日本が3分割されたらー北海道の場合

 かつて北海道と呼ばれた土地があった。

 日本という島国があり、最北の島の名前だった。

 現在その国は消えて地名が変わった。

 国家として「ニューコロランド」と呼ばれている。

 新しいコロニーとかコロポックルとかを合わせた意味がある。

 ただしそれは国際表記で、自国民は以前のように北海道とか蝦夷とかと言っている。

 公用語は日本語の他に生活基礎会話の英語が義務教育としている。

 日本の本州はそのまま「日本国」として。沖縄はアメリカの庇護下にある自治領として独立「琉球国」となった。国際表記はそれぞれ「ジャパニーズ」のままと「リュウキュウ」になる。

 なぜそのような分離独立となったのか。

 要は当時の政権与党が迷走した末に国家の縮小を閣議決定したからだが、国際的な背景が後押しをした。

 それは直前に欧州とロシアの戦争が終結したのが発端だった。

 ロシアが国連を脱退したことを契機に核兵器を使用する寸前までいき、結果的に世界中の国々が戦争になんらかにおいて参加し、ロシア国内で民族反乱と反政府活動が頻発し、なんだかんだロシアが大敗し領土が分割されることになった。

 ドイツ、イギリスを中心として経済産業を管理支配し、ベラルーシの半分はフィンランド領に、ウクライナとトルコで黒海とカスピ海沿岸のコーカサスからモスクワまでを支配。

 他の地域は民族自治領となったり、オホーツク海側はアムール川北はアメリカになったことでアラスカと繋がった。南は中国領となり、北朝鮮は中国の自治領として存続している。

 日本は北方領土とサハリンが戻りガス田を得た。

 領土を得た日本だが、水面下で日本政府はアメリカから北海道の分離独立を要請されていた。

 アラスカと繋がった利権なのは明白だが、国家財政が厳しく年金の支払いに困っていた日本は、莫大な譲渡金を得る密約をしていた。もちろん知っているのは一部の政府の関係者だけだ。

 このような重大な問題なのだから国会を開き国民投票にかけるのが筋なのだが、そこまでの段取りを無視しても法律上問題がないように少しずつ法改正やアメリカと水面下での協議で成立した。

 最後に国民が納得できるメリットをいくつか提示して選挙で信任を得てしまう。

 そしてそのまま国会で決議して今に至る。

 その内容は、「人口が減ることにより年金支給とベーシックインカムの充実」「北海道は独立による農産物などの輸出利益」「沖縄はアメリカと同等の法が適用され軍属の処罰や銃の所持などが独自に」など代表的なものだけでも十分生活が向上するはずだと。

 そのなかでも北海道は正真正銘の新しい国として成立することになった。

 もともと自衛隊の陸海空の駐屯地などが多く軍事力は十分にあり、食料自給率は100%以上、国際空港があり国土として面積も合格点。

 通貨は日本と同じだが、紙幣は独自のデザインにし為替も別になっている。

 国としての産業はもちろん観光と、新規産業を興す土地もあることで国として国際企業の誘致、地震などの災害が少ないことによるデータセンターなどを受け入れている。

 

 新しい国ゆえの特異な政策の一つとして「犯罪者の受け入れ」を始めた。

 当初は不足がちな農作業労働力として委託金とともに日本や他国から連れて来てまかなうことが目的だった

 日本としては国内で刑務所を管理するより金がかからないうえに、出所者を社会に受け入れる必要もなく、また島流し的な国外追放の意味合いで抑止効果を狙ってのことだったので双方に利益がある。


 無期刑から短期有期刑まで、凶悪犯から軽犯罪など犯罪では区別せず、スキルや適性で作業内容を与えて、問題を起こさない優良囚人なら刑期内でもある程度の自由を与えるが、軽犯罪者でも一生涯GPSが装着される。

 一見自由な生活に見えるが実情は奴隷労働のような待遇になる。

 もちろん模範囚ならばその限りではない。

 刑期中に反抗や問題行動を起こせば時によっては正当防衛として射殺などを許可された管理官が対応し、刑期満了時には新しい戸籍と名前で生きていくことになるが、交通違反のような小さな犯罪でも再犯したら二度目は無いという厳しい条件が付くことになる。


 北海道で犯罪者は矯正とか反省の社会復帰という目的では管理しない。

 性格は接客スキルのように変えて向上することは可能だが、人間性は遺伝で生まれ持った性質。

 犬が猫になれないように、二度とやりませんとか反省していますという言葉は、おとなしくします隠しますになるだけ。

 言い換えれば、犯罪者になるような人間性に見合った人生しか生きられない。

 幸い北海道には軍隊があるので、例えば暴力犯罪者は兵士として訓練をして傭兵として海外に派遣する。知能犯は投資やシステム開発、炭鉱が復活したので性犯罪者は去勢の上で重労働となる。

