UFO参戦

 欧州で始まった2国間の侵略戦争。

 今世紀になってから世界各地で紛争や報復攻撃などはあったが、隣国同士の戦争が初めて起きた。

 当初は従来の重火器や戦車の戦闘で侵攻が開始されたが成功せず、次第に膠着状態から局所戦闘やミサイルによる無差別攻撃に移行している。

 侵攻した国をⅯ国、された国をU国。

 U国側の近隣諸国を巻き込み拡大しかねない状況になっていたが、各国は武器の供給と動員兵の訓練で援護し直接の戦闘には関与しない方針とした。

 表向きは自由経済の尊重と異動に過ぎないということになる。

 しかしだからと言って兵器が無尽蔵にあるわけでもなく予算も自国の民を圧迫させることなどできない。

 そこで重要視されたのがドローンによる無人攻撃。

 戦闘用の本格攻撃な物から民生品に爆弾を搭載させるものまで使い、局所的な攻撃を頻繁に行うようになった。

 操縦は数時間の訓練でマスターできるうえに、民生品は単価も安く使い捨てには困らない。

 

 そんな傍目には戦争というよりゲームのような反撃をしているU国の戦果が劇的に向上していた。

 敵拠点はもちろんM国内の基地や重要施設、さらに2000キロ離れた首都近郊にまで。

 そのような状況を黙って見ているⅯ国ではない。

 現状、2000キロを超す飛行能力のあるドローンは存在しないので国内のレジスタンスかU国の工作員による攻撃とみて警戒にあたっていた。

 重要施設での防空体制を見直し厳重な対策をしていたある夜のこと。

 何重も張り巡らしていた警戒をすり抜けて一機のドローンが現れた。

 たまたま地上にいた兵士が見上げたら、月明かりに照らされた不審な飛行物体を発見。

 すぐさま迎撃態勢を整え、攻撃される前に破壊を試みる。

 複数のドローンを向かわせ、直径50メートル以上の網を上空から投網のように被せる。

 一般的にドローンは前方か下方にしかカメラが付いていないので有効な対策になる。

 数台のドローンを時間差で投げて躱せないように訓練もしていた。

 いざタイミングを計って網を投下すると、U国のドローンは一瞬で100メートルほど移動して躱してしまった。

 月夜で目測を誤ったと考え何度か修正してみたが一向に捕獲できない。

 そして地上からのマシンガンで一斉射撃に切り替えて攻撃しても同様に避けられる。

 するとU国ドローンから光の塊のようなものが施設に打ち込まれた。

 着弾すると光の大きさからは想像できないほどの爆発が起きた。

 周囲にいた兵士も巻き添えになり行動不能になった。

 U国ドローンは何事も無かったように上空に消えていった。


 場所は変わりU国前線基地。

 将官が目の前に浮かんでいるドローンと対峙している。


 「どうやら今回もうまくいったようですね」


 ドローンはそれに答えるように点滅を繰り返す。


 「次は明日の夜にこの場所をお願いしたい」

 

 将官はグーグルマップから引用したような画像をドローンに向かって示す。

 するとドローンは理解したかのように一瞬で姿を消した。

 ほどなく将官の近くにいた参謀役が口を開いた。


 「司令官、彼らはどうして無報酬で協力してくれるんですかね」


 彼らというのはドローンのことである。


 「私も細かくは理解していないのだが、どうも我がU国は彼らの地球上で活動する拠点なのだそうだ。

 広大で山地が無く、しかも地質が地球上で我が国にしかない特殊なものらしく、彼らの生存に欠かせないものが豊富にあるそうなのだ。

 М国が見境なくミサイル攻撃を繰り返したおかげで土地の保全が不安定になり支障をきたしているようなのだ。

 私は偶然に彼らと接触できたことで利害関係が一致したことで、効率よく共闘しているというわけだ」


 「大統領はこの作戦は知っているのでしょうか」


 「連絡していないから知らないと思うな。説明しようにも言葉では妄想として解任されかねないし、彼らと一緒に謁見するわけにもいかないにな。

 まあ、見た目はドローンとさほど変わらないのだからこれまでどおりということ。

 ここは最前線なのだから、М国との攻防は我々兵士が直接戦い、彼らにはМ国の補給と本国の基地とインフラを集中的に攻撃してもらうことで納得してもらっている。

 本当なら彼らだけで戦争は終わらせることができるほどの能力があるようなのだが、そうしてしまうと世界中に違和感を持たれてしまう危険性がある。

 U国には秘密兵器があるようだとね。

 彼らを思い通りに動かすことはできない。

 今回は国土に直接攻撃があった偶然のことに過ぎない。

 我々も世界も彼らをどうこうできるわけでもなく、逆に反感を買って人類を滅亡させることもありえる。

 しかも今のところ彼らで作戦に参加してくれているのは一機というか一人しかいない。

 仲間がいるかどうかも把握していない状況だ。

 まあ、この戦争がこちらの勝利で終わる担保ができたことで良しとしている」


 「彼らは宇宙人というものなのでしょうか?」


 「それは私にもわからない。ただ彼らも地球上にいる知的なものの一つということになる。

 見た目は機械的だが生物かもしれない。

 私は学生時代に機械工学を学んだが、機械はスイッチを押すと動いたり止まったりする。

 人間も体内の電気信号で動くし止まれば死ぬ。機械との違いは一度死んだら二度と動かないだけだ。

 生物の死はスイッチを切るのと同じということになる。

 生物は細胞が勝手に増殖して組み上げていくが、機械も似たようなものだ。

 彼らも最初は単純な構造だったかもしれないが、進化のような過程を経て機械が機械を組み上げてきたのじゃないかと想像している。

 いやむしろ昆虫の進化版という線も考えている。

 彼らが地球上でどういった生活というか生態を持っているかは知らないが、私はこの戦争が終わったら誰にも話すことはしないよ。

 話しても信じてもらえるわけないしね」


 「確かにそうですね」


 数日後、М国の政権中枢が壊滅されたことで戦争は終わった。

 М国が分離割譲支配となった話はまた別のところで。



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