第540話
「どうやらネロチェイン男爵というのは予想以上に下衆で無能なようだな」
リードとの会話を終えたジョット達が兵舎に用意された自分達の部屋に入ると、セレディスが不機嫌そうに呟いた。不機嫌そうなのはセレディスだけではなくマリーとマーシャとカーリーも同じであり、ジョットもまた表情には出ていないが彼女達と同じ気持ちであった。
ジョット達がここまで不機嫌となったのは当然、リードから聞いたネロチェイン男爵のローラに対する態度が原因である。最後まで愛情を持てなかった女性との娘と今も愛情を育んでいる女性との娘となれば、どちらかに愛情の偏りが生じるのも理解できるのだが、それでもネロチェイン男爵のローラへの冷遇は酷いとしか言えない。
そしてセレディスがネロチェイン男爵を下衆で無能と断じた理由はもう一つあった。
「愛情を持てないからと言って娘として扱わないばかりか、貴重な戦力を有効活用しないとは……。父親としても領主としても最低としか言いようがないな」
リードから聞いた話によると、ローラはアンスタンを操れる操者である上、アンスタンを使った戦闘の実力はこの領内で一番なのだそうだ。
アンスタンは誰にでも使える兵器ではなく、ミレス・マキナを操る機士のように遠く離れたアンスタンに精神波を送る才能が必要とされており、アザイアでこの才能を持つ者は百人に一人と言われているらしい。この事からローラが戦力的に得難い人材であることは疑いようがないだろう。
しかしネロチェイン男爵はそんなローラをあまり戦場に出そうとせず、小規模の魔物退治や工事の手伝いと言った簡単な仕事にしか使わなかった。この話をリードから聞いたジョット達は最初、やはりネロチェイン男爵も娘のローラを気にかけているのかと思ったのだが実際は違い、ローラを簡単な仕事にしか使わなかったのはもう一人の娘が関係していたのだ。
ネロチェイン男爵のもう一人の娘はローラと違って操者の才能が無く、それ以外にもこれと言った特徴も無い能力から見れば平凡な男爵令嬢であった。そのことを当人であるもう一人の娘は気にしており、それを知ったネロチェイン男爵はローラを活躍させて名声を得ないようにしようと、簡単な仕事しか与えない飼い殺しのような状況をローラに強いていた。
娘であると同時に有能な部下であるローラを、完全な私情でまともに使いこなせないどころか見ようともしないネロチェイン男爵を最低だと言うセレディスに、ジョット達は誰も反論しようとしなかった。
「これは雇われる人間を間違えたかもね? どうする? 今からでもここから抜け出して、私達だけで目的の兵器を探す?」
ここにいても気分が悪くなるだけだからと離れることを提案するマーシャにマリーが首を横に振って反論する。
「それはちょっと決断が早いと思うよ? ローラから聞いた魔族と戦う戦場の予想地点は、10189番が以前兵器のエネルギーを感知した地点の近くだからね。ここから離れるのは、戦場で情報を探ってからの方がいいんじゃないの?」
「確かにそうだな」
「それじゃあ、魔族との戦闘が始まるまでここにいるってことだね。……そうと決まったら」
マリーの意見にジョットが賛成してしばらくここにいることが決定すると、カーリーはその場で服を脱ぎ出し、続いてマリーとマーシャとセレディスも服を脱いでそれを見たジョットが思わず驚きの声を上げる。
「……!? えっ? お前達、何でいきなり服を脱ぐんだ?」
「何って決まっているでしょ? ジョット君があのロリ巨乳姫騎士のローラに欲情しないようにするの」
「私達が全員でたっぷり愛せば、ジョット君もローラに欲情する気力も無くなるでしょ?」
「そもそも私達は新婚なのにこの一ヶ月、アザイアの調査や傭兵の仕事ばかりでご無沙汰だったのだぞ? いい加減私達も我慢の限界だ」
「そういうこと♩ だからジョット君も早く服を脱いでよ。それとも私達が脱がせてあげようか?」
「ちょっと待て? こんな所でやったら声とか音が……!?」
マリー、マーシャ、セレディス、カーリーの言葉にジョットは何とか落ち着かせようとしたのだが、言葉の途中で四人の女性達に押し倒されるのであった。
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