貧困若者を自衛隊にリクルートした件

 どうも最近になって自衛隊への入隊希望者が激増しているようだ。

 ここ何年も数千人単位で人員不足が深刻化していたのにだ。

 少子化や文化の変化のせいでもあるので仕方ないと政府は半分諦めていた。

 しかしここにきて急増した背景は何事かと。

 簡単なことだ。

 単純に若者が貧困になったにすぎない。

 衣食住が保証されて金利も巷より有利になっている。(最近は金利が下がったようだが)

 続々と入隊してきたので配属が全国的になっている。

 北海道で採用されたのに九州にとかが珍しくない。

 ようは景気が悪い地域では比例して若者が困窮しているので、どうしても多くなる。

 ひと昔なら、自動車製造の関係の季節工員とかで集団就職を斡旋していたのだが、最近は少ないようだ。

 見た感じ体力、気力がなさそうなものでも合格している。

 戦前なら不合格になっているような。

 政府の採用条件の最低ラインは歩けて指が動かせればいいという。

 つまり歩兵としての能力さえあればいいのだ。

 それには理由がある。

 数か月前から欧州で戦争が始まっている。

 しかも日本の海を挟んだ隣国がやっている。

 現状は一進一退で、終結がどうなるのか予想できない。

 最悪のシナリオでは、国境を接している国を巻き込んで戦地を拡散させるという。

 つまりかの国が日本にも侵攻してくる可能性が出てきた。

 もちろん奇襲などは同盟国の存在で不可能であるが、上陸されれば数の有利で戦況が変わってしまう。

 政府は最前線にまるで特攻兵のように新入隊員を送り込もうと考えているふしがある。

 元々困窮若者は税金を食いつぶすだけで経済発展には寄与しない家畜以下と思っている。

 この際に国の為に命懸けで頑張ってもらおう。

 死にたくなければ上手に攻撃をすればいいし勝利につながる。

 たとえ全滅するようなことになっても合法的にしかも英雄的に処分ができる。

 願ったり叶ったり。

 未熟な歩兵でも扱える強力な携行武器は同盟国が用意してくれている。

 体力が無くても引き金さえ引ければ充分な成果を得られる。

 優性思想を国の信条としてきた与党の党是は表立って知られてはいない。

 しかし支援団体やその他のしがらみから想像はたしかなこと。

 長い時間をかけて不景気にしてきた目的がようやく30年経って実現しそうになった。

 できのいい人間、富裕層だけの社会ならば犯罪も起きず世界に通用するどころか支配できると。

 だから日本は今回の欧州戦争をチャンスとみている。

 戦争開始時に部隊の配置を大幅に変えていた。

 名目上は仮想敵国の上陸と新しい戦略を踏まえてのことのようだが、実際は新人歩兵をうまく運用するためである。

 選挙後は更に大規模な採用と防衛予算の上昇を得られるだろう。

 これが政治というものだというのは代々政治家として生まれてきたほとんど代議士の共通の伝統として教えられてきている。

 だから誰もそれが善だと疑っていない。

 隊員が死んでもしっかり祭ってあげればいいのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る