第13話 愚かな子豚が狼になってた。

敬欄高等学校、一年八組教室————————


 数学担当教員兼担任である沢野直人先生からクラス全員に配るプリントを受け取り、自分の教室へと運んでいた両助。

 数学委員である自分は週三でこの役目をやらなければならないらしい。もしかして外れくじ引いた?


 「なんでわざわざ俺に?」と聞いたところ、「え?君頼んだらやってくれそうじゃん。委員決めの時も、だれてきたら率先して手上げたじゃん。正直時間短縮できてかなり助かったよ」と返ってきた。

 どうやら面倒ごとを押しつけられたようだ。


 これからはあまりお願い事聞かないようにしようかな、多分際限がないと思う。

そうして職員室に繋がる渡り廊下を通り戻ってきた現在。

「皆に配っといて、よろしく!」と渡されたプリントを無事教室まで運び終えた両助は、各列に指定枚数配置して大人しく自分の席に戻った。


 ふう、案外だるいぞ、この役目。


 少し疲れたことから、椅子の背もたれに背中を預ける両助。

 次の瞬間、彼に異変が起こる。


 頭の両サイドが突如固定された。両助は耳元で鼓膜が揺らされ、背筋が凍る感覚を憶えた。


「見つけたぞ、この裏切り者が」


 それは大変声を低くした啓介の声だった。

 正直に言うと彼は激おこだった。

 どことなくいつものマスコット然とした雰囲気が砕け散っていた。

 両助は何とか許してもらおうと、一様売店で勝っておいた菓子パンを取り出す。

 両助は封を開けたパンを啓介の顔の前に差し出した。


「これ買って来たんだ。食べる———————」


 か、と言おうとした時、パンは持っている手ごと噛みちぎられるのでという勢いで彼の口に収まり、胃に流し込まれる。


「ああん?こんなんで許すわけないだろ」


 物で釣ろうとしても無理だったらしい。


「でも食べるんだ」

「当たり前だ。でもまだ足りねえ。だから許さん」


 その後は必死の謝罪を以って、なんとか許しを貰った両助なのであった。

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