殺人無罪法案

新しい法律が施行された。

 殺人罪免除法。

 動機やその時の状況によって殺人罪を適用されないという。

 裁判員制度で一般人の判断によって決定され結審となり上告もできない。

 情状酌量の拡大解釈といっていいが、今後も判例として残るので懸念されることも少なく無い。

 つまり同じような殺人が増えるということになる。

 じゃあどういった事件が想定されているのか。

 レイプされた加害者を後日に殺害。

 レイプで妊娠出産した新生児の遺棄。

 老々自宅介護での殺人。

 会社内でのパワハラによる殺人。

 あとは仇討ちとされる復讐殺人。

 ようは理不尽なことに対する情状酌量を最大にした。

 それと女性に対する救済の意味もある。

 だからといって自分の手を汚すことに抵抗がある人のために代理殺人も含まれている。

 肉は食いたいが屠殺はしたくないと同じ理屈。

 主に敵討ちの助太刀というべきなのか。

 この法律が制定されてから昨今は代理殺人ビジネスが発展した。

 弁護士や司法書士と探偵業と傭兵業を合わせたようなものになる。

 依頼内容が法的に整合性があるか、証拠などが揃うか、手段はどうするのかなどを扱う。

 

 とある請負事務所。


 ケース1


 「今回はそこにある紙面の通り代理案件になる。パワハラで自殺した息子の両親からの依頼になる。

 ターゲットは懲戒解雇になったが起訴もされず再就職して生きているのでお願いしますということだ。しかも所在が不明なのでそちらも同時に依頼された。

 やったことに自覚があるうえに復讐殺人が合法化のようにされてから行方不明になることが多いからな。こちらも依頼料が上がるので歓迎すべきことなのだが。

 まずは所在地の確認だが、数日前からA君にお願いをしている。

 そして午前中に確認が取れたという連絡が入った。ターゲットはQ市のR区に居るようなので現地で合流をしてほしい。

 なお対処の方法だが、法律手続きを依頼者が望まないので自殺となっている。

 書類が揃っているので法的には問題なく無罪になるのだが依頼人本人が忙しいとか目立ちたくないとか言っているのでそうしてほしい。

 話は以上だ、早速向かってくれ」


 対応メンバーは作戦立案担当と実行担当の二人。現地で捜索担当と合流して三人であたる。

 偽装自殺といってもいくつかある。

 縊死、密室酸欠、自傷などが一般的になる。

 ターゲットの行動を調査すると投身が確実になりそうだ。

 もちろん鉄道とかビルの屋上のような公共に迷惑がかかることは避ける。


 ターゲットが勤め先か出てきたのを確認した。

 接触係のK女史が声をかけて路地の方へ誘導する。

 そこに脇で待機していた実行係のG君がターゲットの頭に袋をかぶせる。袋にはホースが繋がっていて一酸化炭素を噴出される。

 一瞬で意識を失ったターゲットを両脇に抱えて車に運び込む。

 向かう先はターゲットが住んでいる部屋。

 室内に入り炭になった練炭コンロを置いておく。

 ドアに密閉性を高める目張りテープでも張れば完璧だが今回は別にいいだろう。

 もし疑問を持たれたとしても合法な復讐として認めらるはず。

 起訴されたとしてもターゲットに同情など無いのだから裁判員裁判なら問題ない。

 部屋の鍵はあえて外からはしないでおく。早く見つかったほうが依頼者にはいいだろう。

 

 ケース2


 彼氏がハメドリ動画をアップしようとしていたので止めてと言ったら

 「前カノはOKしてくれたわ」と答えたので咄嗟に包丁で刺し殺した。

 という依頼が先ほど来た。緊急性が高いので早急に現場に向かう。

 現場に着き彼女から詳しい状況を聞き出す。

 我々は第三者証拠として認められているので、調査書類が揃い条件が整っていることを証明できるので、このまま警察に連絡をする。

 弁護士として同行し、警察と検察の調書の確認ができる。

 もしこちらの内容と齟齬がある場合は安易な指摘ではなく警察相手に裁判を起こせる。

 だから基本的に警察はこちらの言い分通りに処理をしてくれる。

 結果は想定通り無罪放免。

 彼氏の死亡診断書は事故として遺族に伝えられる。

 

 ケース3


 高速道路上で制限速度を100キロ以上オーバーして追突事故を起こし相手の車の乗員2人を死亡させた事故。

 危険運転致死か過失致死かの争点で裁判が長期化しているので遺族から復讐殺人の依頼。

 手段は選ばずできるだけ早くこの世からいなくなって欲しいという。

 裁判中なので被告が死亡すると各所に知られるので、前もって依頼があったことを内密に知らせておく。

 依頼が達成するまで次の裁判は開かれないが、そのためにも早めに実行しなければならない。

 ターゲットは会社経営の富裕層になるので、自宅はセキュリティが厳しい高層マンションなので外出中になる。

 免許が取り消されているので車には乗れないのでタクシー移動のようだ。

 そこで偽装タクシーに乗せて地方に用意してある処分向上に連れ去る。

 そこは人間が入れる大型の電子レンジと冷凍庫、ミンチ処分をする機械が数台ある。

 電子レンジは出血させずきれいに殺せるし、ボイル状態で血液も固まり都合がいい。

 冷凍すれば移送が楽になり解凍して生の状態に戻せる。

 ミンチマシーンは元々は冷凍の魚を肥料や養殖魚の餌のにするためのものを見つけた。

 今回は電子レンジから冷凍してミンチにして餌がいいだろう。

 その前に服を脱がさなければならないが、これが一番面倒な仕事なので誰もやりたがらない。

 だから最近は最初にガソリンをかけて服を燃やし半死にして動きを止めてから電子レンジに入れている。

 会社として常に業務改善は考えないといけないのはどこも同じだ。

 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る