た目だけの人間。

 風変わりな眼鏡をかけて過激な発言をしてバズるネットのバカッターのような人間。

 最近では高齢者手段自決とか安楽死強制とか言っている。

 もうそれは差別とかの話ではなく虐殺を目的とした優生思想だ。

 金持ちを優遇、労働者は低賃金。

 出稼ぎ労働者が来る国だったのが、出稼ぎに行く国へとなって久しい。 

 海外へ行けるのはまだいい。体力のある若者ならば10年くらい耐えられるだろう。

 そんな彼らでも40歳を超えてしまえばどうなることだろうか。

 

 きっかけは些細な事だった。

 国民総番号制というものがある。

 当初は任意性だったものが、10年経っても普及が進まないことに政府がキレた。

 最初はポイントを付与したがさほど増えず。

 自治体によっては給食費減免を人質にとってメリットどころかデメリットを押し出している。

 当人たちにしてみれば普及率で補助金が決まるということだから必死なのはわかるが、民を生贄にしていることは変わらない。

 そして施行ギリギリになって国は禁断に手を出した。

 それは国籍の剥奪。

 国民番号は既に交付されているのに、カード登録をしないだけなのに剥奪されるという。

 国としてはカードで日常生活全般に利用し、国民の行動や消費履歴、税金など金の動きをデータとして得て、それを外部に売るなどをして政権基盤を確かなものにする目論見。

 これが完璧に管理運営されれば問題ない。

 しかし原子力発電など絶対安全と言われ続けていたものが次々と裏切られている現状で誰が信頼に値するのと思うのか。

 公的機関ではファックスが現役だというし、フロッピーで保存したままという。

 むしろ旧世代のほうが事故が無いような感じだが、絶対的なシステムの保守ができない国に担保は無い。

 僕のようにカード登録を拒否をして国籍を剥奪され、居住権のみで暮らしている国民は少なくない。

 パスポートが作れず、国民としての各種権利が制限された。

 僕らは最初ネット上で繋がっていたが、カード未登録者にはSNSの制限がかけられた以降、海外の裏サイトに移して活動を行っている。

 この国には自浄作用が無いので、海外ネットはむしろ都合が良くなった。

 賛同してくれる海外のネット民の多くは非合法に慣れているようで、色々とアドバイスをしてもらっている。

 これから僕たちの戦いが始まる。

 でも将来の子供たちの為という一般的な目的ではない。

 国へ報いを受けてもらう。

 追従した全ての国民にも。

 そして新しい国を創るために。

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