住宅街

ひょんなことから女子高生に町案内されることになった私。

なんでこんなことになったんだろう?と考えながら、私は案内をしてくれる鳳 渚ちゃんの後を付いて歩く。

今、歩いてるのは何のことは無い住宅街。まばなら通行人と形の様々な住宅が並んでいる至って普通の風景である。

さて、ここで私はある疑問を彼女に投げかけたいと思う。それは今日が日曜日なのと、彼女の服装が関係している。


「鳳さん。」

「美和子さん、渚で良いですよ。」

「わ、分かったわ・・・渚ちゃん、どうして今日は休日なのに制服なの?」

そうなのだ、今日は日曜日なのに渚ちゃんは制服を着ている。初めは女子高生なのだから制服に何の違和感も感じなかったが、よくよく考えてみると、休日まで制服を着ているのはおかしい。

「フフッ、そこに気づかれましたか♪」

意味ありげに笑う渚ちゃんだが、一体どんな意味があるというのだろう?大いに興味がある。

「それは私が女子高生だからですよ!!」

・・・ん?ちょっと何言ってるか分からない。女子高生だからといって休日まで着る理由が何処にあるというのだろう?その答えでは増々謎は深まるばかりである。

「つ、つまりどういうことなの?」

「つまりですね。女子高生で居られる時間は短いのだから、休日も学生服を着て女子高生ライフを100%満喫したいと私は思うのです!!」

「な、なるほど。」

なんとなく意味は分かったけど、その考えを理解することは出来ない。やっぱりこの子変わってるわ。


「そんなことより、どうですこの住宅街?新築があったり古い住宅もあったり見応え十分ですよね?」

「えっ、あぁ、そ、そうね。」

無いよ、ぶっちゃけ見応えなんて無いよ。今のところ可愛い野良犬とすれ違ったぐらいしかイベントも無いしね。

だが、ここから怒涛の渚ちゃんの住宅街ガイドが始まった。

「この辺は、ゆうげの時間に来ると、良い匂いが立漂ってくるのです。あそこの佐藤さんの家は、よくカレーを作ってて、少し先に行くと焼き魚を焼くのが上手な三浦さんの家が。あそこの家はロシアからの移住者のアダモフさんの家で、よくボルシチの匂いがして異国に旅をしに来た気分を味わえます。それで、あそこの家は・・・」

つらつらと川の流れのように絶え間ない渚ちゃんの説明。何のことはない、ゆうげの香りだけでここまで感情豊かに語れる女子高生は世界を探しても、あまり居ないのでは無いだろうか?

「凄いね。この辺の人達のこと全員知ってるの。」

「はい、皆さんとは仲良しさんです。たまに歩いてたからタッパに入った料理をくれたりするんですよ

。ご飯代が浮くので非常に助かってます♪」

どうやら、この女子高生は地域の人々に非常に愛されている様だ・・・正直羨ましい、私は家族や親族の他に愛されていると感じたことなんか無いもんな。


「時に美和子さん。美和子さんはどんな料理が得意ですか?」

いきなりな質問だ。一応料理は出来るので一番得意なヤツを言っておいた。

「肉じゃがかな?ジャガイモ大きめのヤツ。」

「あっ、良いですねぇ♪絶対美味しいヤツですね♪じゅるり♪良ければ今度食べさせてもらえると幸いです♪」

渚ちゃんは舌舐めずりをしながら、少し涎も垂らして恍惚の表情を浮かべたので、その顔が可笑しくて私は吹き出してしまった。


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