模倣犯サイトのオフ会

ついに第一回のオフ会が開かれる。

 仲間が集まり各自が得意なことで人生の花火を打ち上げようと集まった。

 コスプレが得意な人、金属加工ができる、木工や3Ⅾモデルなどの造形、火薬や銃器、薬品に精通などなど。

 僕が設計図を作り、各自に部品を作ってもらう。

 そして今日集まって組み立てる。

 テストをして不具合を確かめるのが第一回のテーマ。

 第二回目でテストをし三回目が実行日になる。

 

 会場は駅近の公園にした。

 当初は公民館のような室内を考えたが、不都合な事態になった時に解散や被害が少ないことを考慮した。

 集合時間は朝の6時にした。

 ちょうどラジオ体操が始まるので、それにかこつけて集まっている体になるはず。

 皆には早くても30分前からとして、不自然じゃない行動をお願いしている。

 服装も動きやすいもの、犬を連れて来ても可能、むしろ歓迎。

 

 時間になった。

 およそ30人ほどがいる。

 ラジオから音楽が流れ、それに合わせて体操をする。

 終わってからが本来の目的が始まる。

 それぞれが担当の部品を持ち寄り評価しあう。


 「よくできているじゃないですか」

 「いやー、苦労したんですよ」

 

 「思っていたより軽いですね」

 「素材強度を上げたので薄くできました」


 「ネジは市販品ですが問題ないですよね」

 「大丈夫ですよ、しっかりハマっていますから」


 自分の担当と直接関わる人達で輪ができている。

 そしてそれぞれが合格していると判断したら僕の元へと持ち寄る。

 僕はそれらの部品を素早く組み立てる。

 部外者に覗かれないように皆が囲む中での作業になる。


 「うん、うまく組みあがりました。

 それじゃあ場所と時間は後でお伝えしますのでこれで解散とします」


 時刻が7時を回ったくらいで皆はそれぞれ別方向へ帰っていく。

 第二回オフ会は今夜の7時にするつもりだ。

 遠方から来ている人もいるので、できる限り当日中にやりたい。


 陽が落ち薄暗くなっている団地近くの河川敷。

 既に昼間のメンバーが集まっている。

 そして誰からともなく花火に火を点けている。 

 傍から見たら花火を楽しんでいるだけだろう。

 僕もその中に混ざりながらカバンの中から出来上ったものを取り出す。

 一見するとSF映画の小道具に見える。

 そう、これは小型化に成功したレールガン。

 強力な電磁エネルギーを一瞬だけ発生させて弾丸を撃ち出すことができる。

 発射音はサイレンサー付きの銃より静かで火花も煙も出ない。

 火薬も使わないしクロスボウ等のように銃刀法に抵触しないはず。

 道具的には只の電磁石に過ぎない。

 ベースは充電式インパクトレンチを参考にしている。

 

 花火の灯りで皆にお披露目をする。

 そして試射をするために弾を装填する。

 川面に向かって一発。

 音がしないので迫力が無いが、空気を切り裂く音がするので威力は確かめられる。

 

 「すごいですね、想像以上の仕上がりになっている」

 「苦労したかいがありました」

 「自分のしょうもない知識が役に立つとは思いませんでした」

 「一度は畳んだ工場の機械を動かすことができてよかった」


 皆はそれぞれの感想を言い合っている。

 

 「さて、これからはこれを量産していきます。

 皆さんはまだまだ休めませんよ。

 人数分のガンを揃えてから本番ですから」


 「そうですね、頑張りますか。なあみんな」

 「暇じゃないほうがいいですよ」

 「生きる目標があるっていいですね」

 「最後まで協力します」


 そう、本番は今度の国政選挙。

 国とその関係者に人生を狂わされた僕らの人生の集大成。

 別に革命とか義勇でもなんでもない。

 でもやらなくてはいけない思っているだけ。

 大義もない蛮行だが、大義と言って民を犠牲にしてきた奴らに比べたらどうだろうか。

 さてもうひと頑張りしますか。

 

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