第548話
「それでは俺達も模擬戦をしようか? 一体誰から……」
「そのことなのだが、模擬戦は私達とお前達の三対三でやらないか? そちらの方がお前達にとっても都合が良いだろう?」
マーシャ達の模擬戦の相手である施設軍に所属している操者の一人が話しかけてくると、その言葉を遮ってセレディスが一対一ではなく三対三の模擬戦を提案をする。
「え? ……ああ、まあいいだろう。それじゃあ俺達三人とお前達三人で模擬戦をするぞ」
突然のセレディスの提案に私設軍の操者は思わず驚くが、他の二人の操者と方を見て彼らが頷くと彼女の提案を受けることにした。三対三での模擬戦は早めに模擬戦を終わらせてジョットとローラをこれ以上同じ場所にいさせないための提案であるのだが、それと同時にセレディスの言う通り、私設軍の操者達は団体での戦いに慣れているため、何としても勝ちたい私設軍の操者達にとっても都合が良かったのだ。
それから少しして、マーシャ達と私設軍の操者達のアンスタンの核が草原の中央に置かれて準備が整うと、マーシャ達六人はそれぞれ自分のアンスタンの核に精神波を送った。すると草原の中央に六体の巨大な影が現れ、見物していた私設軍の隊員達がマーシャとセレディスとカーリーのアンスタンを見て騒めきだす。
私設軍の操者達のアンスタンは三体とも似たような鎧と武器で武装した騎士の外見をしていたのに対して、マーシャとセレディスとカーリーのアンスタンはそれぞれ特徴的な外見であった。
マーシャのアンスタンは、両腕にそれぞれ蛇の様に波打つ刀身の剣が一本ずつ一体化している銀色の輝く鎧を着た女騎士のような外見。
セレディスのアンスタンは、右手に刀身が大きく湾曲した大剣を持ち、背中に三日月のような飾りが取り付けられた、ローラのアンスタンとは少し色合いが違う真紅の鎧を着た女騎士のような外見。
カーリーのアンスタンは、両肩にある盾と胴体の甲冑に刻まれた乙女像が印象的な両手に
アンスタンは操者の本能が外見と武装に大きく反映される兵器。私設軍の操者達はマーシャ達三人のアンスタンを見て、彼女達が只者ではないということを改めて認識した。
「どうやら私達の力を認めてくれたみたいだね。それは嬉しいんだけど、だからと言って手は抜かないよ?」
私設軍の操者達の気持ちを察したカーリーは彼らにそう言うと、横目でローラの方を見る。だいぶ放心状態から回復したローラはマーシャ達のアンスタンを興味深そうに見ていたが、それでも時折ジョットの方へと視線を向けているのが分かった。
(マズイな……。ローラちゃんってば、放心状態から戻ったらジョット君に対する気持ちを再認識している。今はそれがどんな感情か理解していないけど、このままじゃ新しいライバルが出現しちゃうかもね?)
特技の読心術でローラの心の状況を見抜いたカーリーは、マーシャとセレディスに視線を向けて首を横に振ると、マーシャとセレディはそれだけでカーリーが何を言いたいのか理解して表情を険しくする。
「準備ができたみたいだし、早速始めましょうか? でもすみません。私達、ちょっと用事を思い出したので手早く終わらせますね?」
「……ほう? 中々言ってくれるじゃないか? 手早く終わらせるのは賛成だ。しかし負けるのはお前達の方だがな」
カーリーの合図から、やはりジョットとローラをこれ以上同じ場所に置いとけないと判断したマーシャは、私設軍の操者達に早く模擬戦をしようと呼びかける。そしてこの時のマーシャの言葉を自分達への挑発と受け取った私設軍の操者達は、やる気をみなぎらせて自分達のアンスタンに戦闘態勢を取らせるのであった。
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