 

 適正な労働という側面では障碍者の就労を積極的に支援している。

 身体障碍はデスクワークやクリエータなど、知的障害は適正によって例えば図書館などのデーター保存作業とかシステムのバグの発見とかを適正な勤務時間と給与を保障している。

 財源が予想以上に豊かになってきたので可能となったベーシックインカムのような政策。

 

 成人犯罪者の管理が軌道に乗り始めると日本から新たな要望が届いた。

 未成年者と児童の犯罪に対処してもらいたいとのこと。

 日本では未成年者は家庭裁判所で少年院か鑑別所に収容、児童は保護観察か補導という福祉の観点からの処罰が常識。

 しかし犯罪というのは人間性や才能のように幼少期から発現しても不思議じゃない。

 運動神経がいい子供、賢い優しい子供は就学前から発現するのと同じだし、それは死ぬまで変わらない。

 同窓会で同級生の変化の無さに驚くほど人間は変わることはない。

 現状は子供だから成長する過程でしっかりとした教育をすれば大人社会に問題なく対応できると期待してチャンスを与えるということ。

 それが自分の子供ならばそういう考えになるのは理解できるが、現実は残念ながらそうじゃない。

 だからといって成人のように社会から隔離してしまったまま成長した結果がどうなるか検証されていない。子供にも人権があるし10年余りしか生きていない人間に対して早急すぎるのではないかと。

 そこで犯罪者管理に実績ができた北海道に任せるということになった。


 子供の人間性は変えられないが、それよりも強い興味を与えることで悪意のある行動より楽しいと思えるようにする。

 例えば、人を傷つけるのに抵抗が無いのなら多くの殺人スキルを身につけさせて暗殺の一流になる。

 また、嘘をつくのが得意なら政治家として日本に潜入させてもいいし、万引きなら諜報員として役に立つ。 

 ただしこれらは主に男子を想定したカリキュラムになる。

 じゃあ女子は?となるが、ほとんどの女子犯罪は男や大人が絡んでいるので、環境さえ整えれば社会復帰は容易だ。

 ただし例外はある。それはイジメだ。

 女子のイジメは証拠が少なく陰湿なことが多いので発覚しにくいが、被害者が告発した場合は教育委員会が認定する前に警察に動いてもらう社会情勢をつくっておく。

 すみやかに身柄を確保し証拠を示し裁定を下す。

 そこには裁判などは無く十分な状況証拠さえ揃えば確定される。

 遊びだったとか悪戯という言い訳は通用しない。

 女子のイジメの特徴として集団で個人を攻撃するのが常套だが、全員が同じ意識でやっているわけではない。

 集団内でのヒエラルキーで従っていた場合もあるだろうが、そこは酌量とはならない。

 集団としての責任を取ってもらうのだから当然のことになる。

 虐めが認定されば犯罪の対象になるので親から離され、一人一人別の処遇が待っている。

 基本的に同年齢の子供とは接触させない集団のなかで生活する。

 年上からのイジメがあるかもだし、自分より下が上からイジメられているのを見ることもある。

 その中で自分を見つめてもらうことで人間というものを理解して、将来子供を育てることになった時の助けになることを期待している。

 おわかりのように北海道では男は使い捨てになるが女は再生させて活躍してもらうことが前提となっている。

 将来的に北海道は女性がトップになり運営する国を理想としている。

 行政も経済も決定権は女性が主導し現実に行動するのは男性ということ。

 男性の地位が低いということではなく、最後に決めるのは女性を優先するということに過ぎない。

 日本で法律を改正する時に衆議院を優先するのと理屈は同じ。

 女性が許容できないことはしないという理念。

 それを受け入れることができない男性は日本へ移住したほうがいいだろう。

 国が分離した際に新しい日本は家長父制と男性有利社会の強化を示しているのだから。

 おかげで北海道には優秀な女性が集まって来て人口比の7割は女性となりいずれは8割を超えるだろう。

 逆に日本は男性ばかりになり少子化が進むことが予想される。

 それは分離独立時から水面下で予想されてきたことだ。

 北海道は女性の国家運営で反映し、日本は少子化になろうとも優秀な男性主導の運営で発展させる。

 どちらが正しいのか、それは口に出さなくても皆が知っている。

 

 



 

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